音楽105 〜Gone | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

自分のiTunesに入っている曲。



このあいだこれが最後と書きつつ、もう復活です。世の中にはそれだけいい曲がたくさんあるってことです。

Time: The Donut of the Heart  J Dilla / All I Do Is Think of You The Jackson 5

マイケル・ジャクソン関連の曲はこれが初登場です。素晴らしい声です。やっぱり「特別」な感じがします。この曲はヒップホップ・プロデューサーのJ Dillaのあの短くせつないループが印象的なインストゥルメンタル・サンプル曲 (“Time: The Donut of the Heart”) を最初に聴いて知っていて、そのあとオリジナルがジャクソン5の曲だと知りました。まあジャクソン5といえば「ABC」か「アイル・ビー・ゼア」、「アイ・ウォント・ユー・バック」が圧倒的に有名だし、マイケル・ジャクソンといえば「スリラー」とダンス、スキャンダルとネバーランドのイメージが強すぎるので、小品のようなこの曲に辿り着くきっかけとしてJ・ディラというのは僕の年からすると自然な成り行きで奇跡的な出逢いのような気がします。



J・ディラのサンプルしたのは70年代のソウル曲の間奏やイントロでそういえばたびたび聴いたことのあった音色のエレクトリック・シタールの音のループで、なんとなく卒業式とかで記憶と桜が舞い散るようなイメージのサウンド。原曲はマイケル・ジャクソンがいかにピュアな人間で傑出したシンガーだったかを思い知らされるメロウなバラードです。マイケル・ジャクソンのピュアさを感じる曲は「ヒール・ザ・ワールド」とかがありますが、当時B面扱いだったこの曲はスタイリスティックス風のソウル・テイストも加わって、なんともいえない魅力があります。


Ignition (Remix) R. Kelly
自分の作った曲に合わせてマイケル・ジャクソンが踊ってくれたら…。それもサービスではなく完全にプライベートでくつろいでいる時に。

マイケル・ジャクソンをプロデュースして全米No.1ヒットを出したい!

↑↑↑こんなおそらく作り手として最高の名誉といえるような2つの願望を両方とも実現させているのがR.Kelly。そしてクリエイターとしては後者 (R.ケリーの場合マイケルへの曲提供&プロデュースは「ヒストリー」でNo.1達成済み) より前者の方がけっこう嬉しいんじゃないだろうか?



ユーチューブで初めてあれを見たとき、俺は感動して泣いた。俺はたくさんの曲を書いてきた。世界中を回って、あらゆる賞も受賞したことがある。だけど…そんなのはたいしたことじゃなかった。マイケルが俺の曲「イグニション」を車の後部座席で歌いながら踊っているのを見たとき、初めて俺は「やった」って思ったよ。あれこそ俺が「認められた」時だったんだ。俺はもう20年以上このビジネスをやっているけど、俺にとって「R.ケリーここにあり」って感じになったのはあの時なんだよ。ーR.Kelly


Gone Kanye West feat. Consequence & Cam'Ron
マイケル・ジャクソンのような世界的セレブではなくて、ただの一般人が「踊ってみた」動画をアップしたことでヒットしたのが自称「マイケル・ジャクソンを超えるスーパースター」カニエ・ウェストのこの曲。



I quit (こんな会社、辞めてやる by 藤波辰巳)

ご覧の通りただの「踊ってみた」動画ではないんですが…

サンプル・ソースはオーティス・レディングの「イッツ・トゥー・レイト」で、カニエはジェイ・Zとのコラボ・アルバムからのヒット・シングル (その名も“Otis”) 以前に、オーティス・レディングをネタとして使っていたわけです。カニエが一度サンプルしたことのあるアーティストをもう一度使う、というのは他にもあって、「イーザス」収録の名曲「ブラッド・オン・ザ・リーブス」でニーナ・シモンの「奇妙な果実」を使う前に、タリブ・クゥエリの曲 (“Get By”) のプロデュースでニーナ・シモンの“Sinnerman”のピアノを効果的にサンプルしたりしています。

カニエ・ウェストはスキャンダラスな言動以前にまずサンプル主体のヒップホップ・プロデューサーとして感覚が抜群に優れていて、しかも音の組み方が凄いんですが、この曲は原曲から2コードのピアノのループ、それにアクセントというよりは「ブラッド・オン・ザ・リーブス」同様にラップと並列・呼応するようにオーティス・レディングのボーカル・サンプルを配しています。これに原曲には全くないストリングスと、カニエらしくいつもながら曲に合った完璧なビートを組んで新しい1曲に仕上げています。ストリングスに絡むように流麗なフロウを聴かせているのはコンシークエンスというラッパー。あのQティップの従兄弟らしく、こういうトラックによく合います (カニエのデビュー・アルバム「カレッジ・ドロップアウト」収録の“Spaceship”に続いての共演。この曲もずるいくらいいい出来です。サンプルはマーヴィン・ゲイの“Distant Lover”。ジョン・レジェンドが歌を入れてます) 。カニエはかつてのア・トライブ・コールド・クエスト並にヒップホップのハードルを上げてます。



カニエさんはラッパーとして努力型というか頑張り屋さんなのがよくわかるリリック&パフォーマンス。

原曲の南部らしいソウル・バラード曲を彩るあのホーン・セクションを排して大胆にラップ曲に投入したこのストリングスの音色のこの曲を、ビートルズっぽいという評価をした雑誌があります。確かに、カニエはこのあと元のアルバム・タイトルをもじった「レイト・オーケストレーション」というライブ・アルバムをアビー・ロード・スタジオで録っているので、構想的に「リヴォルヴァー」以降の実験的なビートルズ・サウンド、ジョージ・マーティン的なストリングス・アレンジが頭にあったのかもしれない。

しかし、このカニエの2ndアルバム「レイト・レジストレーション」でカニエの上からプロデュースしているのはジョン・ブライオン。ロック誌だとすぐにフィオナ・アップルのプロデューサーとして紹介されますが、やっぱりストリングスが印象的なルーファス・ウェインライトのデビュー・アルバム、さらになんとロビン・ヒッチコックのアルバム (R.E.M.のピーター・バックも参加してる) をプロデュースしていたりします。よく聴くといろんな楽器が鳴っているのはたぶんこのプロデューサーの特徴です。


Everybody Here Wants You Jeff Buckley
ジェフ・バックリィ。夭折した天才ミュージシャン、今も影響力があって、過去の「大物ミュージシャン」からの支持も絶大ということで、とりあえずこういう要素が大好きな洋楽好きが必ず「名盤」リストに名前を挙げる人物です。で、だいたいこういうエピソード↓↓↓が好きなんですね。

Jeff Buckley and Jimmy Page cried when they met each other, a close friend of the late singer-songwriter reveals in the latest issue of Uncut.
ジェフ・バックリィとジミー・ペイジはお互い (初めて) 会った時に泣いたんだ。と、今は亡きシンガーソングライターの親友は『アンカット』の最新号で明らかにした。

Former Fishbone member Chris Dowd explains that the pair were so in awe of each other that their first meeting was unsurprisingly emotional.
元フィッシュボーンのメンバー、クリス・ダウドは、二人が互いに畏敬の念を抱きすぎているあまり、二人の初対面は当然のことながら感情的なものになった、と説明している。

“Jeff told me they cried,” says Dowd. “They actually cried when they met each other. Jimmy heard himself in Jeff, and Jeff was meeting his idol. Jimmy Page was the godfather of Jeff’s music. A lot of people thought Tim was the influence on Jeff, but it was really Zeppelin.
「ジェフは俺たちは泣いたよ、って言った」とクリス・ダウドは語る。「二人は実際、互いに会った時泣いたんだ。ジミー・ペイジはジェフの中に自分 (の声) を聴き、ジェフは自分にとってのアイドルに対面していた。ジミー・ペイジはジェフの音楽のゴッドファーザーだったんだ。多くの人が (実父でやはり天才ミュージシャンの) ティム (・バックリィ) こそがジェフの音楽に影響を与えていると思っていたけど、本当はツェッペリンの影響だったんだよ (←レッド・ツェッペリン信者にとってはここが重要なんでしょうね) 。

“He could play all the parts on all the songs. John Paul Jones’ basslines. Page’s guitar parts. The synthesiser intro on ‘In The Light’ – he could play it on guitar and it would sound just like it. And then he would get on the fucking drums and exactly mimic John Bonham.”
彼は全部の曲の全パートを演奏できたからね。ジョン・ポール・ジョーンズのベースライン、ジミー・ペイジのギター・パート、それに「イン・ザ・ライト」のイントロのシンセサイザー。ジェフはそれをギターで弾いてシンセと同じように鳴らすことができたんだ。それからクソすごいドラム、あのジョン・ボーナムを完全に真似することができたんだ。

エピソードの真偽やその実際の影響度はさておき、人がどんなに他の人から影響を受けても、結局その人が発するものは同じにはならないし、その人に才能や感性があればなおさら同系列に語っていいものにはならないのがふつうです (ガンダムの富野由悠季監督が「必ずその人自身のフィルターを通す」という表現を使っていたのをネットで見た記憶があります。いいんだよ、フィルターで、みたいな) 。この“Everybody Here Wants You”はジェフ・バックリィの死後にリリースされたアルバムからの曲ですが、歌い方なんかはどちらかというとプリンスっぽいスタイルです。



この曲は日本ではほとんどスルー。ビートルズやツェッペリンが頂点にいなければならない、という洋楽好きの聴き方で入るとたぶん「グレース」は名盤だね、で終わるんですね。プロデュースはトム・ヴァーレイン、とあります。実はこの2人を従えて“Beneath The Southern Cross”という曲を演っているのがパティ・スミス。さすがニューヨーク・パンクの女王です。


4 Seasons Of Loneliness Boyz II Men
このあいだ勤務先近くの渋谷の坂を登っていたとき、どこからか聞こえてきたのがこの曲。前に同じ店からナタリー・マーチャントの“Wonder”が聞こえてきたことがあったので、ここの選曲センスはとても好きです。1997年にダイアナ妃の追悼歌「キャンドル・イン・ザ・ウインド」のヒットで完全にかき消されたこの曲は影薄く1週のみ1位を記録 (これがかつてはジャクソン5にマーヴィン・ゲイ等のスターを擁したモータウン・レコードの最後のNo.1ヒットなのだ) しています。

しかし、きめ細かいコーラス・ワークにジミー・ジャム&テリー・ルイスが若干ティンバランドっぽいビートを加えたこの曲は、エバーグリーンな感じを今も失わずにいます。久しぶりにダウンロードしたこの曲のあとに、たまたま再生されたレディオヘッドの“15 Steps”を聴いたら、完璧主義者のナイジェル・ゴッドリッチ&天才トム・ヨークのあのモダンなビートの曲が思わぬほど粗末に聴こえたものです。