音楽86 〜The World's Greatest | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

自分のiTunesに入っている曲。



弦楽のためのアダージョ バーバー
ジョン・F・ケネディ大統領の葬式で流れたために、葬式や死のイメージがあるクラシック曲です。慟哭のような旋律の曲ですが、けっして“funeral (葬式) ”のために作られたのではなく、あくまでタイトル通り“for strings (弦楽のため) ”の曲で、作者のバーバーはやや不本意のようです。

パフ・ダディ (現ディディー) がデビュー・アルバム「ノー・ウェイ・アウト」をリリースしたとき、ノトーリアスB.I.Gが銃殺されたばかりのタイミングでしたが、そのアルバムのオープニングと世界的に大ヒットしたノトーリアスB.I.Gへの追悼曲“I'll Be Missing You”のアルバム・ヴァージョンの前奏にも使われています。「ノー・ウェイ・アウト」はポリスの“Every Breath You Take”をそのまま流用した“I'll Be Missing You”を筆頭に、あざといとかセルアウト狙い的な評価もされていますが、紛れもなく「弦楽のためのアダージョ」の旋律で始まるイントロ曲「ノー・ウェイ・アウト」からビギーが最後にラップを入れた最高のヴァースをもつ「ヴィクトリー」へ流れ込むあたりとか、ひそかにミッシー・エリオットがプロダクションに絡んでいるらしい「イッツ・オール・アバウト・ベンジャミン」なんかは普通にカッコよかったりします。特に前者はプロレスラーの蝶野選手の黒のカリスマ感あふれる入場曲の前奏部でもあって、「弦楽のためのアダージョ」とバタバタ鳴るヘリコプターの音をバックに、



Damn. I would have never thought it ever would have been like this.
クソっ、こんなことになるとは思っていなかった。

と独白が入る所はなかなか名フレーズになっています。おそらくパフ・ダディーのゴーストライター集団ヒットメンの誰かが考えたものだと思いますが…。


Hysteric 松田 孝史
プロレスリング・ノア丸藤正道選手の入場曲。インパクトがあって選手のイメージにあってて、会場が盛り上がるテーマを若手時代からずっと使い続けている選手ははっきりいって他にいないと思います (東京ドームで試合をするときだけトランス色の強いヴァージョンを使用していますが、それはあまり好きじゃないです) 。プロレスラーの入場テーマは概して汗くさいハードロック系のギター曲になりがちですが、名曲の多くは長州力の「パワーホール」とか、意外にテクノというかそうでない路線のものの方が多いです。



これでもカッコいいけど、丸藤選手はムーブ的にはもっと凄い試合や技がたくさんあります。


夏夕空 中 孝介
「夏目友人帳」第1期のエンディング・テーマ曲。優しい物語が終わったあとに毎回神がかったタイミングで入るので、素敵な余韻が残ります。アコースティックギターの響きと沖縄出身のシンガーらしいゆったりと心に染みる深みのある声が作品のイメージによく合っています。

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アニメといえば昔は日曜の朝とか夕方の再放送、ゴールデンタイムにやっていた感じですが、最近は深夜に思わぬ名作をやっていたりします。「はじめの一歩」もすごく良かったし、賛否両論の「黒子のバスケ」も正直おもしろいです。作り手が作品を理解していて、声優や音楽もそれ以外のイメージが湧かないような世界観があります。アニメの声優界の奥深さを感じるのは「夏目友人帳」のニャンコ先生と「美味しんぼ」の山岡士郎の声は同じだ、ということです。言われてみれば、ニャンコ先生の本来の姿「斑」のときの声は山岡さんと同じ声質です。あと、「はじめの一歩」で主人公幕之内一歩の声を担当した人は脚本家としても成功していて、「桐島、部活やめるってよ」で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しています。漫画の一歩の方はどんどん主人公としての魅力がなくなってしまっていますが…。


Natural's Not in It / Damaged Goods Gang Of Four
Feeling Called Love  Wire
R.E.M.やレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、さらにはニルヴァーナに決定的な影響を与えたバンドとされるのがこのギャング・オブ・フォー。後進のバンドに与えた影響やそこからの支持についてはメンバーであるアンディ・ギルがインタビューで的確なコメントをしています。

(R.E.M.とギャング・オブ・フォーとの間には関連が) あるね。ぜったいに。「あの曲はあそこからの借用だ」って指摘するようなものじゃないけどね。いろんな意味で、そこにあるのは気風みたいなもんさ。曲の構成とか、スピリットとか、ソングライターの立ち位置みたいな方法論だ。かなり共有された領域があるよね。R.E.M.はかつてセット・リストにギャング・オブ・フォーの曲を2、3曲入れていたから、彼らが借用していたのは2、3個ってことだ。

ギャング・オブ・フォーのサウンドの特徴はかなり硬質なギター・サウンドで、ポストパンク/ニューウェーブ系のファンク、痙攣するようなリズムで、特にこの「痙攣するような」というところに共通点がある気がします。R.E.M.のギター・サウンドのベースはあくまでバーズ由来のリッケンバッカー12弦ギターのストラムですが、初期のIRS時代のアルバム、つまりR.E.M.のインディー・ロック時代のサウンドを最終的に確立させたものには、イギリスのバンドの影響が明らかにあります。ワイアーとか。ワイアーはR.E.M.がオリジナル・アルバムで唯一カヴァーしている曲“Strange”を収録した型破りな名盤「ピンク・フラッグ」をポストパンク期に燦然と奏でています。“Feeling Called Love”なんかはまるでマイケル・スタイプ、R.E.M.のギター・ロックそのものです。

のちにレッチリのフリーと共にギャング・オブ・フォーのライナー・ノーツを寄稿したR.E.M.のマイケル・スタイプは、ギャング・オブ・フォーをパティ・スミスと同じ位のロール・モデルに捉えているところがあります。まるでアンディ・ギルのインタビューに登場する「立ち位置」という言葉に共鳴するような、インディー・ロックの雄、オルタナティヴ・ロック・バンドとしての在り方を語るSPIN誌のインタビューは興味深いです。

(今の自分たちにセルアウトみたいな非難があることは) 解っている。ブロンディーが「ハート・オブ・グラス」を出したとき、俺はこう言ったのを憶えている。「売れ線に走りやがって。もういいよ。俺にはスリッツがあるから」、みたいな、そんな事をね。ギャング・オブ・フォーが「Hard」を出した時は、「ああ、くそったれが。次へ行くぜ」って感じだった。今聴けば素晴らしいんだけどね。秘密にしていたものや素晴らしいと思っていたものが世界に露わになってしまうと、素晴らしくなくなってきてしまうものなんだ。そうなると新しいモノを見つける時で、それがまっとうで健康的なサイクルだ。でも、俺たちはまだグレイトだと思っているよ。

R.E.M.は最後までフレッシュだったと思う。少なくとも、コールドプレイとはさほど変わってはいなかっただろう。


Lisztomania Phoenix
フェニックスはフランスのヴェルサイユ出身のバンドで、おしゃれながらダフト・パンクよりはローテクなバンド・サウンドを奏でます。音楽的ルーツというか嗜好は80年代のプリンス (“I Wanna Be Your Lover”とか“Purple Rain”) とかはやっぱりよく聴いていると思うし、iTunesのいにしえの名企画セレブリティ・プレイリストでR.ケリーの“I'm a Flirt Remix (feat.T-Pain & T.I.) ”を選んでいたりするところからもわかるように、ロックよりもR&Bやソウル・ミュージックよりの影響が強そうです。特にR.ケリーとはマッシュアップ曲を出していたり、コーチェラ・フェスティバルで共演!したりと縁があります。

R.ケリーといえば、バスケのマイケル・ジョーダンが出演して話題になったアニメ×実写映画「スペース・ジャム」のサントラ曲“I Believe I Can Fly”みたいな、コーラスがちょっと大仰すぎて趣味が悪い曲 (「タイタニック」後に人気絶頂のセリーヌ・ディオンと共演した“I'm Your angel”もクロスオーバー・ヒットを狙ったセルアウト路線だと思ったし、マイケル・ジャクソンに提供してビルボード・チャート史上初の初登場1位になって、MJの最後の全米No.1ヒットになった「ユー・アー・ノット・アローン」もマイケル・ジャクソンにしてはなんか陳腐だと思っていた) を作るイメージで、実際に性的嗜好が異常というスキャンダルが噴出したりしていますが、正直フェニックスが選んだ“I'm a Flirt”のおかげでもう一度Rケリーを聴くようになったものです。


One More Time Duft Punk
この曲の収録アルバムのタイトルは「ディスカバリー (発見) 」。そのオープニング・トラックにこの曲が選ばれているのは「ワン・モア・タイム」がフロア・アンセムのような曲だから、というよりも、その「製作過程」にあるのかもしれません。ダフト・パンクは「この曲でサンプルは使っていない」と公言し、アルバムのクレジットにも入れていませんが、Eddie Johnsの“More Spell on You”を使っていると信じられています。



「ディスカバリー」のもう一つの代表曲“Digital Love”がむしろ元ネタそのままな感じなのに対し、「ワン・モア・タイム」は引用というより「変型」させた感じです。このEDMのプロデューサー、Sadowick Productionがネタ晒ししたこの製作過程は、機材でいかにも簡単そうに作れてしまうように見えるので相当ショッキングなものですが、答えを見てしまえば誰でも難関校の試験に通れるようなもので、たとえ簡単でもその答えに辿り着くまでがきっと長い、そんな一例のような曲です。

「デジタル・ラブ」では自分たちでロボットのようにヴォーカルを入れているダフト・パンクですが、「ワン・モア・タイム」はハウス・プロデューサー兼シンガーのロマンソニーがオートチューンを駆使して歌っています。オートチューンはもともと音程補正ソフトであるせいか、プロのシンガーが使うことには批判がありますが、ダフト・パンクはもちろん、実際に歌ったロマンソニーも自分の声を変えることを楽しんでいたようです。世間のオートチューン批判には、

…like asking bands in the '60s, 'Why do you use the electric guitar?
60年代のバンドに「なんで君たちはエレクトリック・ギターなんか使うんだ」って聞くようなもんだよね -トーマ・バンガルテル

という、素晴らしい回答をしています。


The World's Greatest R. Kelly
ウィル・スミスがモハメド・アリを演じて話題になった「ALI」のサントラに提供した曲。R.Kellyを知る人も知らない人も、これを聴いたら思わず感動して涙を流してしまうような名曲です。タイトルは伝説の世界チャンピオンのボクサーにふさわしい「世界で一番偉大な存在」の意味。もちろんアリの事ですが、蝶のように華麗に舞えず、蜂に刺される試合を続けつつなんとか社会のランキングを上げてきたようなボクサーの僕の心にも響く曲です。

I am a mountain
俺はそびえ立つ山
I am a tall tree
高い木だ
Oh, I am a swift wind
俺は国中を吹き抜ける
Sweepin' the country
疾風
I am a river
俺は深い谷を
Down in the valley
流れる河
Oh, I am a vision
俺はビジョンだ
And I can see clearly
俺にはすべてはっきり見えている

If anybody asks you who I am
もし誰かがお前は誰なんだ?って言うなら
Just stand up tall, look 'em in the face and say
ただ堂々と立ち上がって、そいつらの顔を真っ向から見据えてこう言ってやれ

I'm that star up in the sky
俺は空に輝くあの星
I'm that mountain peak up high
俺は高くそびえるあの山の頂上
Hey, I made it
どうだ、俺はやったぜ
I'm the worlds greatest
俺は世界最高だ
And I'm that little bit of hope
俺はほんの僅かの希望も背負っている
When my back's against the ropes
ロープ際に追い詰められているような時だって
I can feel it mmm
感じているんだ
I'm the world's greatest
世界で最高なのは俺なんだって

In the ring of life I'll reign love (I will reign)
人生のリングで、俺は愛を司る (俺は君臨する)
And the world will notice a king (oh, yeah)
世界は「王様」に気づくはずだ (そうさ)
When all is darkest, I'll shine a light
すべてがこれ以上ない真っ暗闇なら、俺が光になろう
And mirrors of success reflect in me (me)
何枚もの成功の鏡が俺を映し出している

It's the greatest
最高だ
Can you feel it
感じられるかい
It's the greatest
最高だ
Can you feel it
君にも感じられるかな

I saw the light
俺はトンネルの終わりに
At the end of a tunnel
光を見たんだ
Believe in the pot of gold
虹の果てには
At the end of the rainbow
金の壺があるって信じてる
And faith was right there
俺にやり遂げる力を与えてくれる信念は
To pull me through, yeah
すぐそこにあったんだ
Used to be locked doors
かつては閉じられていた扉だったけど
Now I can just walk on through
いま俺は通っていけるんだ
Hey, uh, hey, hey, hey
ヘイ、どうだ。見ろよ
It's the greatest
最高だ
I'm that star up in the sky
俺は空に輝くあの星なんだ



この高揚感。省いた部分の歌詞に登場するように“marchin' band”のようなリズム、イントロの試合前のボクサーのような自分を奮い立たせる「戦う前から負ける事を考える奴がいるかよ」とでもいうような短いラップ、ゴングのような音で始まる歌。そして適度に入るホーン・セクション。

たたみかけるようにソウルフルでシンプルな歌詞は意外にR.ケリー独自のフレーズ、詩的表現になっています。

“And I'm that little bit of hope (俺はあのほんの僅かの希望) ”

という歌詞は色々な解釈ができそうですが、モハメド・アリがジョージ・フォアマンとの試合のためにアフリカのザイールを訪れた際、アリが小さな町の中をランニングするとアリに熱狂して後をついて走る人々と子供たちが現れ、アリの無敵の強さが、アメリカからは遠く離れた貧しいアフリカで、人々の生活の小さな希望になっていることをアリが感じとるシーンをイメージします。ボクシング漫画の「はじめの一歩」で、チャンピオンの「拳の重さ」を鷹村さんが試合で見せつける名シーンがありますが、僕はそれをオーバーラップしました。



同時期の「スラムダンク」みたいに30巻くらいで止めて+外伝だったら伝説の少年漫画になっていた可能性がある。

チャンピオンってなあ背中に色々なモン背負ってんだ
(強さに憧れる) 何人もの人間が拳にしがみついてんだ
チャンピオンの拳は特別なんだ
同じじゃねぇんだ!!

と、減量苦でコンディション最悪ながら言い訳せずに試合に臨み、調子付く挑戦者に攻め込まれながらも、

(俺を目標にして) あそこで不細工な応援をしてるバカトリオのためにも勝たなければならねぇ。

鷹村丸は、不沈艦だぜ!

と試合に臨む鷹村さんは本当にカッコよかったんですが、現在も連載が続くこの長寿ボクシング漫画では昔のそういうOnとOffのメリハリのついたジムの先輩キャラがなくなってきているのが残念です。

Rケリーはあのヒップホップ界の帝王ジェイZですら手を焼く人物で、色々な矛盾を抱える人間の極端な例のような人物みたいです。僕は昔雑誌で読んだRケリーが音楽の女の先生の勧めで高校のタレント・ショーでスティーヴィー・ワンダーの「リボン・イン・ザ・スカイ」を演って、バスケを辞めて音楽の道に進むことを決意したエピソードが好きですが、Rケリーはアメリカの高校のスター選手でありながら銃殺で道を閉ざされたベン・ウィルソンのチームメイトだった時もあるほどのバスケ選手で、スティーヴィー・ワンダーのようなマルチ・プレイヤーのシンガー・ソングライターでもあります。スキャンダルでときに激しく叩かれつつも実はRケリーの全米での売り上げ枚数はざっと4000万枚。過去25年か30年位ではトップで、ブラック・ミュージック界全体ではマイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、プリンスに次ぐ4位という息の長い活動を続けています。

最近ではレディ・ガガの「アートポップ」にフィーチャーされたりしていましたが、ガガさんもこの辺をリスペクトしているに違いないです。


God Is Love (Single Version) Marvin Gaye
マーヴィン・ゲイの不朽の名作「ホワッツ・ゴーイング・オン」の収録曲ですが、シングルのB面には別ヴァージョンが収録されています。ヒップホップ史上最高のクリエイターして今もなお同業者からの賞賛を集めるJディラがサンプリングに使ったのもどうもこっちのヴァージョンみたいです。

A面の「ホワッツ・ゴーイング・オン」と同様の美しさを湛えたこの曲はチェレスタの響きがさらに印象的で、神様への感謝と愛に満ちた優しいソウル・ゴスペル・ミュージックになっています。チェレスタのポップ・ミュージックでの使用はヴェルヴェット・アンダーグラウンドのように白人のノイズ・ミュージックのなかに混ざり込んでいる美メロ曲とか、もっと最近では映画の「ハリーポッター」のテーマ曲で鳴る鉄琴やオルゴールみたいなちょっと古風で澄んだきれいな音色を連想しますが、これをソウル・ミュージックに持ち込んだところにマーヴィン・ゲイのセンスを感じます。ちなみにチェレスタはフランス語で「天国のような」という意味があるそうですが、まさにこの曲にふさわしい気がします。

マーヴィン・ゲイといえばスティーヴィー・ワンダーと双璧をなす70年代ソウルの二大巨頭ですが、スティーヴィー・ワンダーのマーヴィン・ゲイへの追悼曲として位置づけらる“Lightning Up the Candles”という曲では、チェレスタ風の音色を聴くことができます。詩だけではなくサウンドでもトリビュートしているんだと思います。

Lightning up the candles
キャンドルに火を灯そう
To what used to be
かつて
Tender memories in moments of love
愛の瞬間の優しい記憶であったものの為に
ーS.Wonder

マーヴィン・ゲイは牧師である実の父親に口論の末銃で撃たれ、1984年4月1日に死亡しています。打ち込みサウンドをR&Bに取り入れた「セクシュアル・ヒーリング」をヒットさせて、公私ともに復活した矢先の事でした。


Let's Impeach The President Neil Young
「インピーチ」というと桃みたいなかわいい感じがしますが「弾劾する」の意味。早い話ジョージ・W・ブッシュをとことんコケにするために作られ付けられたタイトルです (ヒップホップのネタとして有名な曲にも同フレーズのタイトル曲があります) 。イントロから入るトランペットのメロディは何も知らないとこの曲のために吹かれているようですが、実はアメリカの軍隊では葬送のときに演奏される“Taps”のもので、明らかにイラク戦争への痛烈な批判が込められています。凄いセンス。歌のメロディ・ラインはニール・ヤングらしくへろへろですが、60過ぎてやりたい放題言いたい放題の曲をやり切ってしまう技量に感心してしまいます。いや、これは本当にいい曲です。



なんか「メタル・フォーク・プロテスト・ミュージック」って評してるのがあるけど、どちらかというとこのPVはパンクだ。ちなみに間奏で流れるジョージ・W・ブッシュの実際の演説の映像!を使った部分のバックでニール・ヤングが歌っている

フリィ~、フロ~

っていうやっぱりへろへろのコーラスは“Flip-Flop”。「(意見などを) コロコロ急変させる」の意味。とことん馬鹿にしてやっているぜ。あと、明らかにCNNのニュースを意識した画像の下の「LWW」はアルバム・タイトルのイニシャル。これ作ってインターネットに流してるんだから凄い。

Let's impeach the President for lying
嘘で固めたあの大統領を弾劾しよう
And misleading our country into war
祖国を戦争の道に唆した罪で
Abusing all the power that we gave him
あいつは国民が与えた全ての権力を濫用し
And shipping all our money out the door
俺たちの税金をすべて国外に送り出しやがった

ニール・ヤングはプロテスト・ソング全盛期を知る男なのでよく理解してこの新曲を作り上げたと思います。収録アルバム「Living With War」のほかの曲ではボブ・ディランを引き合いに出し、作曲からレコーディングもほとんどすべて各曲1日くらいでやっているっぽいです。こういう曲は速報性が大事だということがよく解っていて、それを実現できるシンガー・ソングライターとしての実力があればこそできる技です。ジョン・レノンもソロ・キャリア開始時のメッセージ性の強いアンセム・ソングはことごとく早技で仕上げていたものです。ニール・ヤングはロックンローラーらしく言いたい事は全部言っていますが、それだけでどうにかなるとも思ってなくて、曲の最後は、

But of course our president is clean
でもどうせ大統領は潔白に決まってる
Thank God
神に感謝だ

と苦々しげに締めくくっています。

だけど声をあげるという事は、やっぱり大事だと思います。実は僕は未だに選挙権を行使した事がないのだが、どっかのクソ政治家が憲法を改正しようとしたら、必ず反対の為に投票しようと思っています。しかし一国のトップがごく普通の一般人より頭の悪い学歴 (成蹊大学なんて頭は大してよくないけどお金はたくさんある人の行くイメージで偏差値的に俺以下だぞ) でまかり通るとは、最近の日本の七光り文化っておそろしい。あまりジョンイルとかの国と変わんないよな。