アルコール、居留地の現実 | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

サウス・ダコタ州パイン・リッジの

インディアン居留地は

「ドライ・レズ(dry rez=reservation ) 」で

アルコールの持ち込みは一切禁止である

 

 

なのに、ERには酔っ払いが来る

何かしらの理由で飲めなくて

アルコール禁断症状の人が来る

 

私なら完全泥酔している様な

アルコール血中濃度で

既に禁断症状が出ていたり

 

私なら、昏睡状態で気管内挿管

人工呼吸器に繋がれ集中治療室行きの

アルコール濃度でシラフとか

 

ERは何かがうまく行かなかった際

来るところなので

コミュニティーの醜い側面を

見ているだけかもしれないが

 

それにしても、アルコール関係の

患者の多さには驚かざるをえない

 

ドライなはずのパイン・リッジの

南隣りは居留地外のネブラスカ州

お酒は合法である

 

2017年までは、州境にある

ネブラスカ州ホワイトクレイに

酒屋が何軒かあった

 

その頃、ホワイトクレイの人口は10人

もちろん、10人のための酒屋ではなく

カスタマーはパイン・リッジの住人達

一日に13000缶のビールに値する

アルコールを売り上げたのだそう

 

ホワイトクレイの酒屋は

2017年にライセンスが切れ閉店したが

それでことが収まるわけはなく

さらの20マイル程南のラッシュヴィルへ

アルコールを求めて行く人が増え

そのルートでは酒気帯び運転による

死亡事故が増えたとも言われる

 

 

パイン・リッジから、ネブラスカの

一番近いウォールマートまで一時間

シーツのセットを買いに行った

(これもまた、ちょっとした冒険になった)

その帰り道が、ラッシュヴィルへの

ルートだったらしく

数人の居留地の警官に車を止められた

 

お酒に一切興味がない私が

アルコールを隠し持っているはずはなく

どうぞ思う存分、調べて下さいと

ニコニコ余裕で待っている間

警官たちは、車の後ろの席の下とか

トランクの中の買い物袋の中とか

密に調べた後、道を通してくれた

 

ここで捕まる人もいるだろうが

居留地に入る道は一つだけではないし

居留地内で密造する人もいるらしく

アルコールへのアクセスは難しくはない

 

一日一便の飛行機でしか他の地域との

行き来ができないアラスカ州バローでさえ

アルコールとドラッグの乱用が存在するのだ

 

始まってしまったものは、元に戻しようがない

 

だから?

 

これから、どうする?

 

まだ、アルコール依存症の定義にははまらないが

無茶な飲み方をする若い患者に

もう一切、アルコールには触れるなと言うしか

今、私にできることはない