かさ地蔵 | That's where we are

That's where we are

the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

ある日の事

 

ERでのシフトに到着すると

そこで既に待ち構えていたのは

 

10人の患者

全員、80歳を越していて

誰一人、英語を解さない

 

団体さんでバスに乗っていて

そのバスが事故に巻き込まれたらしい

 

目立った外傷はないものの

なんせ、相手はかなりのご高齢

なにかしら既往歴はあるし、薬は飲んでるし

 

誰が読んでくれたのか、通訳さんが来てくれて

一緒に一部屋、一部屋回って

患者の話を聞き、診察して回る

 

そろいにもそろって、話し好きな方ばかりで

「どこか痛い所があるか?」と問えば

ここは20年前くらいから痛くてね

こっちは15年前からかしら?とか

う~ん、この辺りも痛いかも...とか

 

これを

私が訊く→通訳さんが訳す

→患者が答える→通訳さんが訳す

の順でやっていくので

とても素晴らしい通訳さんだったのですが

それでも1.5倍くらいの時間がかかる...

 

交通事故にあった人が良く訴えるのが

「首の痛み」

 

思い頭を細い首が支えている構造上

軽度の衝突でも、首が痛くなる人はいて

その中で、誰がレントゲン写真なりCTなりが

必要になるのか?

誰彼構わず画像を撮るのは、時間、経費の無駄

そしてもちろん、放射線への被ばくも増えます

 

その無駄を回避するために使われるのが

NEXUS Criteria

Canadian Cervical Spine Ruleという

事故の状況と患者の身体所見によって

画像診断のいる患者と要らない患者を見分ける方法

 

どちらもきちんと使えば感度99~100%という

驚異的な診断基準なのですが

NEXUSは高齢者では感度が落ちるという

データもあり(感度は変わらないと擁護するデータも)

Canadian C-spine Ruleに関しては

65歳以上は自動的に頚椎外傷に関しては

ハイリスクとなってしまうので使えない

 

65歳を15年前に超えている80歳越えの方々には

どちらも適さない診断基準

 

人間、なぜ、皮膚とか透けて

中身が見えるように生まれてこなかったのだろう

そんな非現実的なことを考えながら

 

頚椎のCTスキャンをオーダー連発(ため息)

 

結局CTは全部陰性

外傷所見ナシだったのですけれどね

 

ゾロゾロと一緒に帰って行かれる10人

何を言っているのか詳しくは分からないけれど

ニコニコしながら「サンキュー」と

列をなしてお辞儀をされる姿は

かさ地蔵を連想させて、可愛かったです

 

 

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