仕事の始まる時間が7時だとすると
6時50分には仕事場でONの状態にしておけと言う人と
6時59分59秒まで顔を出してはいけないという人が言う
私は努力してもしなくても
大抵ギリギリまで来ない方なので
あんまり気にすることでもないが...
週末の雨の日で道が混んでいないせいか
いつもと違って十数分早く仕事に到着
空いている椅子にバッグをよっこいしょと降ろした瞬間
「ドクターO,今、心電図を取ったのですが...」
まだバッグから手が離れていない状態
心電図を差し出された
STEMIやん!
上の波形が正常
下のがSTEMI=ST elevation mocardial infarction
(「ステミ」と呼びます)
心筋梗塞の一種で心電図のSTが上がっているタイプ
心臓を養っている血管(冠動脈)のどこかが詰まっているので
緊急で心臓カテーテルによる治療が必要
患者がERに着いてから、心臓カテーテルを開始し
冠動脈の詰まり部にたどり着くまでは90分が目標です
(この時間をdoor-to-balloon timeと言います)
ここの病院は小さな分院で、心カテの設備がなく
救急車で15分先のメイン・キャンパスの病院に搬送が必要
もうこれは、時間との闘い
「誰?この患者?どこの部屋にいてるの?」
「ルーム1です」
「胸痛の患者?」
「ええ」
患者の名前も年齢も分からないまま
とりあえず、診察室へ駆け込む
「話をしながら色々進めるけれど、驚かないでね
落ち着いたら、きちんと説明するから」
問診しながらナースに指示を出し
事務員さんにオペレータに「カテ警告」を出してもらうよう頼む
これで一気に、心カテをする心臓内科医と
そのスタッフ全員に通知が行く
週末の夕方で、皆家からの呼び出し
ベテランのナースが
言われる前にアスピリン、二トロを用意してくれたり
必要な書類を持って来てくれたり
美しきかな、チーム・ワーク
そして、そこにデンッとコンピューターの前に
陣取るのは我が同僚
そりゃあ、シフトが終わり次第家に帰りたかろうが
これ、あなたのシフト中の患者よ?
私があと数分遅ければ(時間通りにシフトを始めれば)
これはあなたの仕事だったのよ
分刻みの状態なのはわかっているだろうに
完全無視ってなんなの?
"I need that computer."
今は電子カルテの時代で
コンピューターがないと仕事にならない
ここのER,待合室はやたらと広いくせに
仕事をするスペースは、コンピューターをもう一台
余計に置けないくらいに狭い
これしか、私が今使えるコンピューターがないのに
「あ、ああ、すまん、すまん」
患者は無事に搬送されて行った
仕事の始まる時間が7時だとすると
6時50分には仕事場でONの状態にしておくべきか
6時59分59秒まで顔を出さないべきか
"What's gonna work?"
"Team work!"
妙に納得してしまった子供番組のテーマソング