僕の信じている神様 |   EMA THE FROG

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無宗教甚だしいわけです。生まれてこの方、神様の存在なんて信じたことがない。大学の時に短期留学しに行ったアメリカで、僕は牧師の家にホームステイした。家の隣はプロテスタント系の教会で、そこに集まる多くの信者は、当たり前だがみな神の存在を信じていた。僕のホストであるマイクやトリッシュ始め、そこで出会った多くの人々はみな素晴らしい人間だった。優しく、強く、ユーモアがあり、純粋だった。僕は彼らのことが大好きだった。本気で尊敬した。しかし僕は神を信じない。彼らがどんなにイイヤツで、そうあれる理由が、キリスト様だったとしてもだ。

ただ、今ぼくにはひとつだけ(ひとりだけ?)信じている神様がいる。家から車で10~15分くらいのところにある、稲毛浅間神社(いなげせんげんじんじゃ)の神様、通称「浅間さん」だ。

前にこんなことがあった。

娘のお宮参り以来、ときどきお参りに行っていたその神社に、久々にご挨拶に行こうということになり、車を走らせていた。国道14号線。広い道路だ。あと数分で到着するという辺りで、信号に引っかかり、僕はスピードを緩めた。そしたら、ちょうど隣を走る車を運転していたおじさんが、窓を開けて腕を振り振り、こちらに向かって何かしきりに怒鳴っている。「なんだよ、なんか文句でもあんのかよ」と僕は若干イラッとしたが、その顔が余りに真剣なので嫌な予感がし、助手席側の窓を開けた。おじさんは言った。

「タイヤ!あんたの車の後ろのタイヤ!なんか変な周り方してるよ!危ないぞ!」

驚いた僕は親切なおじさんにペコペコ頭を下げてお礼を言い、運転に気をつけながら、神社ではなくディーラーに向かった。整備士さんに見てもらったら確かに、「ああ、確かにちょっと歪んでますね」とのことだった。それほど深刻な状況ではなかったが、しかしそれでも、気づかないままずっと運転していたら、何があったか分からない。そしてそれが判明したのが、浅間神社に向かう道の途中。「あのおじさんは、もしかしたら浅間さんじゃなかったろうか」と僕は思った。

こんなこともあった。

今年の5月、妹の挙式のために嫁とハンナと一緒にグアムに行った。式が始まった頃、ハンナが熱を出した。式はなんとか終わったものの、彼女の熱は高まるばかり。僕らは観光や買い物どころではなく、部屋に閉じこもり、苦しそうなハンナの看病をした。とはいえ薬が飲める年齢でもない。僕らにできることは、熱が引くことを祈るだけなのだ。

家から持参した浅間さまのお守りをハンナの胸元に乗せ、「よくなりますように。よくなりますように」とお祈りした。気付けば明日は帰国の日。このまま熱が下がらなければ、日本に戻ることができないかもしれないという状況。

「浅間さん、頼むよ。頼むから、ハンナの熱を下げてやってよ」

夜遅くまで看病した。そして次の日の朝、寝込んでいた数日間を取り戻すように元気いっぱいのハンナ。熱はすっかり下がっていた。僕らは無事に飛行機に乗り、日本に、我が家に戻ってくることができた。「すげえ、浅間さんってば海超えてきたんだぜ」嫁と真剣にそんな話をした。「他にもいろいろ忙しいだろうにね。ありがたいね」家にある浅間神社でもらってきたお札に、ハンナ含めた家族みんなで手を合わせ、頭を下げた。それからすぐ、ハンナはまた熱を出した。つまり、帰国するあいだだけ下がっていたわけだ。むしろ、リアルだ。どうしても下がっていなければならない間だけ、浅間さまが何とかしてくれたんだ。

そんなこんなで、僕は浅間さまを信じている。でも、なんていうか、感覚としては神様っていうより、「おじいちゃん」とかそういう感じ。何となくいつも見守ってくれているような、ピンチの時にはちゃんと助けてくれるような、そんな頼れるおじいちゃん。

んで、先週末、久々に「おじいちゃん」に会いに行ってきた。晴れた日の境内は気持ちが良かった。賽銭箱の前で財布を開くと、なんとそこにあるのは500円玉1つ。「う、500円か」迷う僕。「ねえ、500円はさすがに、高いよねえ」神様を前に嫁に相談する失礼な僕。「私の財布に100円玉あるから、それで」ひどい嫁。ハンナと三人でパンパンと手をたたき、眼を閉じて、「浅間さん、いつもありがとうございます。そして、これからもよろしくね」と祈る。自己中極まりない僕たち。欲しがりすぎの家族。ちょうどお宮参りの儀式中だった浅間さんの、大きな溜息が聞こえてくるようだった。

「おまえたち、いいかげんにせえよ」

その日の夜、僕、ものすごい金縛りに遭いました。布団の中に何本モノ腕がグイグイグイ!と入り込んできて、僕の身体を締め上げる。身体はピクリとも動かず、全力で叫んでいるはずなのに、声も出ない。こんなに怖い金縛りは久々だった。金縛りのメカニズムは科学的な意味で理解しているし、僕自身、霊感は全くないのは分かっているのだけど、さすがに怖ええよ、マジで。

次の日、嫁に「昨日の金縛りはひどかった。あれは多分、浅間さまの仕業だぜ」と言い出す僕。「昨日さ、賽銭ケチッたから怒ったんだよ。それに、今までだって頼りっきりでさ、助けて助けてばっかで、ついにあの人、切れたんだよ。それで俺を怖がらせようとさ……」

さすがに怒られました。

曰く、「浅間さまが守ってくれたから、あんなもんで済んだのよ。もっと敬虔な気持ちを持ちなさい」

だそうです。



なるほど。そうだね。
浅間さま、フォーエバー。