29歳男、小学4年生の女子に負ける |   EMA THE FROG

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先週の土日に、嫁の親友R(現在妊娠8ヶ月)とその娘Y(4年生)が愛知県からはるばる遊びに来てくれた、高校の同級生であるRと僕の嫁、以来20年以上友達やってるわけで、嫁と知り合って6年7年くらいの僕よりずっと歴史が長い。また、嫁はYの育児にも積極的に参加したとかで、Yにとって僕の嫁は、大袈裟に言えば第二の母的なポジションにある人間だ。

そんなYが、大好きなK(RやYは嫁の事を旧姓で呼ぶ)を奪った僕を好きなはずがない。事実、僕はYからあからさまに嫌われていた。話しかけるどころか、視線を投げる事すら拒否するような固くなな態度に、20歳も年上の僕は何もできずにいたのだ。だから今回彼女らが家に遊びに来ると聞いて、内心不安でいっぱいだった。30歳目前のオッサンが、9歳の女の子と仲良くできるか悩んでいる姿は、さぞ不気味だった事だろう。

果たして土曜の昼、彼女らは家にやって来た。僕は恐る恐る、Yにコンタクトを取ってみた。ハンナを餌に、エマをダシに。僕の緊張が伝わるのか、あるいはやはり僕という人間への感情のせいか、なかなか反応が返ってこない。「やっぱりダメか?」焦る僕。だいたい僕は、4年生位の年齢の子供との接点など全くないのだ。どんな話をしたらいいのかよく分からないし、そもそもYと僕の間には因縁がある。言ってみれば、僕とYはK(嫁)という人間を取り合った恋敵みたいなものだ。仲良くしようとする事自体に無理があるんじゃないか?

その後、並んでWiiスポーツをしたりして、僕とYは表面的には仲良しになった。RやKから「なんかすっかり仲良しじゃない」みたいな事を何度も言われた。僕も「うん、もうすっかり」なんて笑顔で答えていたが、僕とYとの間にはまだまだ大きな壁が立ちはだかっていた。だから嫁に、「Yと二人でエマの散歩行ってきたら?」と言われた時、若干パニックに陥った。「いや、それは、まだ、なんていうか」…どうにか嫁かRを連れて行く方向に持っていけないかと案を探ったが、図らずもその時ハンナは爆睡中、嫁が家を離れるわけには行かず、Rに関しちゃ8ヶ月の妊婦だ。どうしようどうしようどうしようと考えている時、Yが言った。「行く」。

エレベーターを降りて近所の公園に向かいながら、僕は自分を恥じた。Yの方がよっぽど大人だ。僕とYとの間に低からざる壁があるのは確かだろう。しかしYはその壁を越えようと自ら一歩踏み出した。僕はどうだ?壁から逃げる事しか考えなかったじゃないか。

Yとエマと暗くなるまで走りまわって遊び、家に戻って宅配ピザを頼んで食べた。スパイスの効いたチキンを食べて、「辛い辛い」とYは言った。カボチャを丸ごと使用したプリンを食べて、「辛いのなおった」と言った。ハンナを軽々抱っこする怪力を見せて、僕は驚いた。エマもハンナもたくさん遊んでもらって、Yの事が大好きになったようだった。僕?僕はYを尊敬すらしていた。今回僕とYとの距離が縮まったのだとしたら、全てがYの勇気と思いやりによるものだ。本当にいい子だ。大人の言う事に従うという、くだらない意味の「いい子」じゃない。一緒にいて楽しい、イイヤツって意味のいい子だ。

帰りの新幹線の中から嫁に送られたYからのメールには、「こじゃ(僕の事)と仲良くなれてよかった」というような内容があったらしい。実際のところ、Yの僕に対する複雑な感情、あるいはそれを発端とした気まずさは、まだ完全に解消されたわけではないと思う。それを分かった上でそう書いてくれるYを、すげえなあと思う。そして、何かおじさんのが子供でごめんかったなあと思う。

ということで、ちょっと仲良しになれた僕とY、いつかは「二人でディズニーランド」にも挑戦するぜ。Y、楽しみにしとけよ。