クレーマー クレーマー |   EMA THE FROG

  EMA THE FROG

    roukodama blog

ボストンテリアという犬種独特なのかもしれないけど、エマはオモチャで遊ぶのが何より好きだ。ぬいぐるみからゴムボールまで、彼女専用のオモチャ箱には数十個のオモチャが詰まっている。その中からお気に入りのいくつかを選んで、僕らの手元にグイグイと押し付ける。「投げて」の合図だ。僕らはオモチャを掴んで投げる。エマは嬉しそうに、あるいは一心不乱にそれを追い、小さな口にくわえて僕らの元に戻ってくる。一回ではもちろん満足しない。十回、二十回、ときには百回以上、僕らはオモチャを投げる。鼻ペチャ犬はすぐに息が上がるので、ゼイゼイゴーゴー言ってるエマに「ちょっと休憩しよう」と僕らは言うが、彼女はまるでそれが使命だとでも言うように、執拗にオモチャを押し付けてくる。

とは言えこの家でもう2年近く暮らしているエマだ。僕や嫁がオモチャを投げてあげられない時間があるというのもちゃんと知っている。それは例えばご飯中だったり、洗濯物をハンガーに吊るしている時であったり、トイレにいる間であったり、あるいは僕がヘッドフォンつけて戦争ゲームに夢中になっている時間だったりする。遊んでもらえる時間、遊んでもらえない時間、その判断基準には若干の疑問が残るものの(どう考えても今は無理でしょエマちゃん!という時に催促されることもあるので)、それでもエマはエマなりに、僕らの行動から、あるいは態度や雰囲気から、頭を使ってその判断をしているわけだ。

話は変わるが、僕は今おおいに怒っている。何に怒っているかって、某インターネットサービスの窓口対応に対してである。5月の中ごろ、ポストに入っていた広告を見た事がきっかけで、それまで使用していたケーブルテレビとインターネットのサービスを別の会社から受ける事を考え始めた。広告には様々な特典が、小慣れたデザインと文面で分かりやすく表現されていた。具体的には、契約後最大2ヶ月は使用料無料、無線ルーター無料プレゼント、10000円キャッシュバック、その他セキュリティソフトやメールソフトに関するあれこれ。そしてそもそも、サービス自体が魅力的であった。ケーブルテレビに関しては、それまでよりも10以上見れるチャンネルが増えるし、インターネットの表示スピードも格段に上がる。さらにそれら数々のメリットを享受しつつも、使用料は今までとほとんど変わらない。懐疑的、慎重、石橋を叩きまくって破壊してしまう、そんなタイプの僕でも、「これは乗り換えない理由がないなあ」と思い、ついに契約する事にした。

僕は広告に書かれていた番号に電話をかけ、契約したい旨を伝えた。対応してくれたおばちゃんは明るくハキハキした感じのいい人で、(僕は新規顧客なのだから当然だが)丁寧にいろんな事を説明してくれた。僕はおばちゃんの指示に従って様々な手続きをすませた。雰囲気的には、「契約手続きはいろいろややこしいですけど、私の方でできる事は全て済ませますので安心してね」という感じだった。実際に、そういう事を何度も言われた。それでも僕は前述したとおり心配性なので、その電話を切って以降の手続きについて、しつこいくらいに確認し、そして電話を切った。ちなみに、僕はこの時点でなんの申込書も作成していない。それらは全部、おばちゃんがやってくれるというので。

で、インターネットサービスに関しては特に問題なく進んだのだが、ケーブルテレビの機材(チューナーというやつですね)が待てど暮らせど届かない。確かに機材の郵送には多少時間がかかるとは聞いていたが、既にその時点でおばちゃんの電話から1か月以上が過ぎていて、さすがにおかしいと思って、僕はそのケーブルテレビのHPに書かれていた窓口に電話をかけた。僕はけっこう短気なので、その時点で既に怒り口調で、機材が届かない事を担当者に伝えた。僕はその担当者とのやり取りの中で初めて、あのおばちゃんが販売代理店の窓口担当者でしかなかった事を知った(我ながらバカだ)。僕はおばちゃんとのやりとりをイチから担当者に伝えた。「確かに、機材の発送はまだ完了されていません。これは決算方法を確定する書類が提出していただけていないからです。そちらに青い封筒と、決算方法に関する申し込み用紙はございませんか?」担当者は言った。

確かにあった。気になってはいた。しかし例のおばちゃんはこの封筒については何も言っていなかった。もしかしたら言っていたのかもしれないが、少なくともこの書類の提出が必須である事は伝わっていなかった。金のかかるサービスを受けるにあたり決算方法を指定するのは当然だが、契約後2ヶ月間は無料という事で、サービス開始後しばらくしてから提出依頼がくるのかなあ、くらいに思っていた。僕はちょっとイライラしたが、その書類がないと機材の発送ができないのだと担当者があくまで食い下がるので、出さなダメなもんはしょうがない、と僕はすぐに申し込み用紙に必要事項を記入し、青い封筒に入れてポストに投函した。担当者の話では、この書類が届けば問題なく機材の発送ができるとの事だった。

話は終わらない。待てど暮らせど機材は届かない。その代わりとでも言う様に、決算方法が確定された旨が書かれたハガキが届いた。そこには僕の名前と、登録番号だという長い文字列が書かれていた。僕は考える前に携帯電話を手に取った。電話口の担当者に「こういうものが届いたんだけど、別にどうもしなくていいんだよね?」と念を押した。担当者は困ったようにいった。「いえ、そこに書かれた登録番号を申込書に記入していただき、それを郵送していただかないと、機材発送は行えません」。僕はいいかげん我慢の限界だった。だいたい、今さら申込書って何なんだ。そんなもん1か月以上前にあのおばちゃんが作ってくれたんだろうに。「いえ、お調べしたところ、当テレビサービスに対する申込書はいただけておりません。恐らくですが、お客様が代理店のものに作らせたのは、インターネットサービスに関する申込書ではないでしょうか」「いや、そうかもしれないね、そうかもしれないけど僕はそのおばちゃんの指示に従って受け答えして、これで全部大丈夫だっていうから安心して待ってたんだよ、それに先日お話したそちらの方は、あの青い封筒が届きさえすれば機材発送できるって言ってたんだ、申込書が未提出なら、どうしてその時言わなかったの?確か、○○さんって男の人だけど」。

さすがプロ、担当者は僕が「ちょっとやっかいなお客さんっぽい」事に気付きつつも、あくまで落ち着いた、嫌味でない程度に謝罪の雰囲気をまとった口調で続ける。「申し訳ありません、本日○○はお休みを頂いております。こちらの不手際で不愉快な思いをさせてしまいまして、お詫び申し上げます。ですがお客様、お手数ではありますが、サービス開始にはその申込書がどうしても必要でございます。また、青い封筒に関してですが、それは決算方法を指定する為の書類で、管理は○○○という別会社が行っております。郵送先もそちらですので、青い封筒が届けば機材発送が行える、というわけではございません。申し訳ありません」。

そして僕は30分以上にわたり文句(というか、正当な主張)をしたが、結局どうしたって事態は好転しないので電話を切り、イライラしながら申込書を作成し(それはずっと手元にあった。ただ、おばちゃんの話から書く必要がないと思っていただけ)、郵送した。もう、ちょっとおもしろくなってきていた。多分あと1回か2回、僕はやつらとやりあう事になるような気がした。

果たしてその予感は的中した。

申込書の郵送から2~3日後、僕はまた「こちらから」電話した。全く、クレームのあった客にくらい、そっちからかける習慣を身につけろってんだ。「申込書、届きました?」僕は愉快な気分でいった。「はい、確かに届いております。ありがとうございました」だからそれをそっちから連絡しろって。「これでもう、いい加減終わりだよね?まだ何か足りない?もう何度も確認してきたんだけど、そのつど足りないものが増えるからさ」次はどんな反応をするんだろう、僕はワクワクした。「はい、あ、すみません、一度確認してまいります」こちらの返事を待たずに保留にされる電話、新人らしい。しばらくして担当者は、期待通りの反応を引っさげて戻ってきた。「すみませんお客様、最後にひとつだけ、開通工事の際に受け取られた書類に書かれているIDをお教えいただけますでしょうか」「はは…、なんじゃそら」「ええと、ですから開通工事の際にうけ…」「うん、それは分かる。でも今出先だから手元にないし、それが今回も必要だなんて全然知らなかったけど」」「あ…、そうでございますか…えーと、えーと」「そちら何時までやってるの?」「21時です」「じゃあ帰ってから電話するから、確認するけどほんとーにそれで最後?ぜってーにそれで最後?誓ってそれで最後?全く、どうかしてるぜ」

困る新人を取り残して僕は電話を切った。

で、さっきなぜかその会社とは「別の」会社から連絡があって、機材を週末お届けしますと言われました。なんじゃそら。まあ、カタツムリもびっくりのスローペースながら、何とかゴールには近付いているようです。もういいよ。わしゃ疲れた。

さて、そんなこんなでエマの話。

エマにあって、その窓口担当者およびその管理会社にないものはなにか。それは「想像力」ですね。頭を使って、相手が何を考えているかを「想像」し、それに応じた行動をするということ。エマは僕や嫁や、時にはハンナのことを注意深く観察し、それに合わせた対応をする。それは言ってみれば、コミュニケーションの基本だ。今回僕を(長期にわたり、あるいは、複数回にわたり)イラつかせた窓口担当者たちには、それができなかった。

彼らの提供するサービスについて「ド素人」である僕に対して、どんな説明をすればどんな事が伝わるのか、あるいは伝わらないのか、それをキチンと考える想像力が足りなかった。もちろん、この一連の流れの中には、僕自身の「勘違い」が無数に挟み込まれているだろう事はわかっている。担当者の方こそ、「いやあんた、それこないだ説明されたでしょうが」と怒りを感じたこともあったかもしれない。

それでも僕はサービスのプロである彼らに対し、その想像力が足りていない事を強く指摘したい。彼らはもしや、「サービス内容を説明するのが私の仕事」だとでも思っているのではないだろうか。全然違うよ。あんたらの仕事は問い合わせしてきた客に、必要な内容を「理解してもらう事」なんだよバカちん。


さて、長々書きましたけど、まあそういうわけで、僕は怒っている。怒っているし、同時に、自分に警告をしてもいる。僕は想像力を大切にしなければならない。今回のダメ担当者たちのように、相手に「こいつ、想像力ないなあ」と思われないような、想像力を。



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