郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす / ジェイムズ M.ケイン |   EMA THE FROG

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ディーン・R. クーンツという人の本を読んだ事がきっかけで、最近はちょっと「海外小説」を読んだりしている。とは言ってもまだ2冊。レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』と、ジェイムズ M.ケイン『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』。しかもブラッドベリの方はその独特な文体(まあ、翻訳なんですが)にちょっと面食らっていて、なかなかページが進まず、まだ数十ページしか読めてません。

一方、ケインの『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』は、うって変わってシンプルで読みやすい(まあ、当然こちらも翻訳ですが)。ちょいワルの浮浪青年の一人称で書かれているからか、一文一文がとても短く、無駄がなく、はっきりしていて、驚くほどサクサク読み進めることができる。プロットも(いい意味で)単純なので、あとでどんな話だったか思い出せない、という事もありません。ちなみにこの小説は、これまでに3度(4度?)も映画化されているそうです。人気なんだね。

で、まあ、感動はしないまでも、よい作品だなあと思ったわけですが、巻末に付属されているケインのエッセイの方が、本編よりもむしろ興味深かった。これはケインがこの作品を書く前、つまり小説家としてまったくの無名だった頃の話から始まるのですが、その頃のケインの考え方が、なんか最近の自分と変に重なるわけです。ケインも僕も、「テクニック」を軽視(軽蔑?)しているふしがあった。よい小説はよい感性から生まれるもので、テクニックの蓄積によって生まれるものではない、そう考えていた。しかしやがて、ケインはハリウッド映画の脚本を手掛けている友人との話を通じて、そして僕はクーンツの書いた『ベストセラー小説の書き方』という本を通じて、テクニックが非常に重要である事と、テクニックがあくまでテクニックに過ぎない事を知った。

ケインはその後、その映画脚本家の友だちに相談に乗ってもらいながらこの作品を書き、それでも13社から出版を断られ、14社目でめでたくデビューした。さらに月日は流れ、この作品は何度も映画化されるほどの評価を受けることになり、また、(スティーブン・キングと肩を並べるらしい)クーンツのおっさんからも、「アメリカ文学史における最重要作家のひとり」と目されるほどの、大作家となった。

…ということで、まあなんというか、色々な意味で印象に残る作品・作家でした。そういえば「1Q84」が絶好調の村上春樹が最近、「ネットに意見があふれている今だからこそ、物語は余計に力を持たなければならない」みたいな事を言っていましたが、僕は彼の小説をあまり好きじゃありませんが、この言葉の内容は非常にタイムリーな感じがします。まあ、あくまで個人的な意味で。

最後に、アマゾンの『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』のレビューの中に、とても的を得た文章があったのでその一部を引用。

<主人公の放浪青年が、玉突き屋で賭けをして負ける場面があるのだが、これがこの物語の全てを暗示している様に思った>

確かに。


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