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ell08

既婚者が日常の中でふと出会う
ドキドキと一線を超えそうになる

そんな心情を
シリーズ展開しブログ執筆しています。

 

夜の街は、昼よりも静かで、どこか現実から少しだけ離れたような匂いがする。

由香と会うのは、たった二度目だった。

最初はただ、久しぶりに話そう――そのはずだった。

 

 

約束の時間より少し早く着いて、車の中で音楽を流していた。

曲の歌詞がやけに沁みる夜。

外灯に照らされた窓越しに、

彼女の姿が見えた瞬間、

なぜか呼吸が浅くなった。

 

 

「久しぶり。」

その一言で、すべての時間が逆戻りした気がした。

昔と同じ笑い方。

でも、どこか寂しそうな目。

 

 

彼女は軽く笑いながら、

「家ではなかなか、こうして話せる人いなくてさ。」

と、ぽつりと言った。

 

 

それを聞いた瞬間、

自分の中の“何か”が共鳴した。

僕もまた、同じだったから。

 

 

二人で車を走らせた。

街を抜けて、人気のない道へ。

窓の外の光が遠ざかるたびに、

現実が少しずつ薄れていく気がした。

 

 

会話は途切れ途切れ。

でも、不思議と居心地が悪くなかった。

沈黙の中に、言葉よりも多くのことが流れていた。

 

 

「最近、眠れてる?」と彼女が聞いた。

「うん、まあ。寝つきは悪いけど。」

「そういう顔してる。」

彼女は笑いながら、僕の方を見た。

その目が、まっすぐで、痛かった。

 

 

心の奥にずっとあった“空白”が、

少しだけ埋まるような気がした。

その瞬間、自分がどこに向かっているのか、

わかっていながらも、止められなかった。

 

 

帰り際、由香は言った。

「また話そうね。……ちゃんと話の続き、したいから。」

 

 

僕は頷くだけだった。

言葉にしたら、

もう“何か”が壊れてしまいそうで。

 

 

エンジンをかけると、

車の中に彼女の香水の匂いが残っていた。

甘くもなく、強すぎもしない。

けれど、いつまでも消えなかった。

 

 

その夜、家に帰ると、

妻はすでに寝息を立てていた。

同じ部屋にいるのに、

まるで別の世界にいるような静けさ。

 

 

窓の外の月がやけに明るく見えた。

光の下で、自分がどんな顔をしているのか、

確かめる勇気がなかった。