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ell08

既婚者が日常の中でふと出会う
ドキドキと一線を超えそうになる

そんな心情を
シリーズ展開しブログ執筆しています。

 

仕事帰り、ふと寄ったコンビニの駐車場で、

エンジンを切ってからもしばらく、スマホを眺めていた。

妻には「今から帰る」とだけ送って、

そのまま別のアプリを開く。

 

 

──同級生の由香。

高校時代、特別仲が良かったわけでもない。

でも、最近になってSNSでつながった。

写真の中の彼女は、どこか大人びていて、

あの頃のあどけなさの面影が、

ほんの少し残っていた。

 

 

「元気?」

軽い気持ちで送ったつもりだった。

“既読”の文字がついても、返信はなかった。

 

 

10分、15分。

家に帰るタイミングを逃して、

車の中で缶コーヒーを飲み干した。

空になった缶を握りしめながら、

何をしているんだろう、と自分に呆れる。

 

 

その夜、ベッドに入ってからスマホが震えた。

「懐かしいね。元気だよ。」

たったそれだけの文章なのに、

心臓が少しだけ跳ねた。

 

 

どうして、たった一言に、こんなに反応してしまうんだろう。

妻の背中はいつものように静かで、

画面の光だけが、自分を現実から切り離していく。

 

 

それから、何度かやりとりを重ねた。

「仕事、大変そうだね」

「最近どうしてる?」

他愛もない会話。

でも、その“他愛もない”が、今の自分には救いだった。

 

 

ある夜、由香からこんなメッセージが来た。

「なんか、疲れた顔してそうだね。ちゃんと寝てる?」

 

 

見透かされたようで、言葉が出なかった。

妻にはもう、こんな優しい言葉をもらったことがない。

そんなはずないのに、

今の僕には、それが現実のように感じられた。

 

 

返信を打つ手が、わずかに震える。

“ありがとう。大丈夫だよ。”

と打っては消し、

“今度、ゆっくり話したいね。”

と打ってはまた消した。

 

 

やっと送れたのは、

「久しぶりに、話したくなった。」

その一文だった。

 

 

既読がついたのは、2分後。

──そして、返信。

「私も。ずっと誰かと話したかった。」

 

 

その瞬間、

車の中の静寂よりも重たい何かが、

心の奥で“音を立てて崩れた”気がした。

 

 

もう、後戻りはできない。