奥州の覇権争奪決勝戦を前に、本物の「姫たちの戦国」が描かれます。
愛姫「(お香に)血の匂いがする」
喜多「滅相もございません。お気持ちが高ぶっておられるせいでございましょう」
愛姫「聞いてみよ」
喜多「はい。…良い香りでございます。もうお休みなされませ」
愛姫「喜多」
喜多「はい」
愛姫「葦名との合戦ではまた多くの死人が出よう。たとえ戦には勝っても家族たちは嘆き悲しむに相違ない」
喜多「お家のために果てるのは武門の誉れでございます」
愛姫「心の底からそう思うのか」
喜多「思います」
愛姫「そなたの生みの親鬼庭左月が人取橋で討ち死にした時はどうじゃ。悲しくはなかったのか」
喜多「武将として立派な最期を遂げ、殿の感状まで頂戴いたしました。これにすぐる誇りはございませぬ」
愛姫「重ねて聞く。此度の出馬には小十郎も綱元もお供致しておる。武運つたなく落命いたしてもそなたは心乱さずにいられるのか」
喜多「人の一生は短いものでございます。大恩ある伊達家の盾となって誉れある死に場所を得られますれば、弟たちは本望でございましょう。些かも悔いる所はございません」
愛姫「私は合点がいかぬ」
喜多「…」
愛姫「殿にもしものことがあれば、悲しみのあまり泣き叫ぶであろう。取り乱して野原をさ迷い歩くかもしれぬ。川に身を投げて殿の後を追うかもしれぬ」
喜多「おやめなされませ!…不吉なことを申されまするな」
愛姫「…夫婦(めおと)とはつくづく不思議なものじゃ。お側に居れば何かとぎくしゃくして心ならずも疎遠になる。ところが遠く離れていれば情けが通じて恋しゅうなる。朝な夕なにご無事を祈りご帰還を待ち侘びて胸掻きむしる思いが年々深くなって行く。」
この後、喜多は、ひとり水ごりで戦勝を祈願するお東の姿に接します。
お東は人の生き死によりも先ずお家の存続が大切なのです。
喜多、愛姫、そしてお東の考えはそれぞれが本心であり真実なのでしょう。
どちらかを間違いだとか可哀想だとか決めつけるのは、平和慣れした現代人の驕りに他ならないと思います。
さて、いよいよ「摺上原の戦い」です。
画面の迫力もさることながら、音声でも十分に魅せられました。
ナレーション「天正十七年六月五日の朝、政宗は磐梯山麓の原野、摺上原に軍勢を押し出した。伊達軍の陣立ては、先陣猪苗代盛国、二陣片倉小十郎、三陣伊達成実、四陣白石宗実、五陣政宗の旗本、後陣浜田景隆、左備え大内定綱、右備え片平親綱であった」
おお、大内兄弟が左右に配されたのですか。
定綱が苦労して伊達家に奉公を果たした場面がしっかり描かれていればこそ、たったこれだけのナレーションに感動できるのです。
物見「敵先陣が繰り出しました!」
政宗「出陣じゃ!」
しかし、人馬に巻き上げられた砂塵が風下の伊達軍を襲い、先陣、二陣の戦いは不利。
政宗「鉄砲隊、敵右翼へ回れ!」
おお、出陣にあたりお東から授かった五十挺の鉄砲ですね。
お佐子の出しゃばりが微笑ましく思い出されます。
確かに筒先は南に向いています。これで戦況が打開されました。
これにもまた感動。
伊達成実「富田将監、出会え!」
富田将監「おお、何者じゃ!」
成実「伊達藤五郎成実!」
おお、ここで一騎討ちが観られるとは感激。
馬上では太刀で、地上では格闘となり最後は組み伏せておいて脇差しで決着をつける。
実に説得力があります。
葦名義広「二番三番はなぜ動かぬ!河内はどうした!松本は何を致しておる!」
金上盛備「模様見でござりましょう。卑怯にもほどがござる」
弱冠十七歳だったという葦名の総大将。
内紛もさることながら如何せん相手が悪かった。
山家国頼「風向きが、変わりました」
政宗「よぉし、馬引けぇ」
物見「敵の本隊が繰り出しました!」
政宗「押し出せ!」
いよいよ大将同士の戦い。
政宗、義広それぞれの近習旗本が雌雄を決すべく奮闘します。
盛備「政宗殿覚悟!金上盛備じゃ!」
政宗「おお!」
鬼庭綱元「待て!」
盛備「邪魔立て致すな!」
政宗の側に付き添っているところをみると綱元…なんですよね?
見事に敵の参謀格(軍師とは言わない)を討ち取りました。
政宗「撃て撃て!一兵たりとも逃すな!」
ナレーション「午後になって風の向きが変わり、形勢は逆転した。足並みの乱れていた葦名勢は戦意を失い、我先に退却し始めた」
葦名の「あしな」みが乱れたのですねw。
葦名義広「まだ負けてはおらぬ!」
葦名家臣「これまでにござる!」
堤義広カワイソス。
片倉小十郎「えいえいえい!」
伊達軍「おー!」
小十郎「えいえいえい!」
伊達軍「おー!」
馬がびっくりして駆け出しそうになっているのが、可愛い。
いやあ満腹満腹。
これでまだ半分の尺なのですから、どれだけ中身が濃いんだこの大河ドラマは。