東の館を出て館山城に移ったお東の方でしたが、呼び名はお東のままでしたね。
政宗による無謀とも言える会津侵攻の間、伊達家中では年寄りや女達がそれぞれの立場で戦の成り行きを心配しています。
一方戦場では、葦名に敗れた政宗がやり場のない怒りをぶちまけていました。
片倉小十郎「殿!ここは正念場でござる!将たる者が平常心を失うては全軍の士気に関わりまするぞ!」
政宗「その物言い聞き捨てならん。この俺に指図をする気か!」
小十郎「お気に召さずばこの場で小十郎をご成敗下さりませ。但し!これだけは申し上げまする。戦には駆け引きがござる。押すべきは押し、引くべきは引くが理の当然!成算も無く猪突猛進するは、これ匹夫の勇にあらずして何ぞや!」
政宗「…」
小十郎「何卒此処はご辛抱下さりませ。長陣にて兵も馬も疲れ果てておりまする。どうかご退陣の御触れを」
小十郎かっこいい。
政宗の血気を冷ますことができるのは流石に永年の傳役ですね。
しかしその小十郎をもってしても、お東の厳しい評価を受けた政宗の心を鎮めることはできませんでした。
戦いに敗けた事よりも母親に叱られた事の方が口惜しい。
まぁ分かりますよ。
そんな時はこの人の出番です。
虎哉宗乙「はっはははははははははははは、とうとう地獄を覗かれましたか。はっははははははは」
和尚、笑いすぎです。
虎哉「武将の道は地獄への道じゃ。地獄を通らねば極楽へ行けぬ。人を殺(あや)め城を奪い己れも狙われ裏切りにおののき悪夢にうなされ続ける。これが武将の宿命でござる」
こうハッキリ言ってもらうと気持ちがいいね。
このあと、虎哉が柏手を打ち「どちらの手が鳴ったか?」と問う禅問答。愛姫の「どちらでもない。両手がなければ音は出ない」という言葉に心眼が開いた政宗。
孤掌鳴らし難し。
戦とは自軍の武勇だけではなく他の勢力との連合と協力のもとに行うもの、言い換えれば敵への謀略と調略で行うものということに気がついたようです。
今ごろかい?
まぁ二十歳そこそこですもんね。
戦だけではなく家臣の扱いも危ない危ない。
関白となった秀吉から書状をもらい嬉々として報告に来た遠藤基信に対しても傲岸不遜な態度です。
政宗「俺は小田原の北条と結んで秀吉の野望を食い止める。成り上がり者が勝手に関白を気取り藤原を名乗るなど言語道断。わが伊達家こそ藤原の子孫ではないか」
遠藤基信「秀吉殿の勢いは端睨すべからざるものがござりまする。遠からず西国四国鎮西の果てまでも討伐平定することになりまするぞ」
政宗「基信、そちもそろそろ隠居したらどうだ。俺の執政は片倉小十郎だ。大人たちの口添えは無用である」
あーあ、あの温和な基信を固まらせちゃいましたね。
視聴者も固くなったところで、ちょっと一服。
今回の天下人の日常は、金平糖で大騒ぎ。この人は何をやっても絵になるんですね。いや、これ、地?
そして、山家国頼にワットさんこと御佐子と喜多を挟んだ三角関係。いや輝宗も含めた桝形関係?いやいや御佐子を除いた三角関係?いやいやいや何が何だかわかりません。
にしてもやっぱりお東さん最強です。
お東「殿は、私をどんな女だと思うておられるのでしょう?お義は強情で我儘でまるでじゃじゃ馬のよう。内心とんだ嫁をもろうたものじゃと」
伊達輝宗「そうでもない。お前には優しい処がある。優しすぎて余計な口出しをするのだ」
お東「まあ♡」
輝宗「これよさぬか」
お東「お手打ちになさって下さりませ。ご隠居様♡」
デレデレです。
さて、シリアスに戻りましょう。
村田宗殖「政宗殿に尋ねるが、この出陣は大殿のお許しを仰いでおられるのか!」
政宗「これは異な事を承る!伊達の棟梁はかく申す政宗でござる!」
相変わらず怖いもの知らずな青二才共なのでした。
しかし、この青二才共は面白い。
政宗「俺は必ず父上を乗り越えてみせる。乗り越えなければ極楽は見えん。男にはなれんのだ」
小十郎「仰せのとおりでござります」
政宗「教えてくれ小十郎、男の器量とはいかなるものか」
伊達成実「無論、戦に勝つことよ」
政宗「それだけか」
成実「勝てば敵はひれ伏し、家臣も納得して従うではないか。領土は拡がる。女(おなご)は思いのままじゃ」
小十郎「いかに戦うかが肝要かと心得まする。伊達に若武者政宗在りと天下の耳目を震撼させ奥州諸大名の野心を揺るがすような戦をせねばなりません」
政宗「綱元はどうだ」
鬼庭綱元「はい。殿の下知に従い喜んで命を棄てる者が如何程おるか。それがご器量の目安かと存じまする」
政宗「ならば尋ねる。そち達は俺のために死んでくれるか」
成実「知れた事よ。いつでも死のう」
小十郎「神明に誓うて」
綱元「申すまでもございません」
みんなかっこいいよ。
これぞ戦国大河ドラマです。
これだけの分厚い前段を経て、さぁ次回、「八百人斬り」。