「誰かに盗られるくらいなら貴方を殺していいですか」
『天城越え』は、石川さゆりの代表曲と言ってもいいでしょう。
私もよく聴きます。
でも、
あの歌詞がハッピーエンドのラブストーリーだったとは知りませんでした。
(作詞家吉岡治氏の談話より)
『天城越え』、難しいって言う方多いですね。
歌う人も多いけど。
あれはね、前段として『さざんかの宿』(大川栄作)があるんです。
不倫の歌なんだけど、普通は男がメインで女性が付いて来て、別れたり、別れ切れなかったりして…、僕はそれを逆にしたんですよ。
「くもり硝子を手で拭いて、あなた明日が見えますか」
これは誰に聞いているの?ってよく聞かれます。
「女でしょ」という答えが多いんですがこれ、男なんです。
後ろから背中に「ここに来てしまったんだから仕方ないでしょ」という風な声の掛け方なんです。
従来の耐えて忍ぶ、日本の女性のそれは良い処ですが、現代の女性は経済的にも精神的にも自立して拮抗していますから。
だからそれを逆にしたんです。
新しい愛の形に。
珍しかったんだと思う。
たまたまそれが当たって、成功して。
そしたら皆が、「不倫」を書いてくれって。
それで石川さゆりに書く事になったんです。
それが『天城越え』なんです。
あれは実は三人いるんです。
本妻と愛人と男と。
愛人と男がいる処に本妻が殴り込みをかける。
そこで「あなたを殺していいですか」という言葉が出てくる。
そして愛人は逃げ出してしまう。
喧嘩していたはずの二人は仲直りして「あなたと越えたい天城越え」なんです。
松本清張さんの小説とは全く別です。
松本清張さんの『天城越え』は有名な小説ですし、田中裕子さんの手拭を吹き流しにした姿は印象的ですが。
全く別のストーリーなんです。
「あなたと越えたい天城越え」は、
これからの人生も、あなたと一緒に山坂(やまさか)越えたい。
一緒に苦労がしてみたい。
という女心だったのですね。