ワークショップ体験記 令和2年2月22西村幸祐切り絵展 最後のクロネコならTABIセンター | タクヤNote

タクヤNote

元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

2月22日、切り絵作家の西村幸祐氏主宰の切り絵ワークショップに参加するため、奈良市三条通りのクロネコTABIセンターに行ってきました。

小生がmixiで東大寺コミュニティ管理人をしていたころからお世話になっています、長いネット友である奈良在住の切り絵作家の西村先生が、奈良市内で作品展示の場所としているギャラリーがクロネコならTABIセンターです。切り絵作品を創作し発表するほか、切り絵作りを体験する切り絵ワークショップも開催されていて、小生もちょうど6年前の2014年2月16日に参加をさせいただいたことを、このブログの2014年2月20日の記事でレポを書きました。

 

2014年2月16日クロネコならTABIセンターワークショップにて 画像引用:タクヤNote 2014年2月20日記事 

 

今回の作品展は2月21日(金)~3月31日(水)まで。ワークショップは2月21日(金)~23日(月・祝)、3月7日(土)・8日(日)、3月13日(金)~15日(日)、さらに追加で3月1日(日)にも開催。西村先生も在廊予定となっています。

 

 

毎年正倉院展で販売される西村先生の切り絵作品を毎年正倉院展に行った時に、このブログで紹介させていただくなど、西村先生のことはこのブログでもたびたび取り上げていますが、ワークショップは6年間参加していません。それを何故今になって急に参加することにしたかと言うと、今はアメーバブロガーになられている西村先生の1月24日のブログ記事「『クロネコならTABIセンター』が3月末で閉館する」と書かれていたのを見たからです。

小生のブログでも、クロネコならTABIセンターのことは6年半前の2013年10月25日の記事で詳しく紹介をさせていただいていました。そして、それ以後も奈良市街に行くと、前を通る時に西村先生の作品を覗きに行くことも度々あり、小生にとってもとても身近なギャラリーだったのです。

 

2013年10月19日クロネコならTABIセンターにて 画像引用:タクヤNote 2013年10月25日記事 

 

そのクロネコならTABIセンターが無くなると聞いて、最後の思い出を残さなくてはと、ワークショップ参加を決めて西村先生にメールを送り参加希望の意図を伝えたのです。そして参加の予約をしていた2月22日は土曜日を迎えました。あいかわらずの雨男の本領発揮で、朝からぐずついた天気で、予約をしていた午後1時には激しい雨となりました。

 

 

急に雨足が強まったようで、小生が到着した時、センターの係の人がちょうど西村先生の作品展の看板を慌てて館内に運び込んでおられました。

 

 

 

実はこの日、近鉄奈良駅前の東向商店街の店舗でお昼過ぎに火災があり、消防車が何台も出動する騒ぎがあったのです。小生はその騒然とした火災現場の横を通ってワークショップへと向かうという、激しい雨に火事という何とも波乱を感じる中でのセンター到着となりました。

ギャラリーはセンターの2階。西村先生の切り絵作品が壁いっぱいに飾られていました。中央の作業台には写真左が西村先生、右が先に来られていたワークショップ参加予約をされていた女性が向かい合って座られてました。この日のこの時間に予約をされていたのは小生とこの女性の二人でした。

 

 

仏像や奈良の風景を題材にした作品が多い西村先生。今回は特に西ノ京・薬師寺をピックアップされていました。今年薬師寺は10年におよぶ解体修理が完了し落慶法要が行われる記念の年なので、今回の展示は東西両塔や金堂本尊の薬師三尊像など、その内容を薬師寺メインにされていたのです。

 

 

ワークショップとは西村先生が販売する教材を使い、先生の指導で切り絵の体験をするというもの。小生が行った2月22日午後1時のワークショップを予約をしていたのは小生とこの女性の二人だけだったのですが、後からの予約の無かったもう一人の女性が来られ、ワークショップには3人が参加となりました。左の女性が予約をされていた方、右が予約無しで参加の方です。

途中で西村先生が昼食で席を外された時間があったので、予約で来られた女性と少しおしゃべりをしました。こちらの方は奈良公園へ自転車で来れるという近くの方で、西村先生の作品は展覧会などでよく見ていたものの、ワークショップへの参加はこの時が初めてと話をされていました。

 

 

こうして、西村先生の監修のもと、参加者による切り絵体験のスタートです。予約の無かった女性は奈良の大仏、東大寺の盧舎那仏を、予約をされていた女性は興福寺の八部衆・阿修羅と五部浄の二点を教材として選ばれていました。そして小生(タクヤ)が選んだのは…

 

聖観音菩薩立像(薬師寺東院堂蔵)[白鳳時代・国宝] 画像引用:奈良国立博物館『白鳳展』図録

 

「やっぱり今日は薬師寺の仏像でなくては」と、東院堂の本尊・聖観音菩薩立像の教材を選びました。金堂本尊の薬師三尊と共に古代金銅仏の傑作と呼ばれる薬師寺の至宝です。仏像を横顔で描くという構図も、西村先生の特色の一つです。

 

 

こうしてワークショップがスタート。最初は女性と少しおしゃべりもしていたのですが、途中から全員無言となり黙々と切り絵に取り組むような状況に。楽しみながらのワークショップだったはずが、何故か真剣な張り詰めた空気となってしまいました。

自分が切り絵をしている手元を自分で撮影することは出来ないので、すぐ向かいで作業をされていた女性の手元を撮影しましたので写真で紹介します。切り絵作業はこんな感じで行います。

 

 

無言で黙々と切り絵をするワークショップ参加者と、それを黙って見ている講師の西村先生。そんな無言の時間がしばらく続いた後、西村先生は黙って見ている時間がもったいないと思われたようで、この時間を使ってご自身の作品の作成を始められました。先生は多忙な中TwitterやFacebook、さらには小生も読者になっているアメーバブログと、ネットにご自身の作品を毎日アップされておられ、ちょっとでも時間があれば作品を作られる。正に切り絵に明け暮れた毎日を過ごされているのです。

参加者の我々に、この珍しい作成の途中の作品を見せていただきました。

 

 

この作品は南フランスに紀元前の古代ローマ時代に築かれた水道橋『ポン・デュ・ガール』です。古代ローマ初代皇帝オクタビアヌスの腹心、アグリッパの命で紀元前19年ごろに建築された三層構造の水道橋。奈良の仏像や古建築同様に歴史ある文化遺産をモチーフにされておられたのです。

 

『ポン・デュ・ガール』 画像引用:Wikipedia 

 

「ポンプも無い時代、水流を滞らせないように1㎞で30㎝強という驚異的な精度で勾配が付けられており、当時の建築技術の高さには驚かされる」とか「建築目的がローマ帝国内の都市の市民たちにきれいな水を供給して快適な暮らしを保証するためという、極めて国民に寄り添った事業であった」などの話を西村先生は熱く語られ、歴史や文化が作品に込められていることが伝わりました。

 

実は6年前の切り絵ワークショップでは相当に悪戦苦闘した思い出があります。6年前に書いたブログ記事から当時の悪戦苦闘ぶりの模様を書いた分を引用しますと…。

 

ここまで切って知ったことですが、西村氏は切り絵に和紙を用いられるのですが、和紙というのは繊維が荒く、練習用シートのとレッシングペーパーとは比べ物にならないくらい、きれいに切り抜くのが難しいのです。 

小生が切るスピードを早くしたのは、時間短縮の目的もありましたが、間違いの無いように慎重に切ろうとすると、ぎこちない出来になり生きた絵にならないと思ったからです。 

しかし、実際にやってみると、きれいに切り取りにくい和紙の特性もあって、細かい切り絵をするのにはかなり骨を折りました。切ってはいけない箇所も何カ所も切れて、余裕と思っていたはずが「こんなはずでは」の連続となったのです。 

 

今回ワークショップの予約をする時に、脳裏によぎったのはこの時の無念。「次こそはきれいな切り絵を作って、西村先生に目に物を見せよう」と意気込んでいたのです。実際前の手を焼いた時の記憶を思い出しながら、観音菩薩の頭の宝髻や顔、耳などを慎重に切り抜いて行きました。しかし、この聖観音菩薩の切り絵には、とてつもない難関があったのです。

 

 

観音が首から下げた瓔珞をつないだ首飾りまで、西村先生はきっちり描写されておられたのです。これが細かくて細かくて、「大変な教材を選んだ」と気が付いた時にはもう遅い。何とか、必死に細かい切り抜きに挑んだのですが…

 

 

「ひ…悲惨!!」

あーー、あーー、切り分けないといけない一つ一つ小さな瓔珞の玉が、どんどん切り分けの間がつぶれて大きな穴に。目に物を見せるどころか、返り討ちも返り討ち。見るも無残な自分の切り絵の有り様に、顔から血の気が消えていく自分のことがよくわかりました。

 

 

何とかそれでも最後まで切り終えて、申し訳ない気持ちで先生に「出来ましたと」作品を出しますと、西村先生は首飾りのあたりを少し手直しをしていただき、シートに入れていただきました。また、参加の記念品として、可愛らしい蝶のポップアップもいただきました。よく本を読むので、しおりとして使うのにピッタリそうです。

 

 

実はコロナウィルス感染を鑑みて、西村先生から奈良での感染拡大が確認されたらワークショップ中止の可能性も告知されていたのです。正直ワークショップが開催されるのかどうか恐る恐るという気持ちだったのですが、無事に参加が出来てとても安心でした。

ずっと西村先生の作品展の場として小生としても思い出深いクロネコならTABIセンターが3月いっぱいでの閉館になるということで、小生は最後に名残惜しむ言葉を先生に告げますと、西村先生はもう既にこれから奈良で作品展を開催する新たなギャラリーを選定されていることを話していただきました。御年70歳を超えた先生ですが、そのクリエイティブな精力的な活動はまだまだ衰えること無く、さらに奈良で切り絵の創作と作品の発表を行っていくという心強い決意を聞き、なにか自分も力づけられたような気持になりました。

 

小生がワークショップに参加したのは2月22日の土曜日で、お昼1時からの回は参加者3人という、ちょっと少人数での開催となり、ゆっくりと参加させていただきました。しかし先生のアメブロの情報ですと、翌日の毎日新聞(奈良版)に先生の作品展を紹介する記事が掲載され、それを見て来たという参加者が大勢殺到し、ゆっくり出来ないほどの大盛況だったそうで、急きょ3月1日(日)がワークショップ開催日として追加されたそうです。

 

 

切り絵は背後から光を当てて鑑賞するのが正式な見方ということで、家に帰った小生はさっそくやってみました。今回も返り討ちに合ってしまったので、場所はどこになるのかわかりませんが、また必ずワークショップに参加する日が来ると思います。

 

 

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