東院 夢殿のお水取り─ 法隆寺 平成31年2月16日 ─ | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
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今回の記事では法隆寺の行事『夢殿のお水取り』を紹介します。
 
法隆寺 東院 夢殿と言えば、聖徳太子の斑鳩宮跡と言われる東院伽藍の中心に建つ八角堂。聖徳太子が宮に籠って夢(神託)を行い、金人(仏)が出現し妙儀を告げたという伝承に基づき、奈良時代の高僧・行信が天平年間に建立したと伝えられます。西院の五重塔・金堂を始めとする世界最古の木造建築群と並ぶ法隆寺の、そして日本が誇る国宝建築です。
 
 
小生が法隆寺の年中行事のタネ本にしている『法隆寺の四季 行事と儀式』(高田良信著・法隆寺刊)をひも解くと、この夢殿で『お水取り』という行事が、毎年旧正月12日に営まれているというのです。
『お水取り』と言って多くの人が思い出すのは、奈良を代表する年中行事・東大寺二月堂の修二会ではないかと思います。
東大寺二月堂修二会のことが『お水取り』と呼ばれる理由は、十二夜に二月堂下の閼伽井屋という覆屋の中にある若狭井という井戸から、霊験を持つ香水をくみ上げる『香水汲み上げ』の行事にちなみます。
 
 
画像左 東大寺二月堂修二会 お松明 画像引用:タクヤNote 2018年3月12日記事  
画像右 東大寺二月堂修二会 香水汲み上げ 画像引用:タクヤNote 2015年4月6日記事  
 
お水取りと言えば東大寺二月堂のイメージが強いので、小生も最初聞いた時は法隆寺夢殿の行事も類似したものかと思ってしまいました。しかし、共通しているのは名称だけでまったく違う内容の行事となっているようです。先に紹介した本『法隆寺の四季』の中の解説(64-65ページ)、短い文面なので全文引用してみます。
 
 
〔夢殿のお水取り〕
この行事は旧正月十二日に夢殿で行われている。いつごろから始まったのかはわからないが、中世以後の庶民信仰の一つと考えられえる。
当日は法隆寺の住職と寺僧が夢殿に参拝したあと、内陣正面にある礼盤を堂外に出し、その裏面を日光にあてる。しばらくすると自然に水気を帯び、汗をかいたように水分が出るという。
それを「観音の水」と呼び「夢殿のお水取り」という。この礼盤の裏に現れる「水分」の多い少ないによって、その年の雨量を占い、米の豊作。不作を判断するという。
この行事は法隆寺における珍しい庶民信仰の一つといえる。
 
この行事は『法隆寺の七不思議』の一つに数えられ、このブログ『タクヤNote』では2015年11月6日の記事 で七不思議のうちの一つとして紹介をしました。しかし、この記事は法隆寺に関する様々な資料を元に書いたものであり、これまで小生は夢殿のお水取りを実際に目の当たりにしたことはありませんでした。そのこともあって、この記事を書いて以来3年以上も「実際に夢殿のお水取りを見てみたい」という考えを持っていたのです。
小生はこれまでこのブログ『タクヤNote』で、奈良の古寺院で行われる様々な行事を紹介して来ました。記事を書く手順を言いますと、まず行事が行われる日時を確かめると共に、その行事の内容を事前に調べて行きます。そして行事に足を運んで見た後、さらにその行事について詳しく調べて、半分体験レポート、半分は資料をまとめた論文という感じで書いているのです。行事について調べるのに一番よく使うのがネット検索でありまして、小生が行く前にその行事を見に行った人の書いた、行事についてのネット記事を参考に書くということが多いのです。
しかし、この夢殿のお水取りに限っては、ネットで調べても“実際に行きました・見ました”ということを書いている人が全然いないのです。行事の進行内容や主旨などの知識を全く持たない、これまでとは勝手の違うレポになることを余儀なくされることになりました。
まずこの法隆寺のお水取りが何月何日に行われるかが公表されていません。朝の8時からという情報が書かれたサイト(斑鳩の里観光案内Web )がネット上にはあったんですが、日付に関する情報はありません。ヒントになるのは『法隆寺の四季』に書かれた「旧正月十二日」の記述だけ。
そこで旧正月が何月何日かをググって調べてみました。
 
 
今年の旧正月は2月5日ということで、この日を元日として旧暦の一月十二日が今の暦で何日かを計算したところ、夢殿のお水取りの日は2月16日ということに。「2月16日に法隆寺で行事がある」という発表はどこにもありませんが、自分で調べた情報を元にレポにチャレンジしてみようと、意を決して法隆寺に行くことにしました。
 
こうして迎えた2月16日の朝、雨男の名を持つ小生らしく、この日も今にも雨が降り出しそうな生憎の曇天。結果から言えば、この日のレポは、ブログの読者のみなさんの期待に添える内容とは行きませんでした。
まずは朝、家を出る時間からコケました。小生はずっと奈良のお寺のことを書いてますから、奈良在住か奈良に近い場所に住んでいると思われがちですが、小生が住んでいるのは大阪、それも奈良よりも京都にずっと近い場所で、毎回2時間もかけて奈良に行っているのです。だから朝の8時に法隆寺に着こうと思うと、朝の6時には家を出なくてはならないのですが、この日は飼っている犬が家を出る直前に外へ逃げ出したりするなどのトラブルで、6時をかなり過ぎてしまったのです。
本来なら時間より前に到着したいところでしたが、JRの法隆寺に到着したのは午前7時40分過ぎで、そこから1.5キロメートル先の法隆寺夢殿まで8時前には着かないといけないというのはかなりハードな行程。結局夢殿手前500メートルで午前8時の梵鐘の音を聞くことになってしまいました。
こうして午前8時をわずかに遅れて、東院の入口となっている西面の四脚門(鎌倉時代・重文)に到着したのですが…そこには東院から退出をしようとする一山の僧侶のみなさんがおられるではありませんか。
 
 
東院伽藍におられたお寺の職員さんに話を聞いてみると「お水取りはもう終わったみたいですよ」という説明が。アッチャ~って気持ちで時計を見ると、午前8時5分。「えっ!?、まだ5分」とびっくりしてしまいました。
確かに先に紹介した斑鳩の里観光案内Web の夢殿のお水取りについての解説には「わずか7分でした」という記述が見えましたが、それにしても『法隆寺の四季』に書かれているような作業内容、読経をした後に夢殿の本尊・救世観音菩薩像[飛鳥時代・国宝]のお厨子の前に置かれた礼盤(須弥壇の前に置かれ、僧侶が座して読経をするための高座)を堂外に出して裏面に日光を当て水量を見て占いをし、さらに礼盤を元に戻して帰るなんてことが、果たして5分にも満たない時間で出来るだろうか。状況から見て、おそらく実際には礼盤を外には出していないのでは。夢殿の堂内で短い読経をしてから、堂内で礼盤をペロッとめくり、裏を見て終わりという行事内容なのではと推測されました。写真撮影の出来ないお堂の中で短時間で終わってしまうのであれば、どの奈良の行事に対しても写真付きで「見て来ました」というサイトがあるのに、この夢殿のお水取りに限っては無いというのも説明がつきます。
 
 
ただ、この日の天気は雨の降りそうな曇りでありましたから、『礼盤を堂外に出し、裏面に日光をあてる』ということはいずれにせよ出来なかったわけで、もしも天候が日差しのある晴れであったら、また礼盤が堂外に出された可能性も考えられます。もし天候が晴れであったら、それは実際に現場で確かめないと真実はわからないという訳です。
寺僧の皆さんは早々に帰ってしまわれたので、止もう得ずその場で朝の清掃をされていた寺職員の人に「お水取りの占いの結果はどうでしたか?」と聞いてみましたが「知らない、聞いていません」という答えで、どうやら占いの結果を寺側は特に公開をされていないようです。
今回のレポについては小生も反省も多々ありますが、一つ不満だったのは、マスコミが誰一人としてやって来ていなかったこと。夢殿のお水取りは、法隆寺では珍しい庶民信仰の行事で七不思議の一つにも数えられ、その年の吉兆を占うという話題性もある行事です。奈良の風物詩としてマスコミが取り上げて、さらにその年の占いの結果を報道発表してもらえば、小生のようなブロガーよりも魅力的な情報発信になると思うのであります。
 
結果的には不満足なレポとなったものの、ただ小生が調べた夢殿のお水取りの日時に間違いが無かったことは収穫でありました。ちなみに、来年の旧正月が何月何日かをググって調べてみますと…
 
 
1月25日が旧暦の一月一日とすれば、旧暦の正月十二日は2月5日の水曜日ということになります。まだ一年も先の事なので、来年もレポにトライするかどうか今の段階ではわからないのですが、もしも行ったとすれば、今年の2月16日のレポは来年につながるリハーサルという捉え方もあろうかと思います。
とりあえず来年も行くのであれば、今年のの失敗の経験をしっかりと活かして、ぜひともレポを成功させたいと思います。そのためとりあえずは、出かける前に犬を家の外に逃がさないことかと思います。
 
※この記事に書きました2020年2月5日に、再び法隆寺夢殿へ夢殿のお水取りに行き、やっと見ることが出来ました。この模様は、2020年2月9日の記事 で紹介させてもらいましたので、こちらの記事も読んで下さい。
 

 

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