近くにきてわかった。
その男は射掛けられた右腕を固定し
大の大人二人で持つような盾をくくりつけていた
左手には通常の兵が持つようなものより
大きな剣を持っている。
あの大将は強い。いや自分はとんでもない男に
射かけてしまったのだと
恐れている自分を恥ずかしく思った。
始まると展開の激しさに兵を動かすので精一杯だった。
150人を3つの部隊に分け、
ドイルと副官に志願した男とともに
それぞれが指揮をした。
自分が当たろうと試みているのは
あの手負いの大将である
しかしどんな策を講じようとも
その部隊は崩れず、まとまりをみせている。
右の目の端で、
志願した副官の胴が離れている姿をとらえた。
大将があちらの部隊とまとまり交差するときに
あの大きな剣でなぎ払ったのである。
副官の部隊は
嵐にあった畑のかかしのように兵が倒れていく。
それをはっきりみたカスファーは
自分が恐怖に支配されていくのを
はっきり感じていた。
人ではないもの、それと相対したときに
このような気持ちになるのか。
すると、突然嵐がやんだ。
---------------------------------------------
見違える程、動きが変わった。
ディオスの目には指揮官はあの細身の弓を背負った男だ
と、はっきりわかった。
兵の捌きも見事だが、槍も相当に遣う。
戦傷はたくさん受けてきたが
あの矢傷は、
自分が街の宿で女を抱いている時に
山賊に奇襲を受け、愛馬を盗まれたときと
同じくらいしてやられたと思ったのだ。
その山賊は大柄なくせにすばしっこく未だ捕まえられていない。
そんなことの恥ずかしさよりも、
山賊もあの細身の指揮官も
自分を出し抜いたところに興味を持ってしまったのである。
「ディオス殿、あの副官は持ちこたえることができなかったようですが
残り二つの部隊はなかなか手ごわいですな。」
「なにブラーフ、おまえの目にも写っているだろう
敵の指揮官は恐怖に駆られている。
もう一つ二つ奇策をぶちこめば、あっさり崩れるだろう」
「ではなぜ正面からのぶつかり合いを繰り返すのです。
早々に終わらせてしまった方がいいでしょう。」
「おまえにはあの副官だと思われる男の必死な形相が見えなかったのか。
指揮官の恐怖をぬぐい去ろうと、闘うことで示していた
おそらくは旧友か何か絆の深いものがあるのだろう。」
「そんな甘いことを・・」
「まぁ、待て少し話をしてみようと思う伝令を出すぞ。
もし出さないなら俺は黙ってでもいくぞ」
時にして四刻ほど激しい戦闘を繰り広げた。
多少の損害があったにしろ敵の部隊は一個壊滅
潰走にいたらないのが不思議なくらいの状態である。
夜襲などの気配もなくこちらも
近くの山でとってきた兎を火にかけながら座っていた。
野営で束の間の休息とは言いつつも
ブラーフもこんなことを戦場で簡単に言えてしまう
ディオスを嫌いになれなかった。
義父の愛弟子である。
共に鍛錬したこの兄のような男は自分とアランがいないと
何を勝手にしでかすかわからない、
山賊の件にしたってそうだった。
しかし、頑固なこの男はテコでも動かず、
伝令を出すふりをしたことを勘付くと一人で
甲冑もつけずに敵陣へと向かってしまった。
アランが聞いたら叱られるのは自分であることに
ブラーフは頭を抱えながら星空を仰いだ・・・。
---- see you next time.........................