『パッション』
2004年 アメリカ・イタリア
《スタッフ&キャスト》
監督・製作 メル・ギブソン
脚本 ベネディクト・フィッツジェラルド/メル・ギブソン
撮影 キャレブ・デシャネル
出演 ジム・カヴィーゼル/モニカ・ベルッチ/マヤ・モルゲンステルン/マッティア・スブラージア/ホリスト・ナーモヴ・ショポヴ/クラウディア・ジェリーニ/ルカ・リオネッロ
《解説》
誰も描けなかった、受難の衝撃
メル・ギブソンが構想12年、私財30億円を投じて映画化にこぎつけ、イエス・キリストの最後の12時間を描いた超スリリングな宗教ムービー
全米で社会現象的な大ヒットを記録した問題作 英語ではなくアラム語、ラテン語を採用するなどリアリティーにこだわり、肉体的苦痛に徹底的に注目し、イエス・キリストが十字架にはりつけにされていく過程を克明に映画化
《物語》
紀元1世紀のエルサレム、夜更けのほの暗いゲツセマネの園にひとりの男がいる、彼の名はイエス、最後の晩餐のあと、そこへ赴いた彼は、弟子たちが眠る中、父なる神に祈りを捧げ、忌まわしきサタンからの誘惑を退ける
十二使徒のひとりであるユダの裏切りによって、大祭司カイアファが兵を差し向ける、イエスは無抵抗で捕らえられて市の城壁内に連行される
その報せはヨセフによってイエスの母マリアとマグダラのマリアのもとに届けられる、マグダラのマリアはイエスを救おうとローマ兵にすがるが、望みは聞き入れられない
大祭司カイアファはイエスを冒涜者だと宣告する、イエスを銀貨30枚の代償で売ったユダも、自らの行いを悔い、荒野にさまよった果てに命を絶つ
イエスの身柄はローマ帝国の総督ピラトに委ねられる、裁く理由を見つけられず、イエスをヘロデ王に委ねたピラト、しかしヘロデ王もまた、イエスを罪人ではなく狂人だとして追い払う、ピラトはイエスに刑罰を与えないよう頼む妻クラウディアに告白する
彼が恐れているのはイエスではなく民衆の暴動だった、そこへ再びイエスが連れて来られる、暴徒と化した民衆を前にピラトは自ら決断を下さず民に決断を求めた
「人殺しとイエス、どちらを釈放する?」と、「十字架にかけろ!」と荒れ狂う民衆をいさめながら、ピラトは鞭打ちの刑をまず処した
ローマ兵により鞭打たれるイエス、顔や胸から飛び散る鮮血、次第に過激な鞭にエスカレートし、身体の表から裏へと執拗に続く処刑
そばには冷酷に見守るカイアファ、変わり果てたイエスの姿を見かねたピラトは、釈放するのも十字架刑に掛けるも私次第だと告げる
しかしイエスは「私をあなたに引き渡した者の罪はもっと重い」のだと、ピラトは群衆にこれでも不十分かと訊ねるが、もはや自分の力ではどうすることもできないと悟ったピラトは、群衆の望み通りに処することを兵に申し渡す
十字架を背負わされ、ゴルゴダの丘へと歩むイエス、佇む祭司たちを見てイエスは、自分の命は奪われるのでなく、自分の意志で命を手放すのだと語る、残刑に薄れゆく意識のなか、母マリアと過ごした楽しき日々や、十二使徒との日々を懐かしむイエス
我が息子のあまりの姿に目をそむける母マリア、しかしイエスはいう「母よ、すべてが新しくなるのです」道すがら、イエスに石を投げる者もいれば、彼を慕って嘆き哀しむ女たちの姿もあった
ゴルゴダの丘でイエスは十字架に掛けられる、手足には太い釘が打たれ、頭にはイバラの冠が埋め込まれた、磔にされてもなお、彼を裁こうとする人々の為に祈るイエス、そして3日後に復活すると宣言
十字架の足許で兵士たちが博打をしていると、空が暗くなり天地に異変が起こる、苦しみに耐えぬき、父なる神に見捨てられるという畏れに打ち勝とうとするイエス、やがて彼の生涯は最期の時を迎えるのだった
しかし、すべてはそこから始まる、埋葬された彼は宣言通り、奇跡が起こり彼は復活するのだった
《感想》
目を背けたくなるほど生々しい拷問シーンが続く中、キリストの心の葛藤と死、そして神々しい復活が描かれていきます、イエスを演じるジム・カヴィーゼルは凄まじかったです
棘の付いた薔薇鞭と言うのでしょうか、あれでキリストの脇腹の皮膚がベリって剥がれるシーンがあるんですけどこれが痛すぎます
それにユダヤの描写を巡っては宗教関係者の間に激しい論争を巻き起こし、また観客でショック死する者も出たほどの残酷描写に賛否が渦巻いた
鞭打ちのシーンでは血が飛び散り肉が剥がれ落ちて骨が露出します、キリスト最後の12時間がこんなに凄惨に描かれるとは思いませんでした、ちょっとしたホラー映画顔負けの残酷さです
何が怖いって噂や表面的な事実によって、ひとりの人間を標的にする群衆心理、きっと昨日まで何とも思ってなかったはずなのに、拷問や磔を嬉々として見ている様子は本当に怖いです
復活したイエスが全身の凄まじい傷がなくなってるのに釘を打たれた手は穴が開いたままなのはご愛敬、キリストの復活は本当なのでしょうか?
キリストは人間?それとも神? 敬虔なクリスチャンとして知られている「マッドマックス」シリーズ、「リーサル・ウェポン」シリーズのメル・ギブソンがイエス・キリストの生涯を徹底的にリサーチ
「私はイエスのあまりにもむごい犠牲と彼の恐怖も描きたかった、けれどそれ以上に美しく叙情的で、さらに信仰上の愛についても伝える映像にしたかった」と語る
キリストの妻のマグダラのマリアを演じるのがイタリアの宝石と言われた「アレックス」のモニカ・ベルッチ、美しい彼女がボロボロで傷だらけ、キリストに献身的に仕えます、なので綺麗でセクシーな写真を載せときます
ヨハネ・パウロ2世も試写を観て、「全て真実」とコメントしたらしいです、しかしそれは個人的な感想であって、その結果映画の宣伝に誇大に使われる恐れがあるので直ちに取り消されたそうです、バチカンまで巻き込んだ超問題作ですね
「パッション」とはキリストの「受難」どうか、目を背けないでほしい、すべては、その受難の後に始まるもの それが『パッション』です。
彼が刺し貫かれたのは、わたしたちの背きのためであり、彼が打ち砕かれたのは、わたしたちの咎のためであった、彼の受けた懲らしめによって、わたしたちに平和が与えられ、彼の受けた傷によって、わたしたちはいやされた。イザヤ書53章5節



































