『血ぬられた墓標』
1961年 イタリア
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 マリオ・バーヴァ
原作 ニコライ・ゴーゴリ
脚本 エンニオ・デ・コンチーニ
撮影 マリオ・バーヴァ
音楽 レス・バクスター
出演 バーバラ・スティール/ジョン・リチャードソン/イボ・ガラーニ/アンドレア・ケッキ/アルトゥーロ・ドミニッチ/クララ・バンディ/エンリコ・オリヴィエリ
《解説》
ニコライ・ゴーゴリの短編小説をもとにイタリアのエンニオ・デ・コンチーニとマリオ・バーヴァが執筆したシナリオをカメラマン出身のマリオ・バーヴァが監督した怪奇ドラマ
イタリアホラー映画の父、マリオ・バーヴァの記念すべき監督デビュー作で、カメラマン時代から築き上げてきたユニークな映像感覚に溢れた快作
恐怖を引き起こす王女と、恐怖におののく娘の正反対の二役を演じ、作品の顔となるのはバーバラ・スティールで、元祖スクリーミング・クイーンの出世作となった
《物語》
17世紀のバルカン地方には魔術がはびこり、時の権力者は魔術を行った者は極刑に処した、某国の王女アーサは魔術を行った罪で魔女裁判にかけられ極刑に処される
アーサの恋人の青年貴族と共に執行、アーサは刑の執行にあたり実兄で王をはじめ、自分たちを極刑にした一族を未来永劫に呪いかけると言って死んでいった
200年後の1830年、モスクワの医学界に参加する医師のコーマとその助手のゴロベックは馬車で道を進んでいたが車輪が外れて立ち往生する
馬車主が修理をしている間に2人は森の奥で廃墟となった館を発見、崩れかけた礼拝堂の中にそこで魔女の石棺を発見、棺を開けると横たわる王女は生きているかのよう
蝙蝠に驚いたコーマが銃を放ち、棺の上の十字架が崩れ、手にケガをしたコーマの血が王女の唇に落ちた、2人が立ち去った後に王女アーサは魔女として蘇った
外に出た2人はそこで館の入り口に通り掛かった王女に生き写しの女性カティアと出会う、彼女はアーサの曾孫で館は彼女の父親の持ち物だった
蘇ったアーサは一族に復讐を始め、カティアの父親が原因不明の病にかかり、呼ばれた医師のコーマはアーサに魅入られてカティアの父親を殺害
ゴロベックはカティアの屋敷にあった先祖のアーサの肖像画があまりにもカティアにそっくりだったことから王女の腕にあった護符の謎を解き、魔女の弱点を知った
アーサはカティアを拉致して屋敷の地下に幽閉、アーサはカティアの生気を奪い取って若さを取り戻した、駆け付けたゴロベックにアーサはカティアに成りすまして殺すように言うのだが
《感想》
やっと観れましたイタリアホラー映画の父・マリオ・バーヴァのデビュー作、定石のストーリーながらもモノクロの美しい画で引き込まれます
オープニングで、魔女とみなされて裁判で極刑を言い渡された王女アーサ、某国の王女なのに極刑とは当時の魔女裁判って本当に厳しく残酷だったんですね
なぜいもしない魔女を処刑するために大勢の若い女性が殺されたのか、それも正当な裁判と呼べないようなもので裁かれて、もちろん末代まで呪いをかけますよ
アーサは極刑を宣告した実兄の王やその一族に永遠に呪うと言いながら刑に処された、まずは裏側に何本も生えた金属の棘の付いた仮面を被せて、そこへ思いっ切りハンマーで打ち付けます
この衝撃的なシーンでマリオ・バーヴァのセンスが伺い知れて、さすがに後にイタリアホラー映画の父と言われるだけの事はあるなと、当時はまだ特殊効果もそれほど発展してなかっただろうし
そして火あぶりの刑にするところで大雨が降って、王らはあわててアーサの死体を石棺に入れて礼拝堂で封印してしまいます、火あぶり出来なかったことが失敗だったね
このアーサを演じるのがバーバラ・スティールで、魔女アーサとその子孫となるカティアを演じています、真逆の役柄を見事に演じ切ってます
その大きな瞳でそれが上手く変化して邪悪な魔女と可憐な女性の表情を演じてます、その立ち振る舞いも上品でありセクシーで、豊満な胸元もチラリとしてます
ウクライナ出身のニコライ・ゴーゴリの短編小説「Viy(老婆)」をマリオ・バーヴァが映像化したのですが、同原作はソ連で「妖婆・死棺の呪い」で映画化されてますが似ても似つかない作品です
CGのない時代に霧だとか暖炉の火だとか影だとかで恐怖演出をしています、それに仮面を付けられて穴が開いた顔だったり、十字架を押し当てた額に烙印が浮かび上がったり、照明を駆使した効果も素晴らしいです
数多くの映画監督たちに影響を与えたイタリアン・ホラー映画の父マリオ・バーヴァ それが『血まみれの墓標』です。
なかなか観ることが難しい過去作品も最近は配信で観ることができて毎度ながら嬉しい限りです。



















