戦場のメリークリスマス | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『戦場のメリークリスマス』

 

 

 

 

 

1983年 日本・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督・脚本 大島渚

 

原作 ローレンス・ヴァン・デル・ポスト

 

脚本 ポール・マイヤーズバーグ

 

撮影 杉村博章/成島東一郎

 

音楽 坂本龍一

 

 

 

出演 デヴィッド・ボウイ/トム・コンティ/坂本龍一/ビートたけし/ジャック・トンプソン/ジョニー大倉/内田裕也/三上寛/アリステア・ブラウニング

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

戦闘シーンのない戦争映画、出演は全て男、戦争の闇を容赦なく描く伝説の名作

 

第二次世界大戦下のジャワ山中の日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状態におかれた男たちの心の交流を描いた人間ドラマ、「愛のコリーダ」の大島渚監督が。デヴィッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一といった異色キャストで撮り上げた話題作

 

東洋と西洋の文化の対立と融合という複雑なテーマゆえに企画は難航、従来の映画プロモーションとは違う展開で配給収入10億円の大ヒットにつながった、本作で初めて映画音楽を手掛けた坂本龍一のテーマ曲は映画史上屈指の名曲として今なお愛され続けている

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

1942年、ジャワ島の日本軍捕虜収容所においてヨノイ日本軍大尉は絶対的な権力を持っていた、ある日、朝鮮人軍属であるカネモトがオランダ人の軍人デ・ヨンを犯し、粗暴なハラ軍曹が独断でカネモトに切腹を迫るがそこにヨノイが現れて止めた

 

 

ヨノイは日本軍の輸送機を襲撃するも捕虜となった英国陸軍少佐のジャック・セリアズを預かるものの反抗的な態度だが彼の魅力を感じる

 

 

収容所にやって来たセリアズは収容所の捕虜のリーダー的な存在となり、日本語を話すジョン・ロレンス英国中佐は捕虜たちの兄貴分的な存在で日本軍人たちにも一目置かれている、ロレンスとハラには奇妙な友情が生まれていた

 

 

ヨノイはカネモトとデ・ヨンの事件処理と将校と武器の情報を巡って英国空軍大佐の捕虜長のヒックスリーと衝突、ヨノイは更に厳しく捕虜全員に行をさせた

 

 

無線機を持ち込んだ容疑でヨノイに独房に入れられたセリアズとロレンス、隣同士の独房でロレンスは恋人の話しをし、セリアズは弟の話しをした

 

その日はクリスマスでセリアズとロレンスはハラに呼び出され、酔ったハラは2人を釈放し、自分はサンタクロースでこれはクリスマスプレゼントだと笑った

 

ハラの対応に怒り、要求に応じないヒックスリーに業を煮やしたヨノイは捕虜の全員を集合させる、それは病気の捕虜もでこれはジュネーブ条約に違反していた

 

情報提供を拒むヒックスリーをヨノイは日本刀で斬ろうとするが、そこにセリアズがヨノイの前に立ちはだかり、ヨノイをハグしてキスをした、予想外の展開にヨノイは倒れてしまう

 

 

ヨノイは更迭され、新しい大尉はセリアズを首だけ出して生き埋めの刑に処した、セリアズは過去を思い出しながら亡くなった、そのセリアズの髪の毛を一束ヨノイが切って持ち帰った

 

 

1946年、戦争は終わり日本軍は負け、ヨノイは既に処刑され、その年のクリスマス、死刑判決を受けて執行前日を迎えたハラの元にロレンスがやって来る

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

坂本龍一が亡くなりました、大島渚監督の葬儀の時に演技経験のない自分にオファーが来て、坂本龍一は条件として音楽もやらせて欲しいと

 

 

その結果、坂本龍一の人生は変わり、今の自分があるのは大島渚監督のおかげだと、確かにその通りかもしれません、それまでYMOのバンドの一員だったのですが、音楽家となりました

 

大島渚監督が資金の調達に奔走し、キャスティングにも苦労しましたが監督最大のヒットとなり製作を断って配給だけした松竹が後から悔しがったそうです

 

 

原作は南アフリカの作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編集「影の獄にて」収録の「影さす牢格子」と「種子と蒔く者」に基づいています、作者のインドネシアのジャワ島での日本軍俘虜収容所体験を描いたものです、当時は捕虜ではなく俘虜と呼んだようです

 

本作での坂本龍一が演じるのはヨノイ大尉でレバクセンバタ俘虜収容所長です、見た目がちょっとメイクもあって中性的に見えるんです

 

 

そこに現れたジャック・セリアズ陸軍少佐、演じるのはデヴィッド・ボウイで、こちらも中性的でヨノイもその魅力にやられてしまったようです

 

 

なのでキスされた時はクラクラして倒れてしまいますもん、それまではセリアズの怪我を治すのに急がせ、治ったらサディスティックに責めたり、ちょっと同性愛的な見え方もします

 

 

そして実質的な主役と思われるジョン・ロレンス陸軍中佐を演じるのはトム・コンティで、当初オファーされていたジェレミー・アイアンズは同性愛色が強いと感じて断ったものの、完成した作品を観て「死ぬほど後悔した」と語っています

 

 

そして驚きのキャスティングにハラ・ゲンゴ軍曹を演じるのはビートたけし、これは当時は話題になって頭を坊主にするビートたけしのインタビューを見ましたもん

 

 

しかも相方のビートきよしも丸坊主にして現地まで行ったのに出番がなかったとか(笑)、一週間いたのにほとんど雨で撮ったところはカットされたけどギャラは貰ったらしいです

 

やはり戦争映画というのはわけがわからないです、わけがわからないのが戦争なのかもしれません、自分がそれが正義と思っているのでメチャメチャでも正しいと思っている狂気の世界ですね

 

 

当時の日本軍は捕虜を痛めつけたりしたのでしょうね、もちろん戦争なので敵を捕らえているのでそういう態度になるのは当然なのでしょう、いつの時代も戦争は人間を狂気に走らせます

 

 

でも戦争映画なのですがメッセージ性よりは、日本独特の武士道や神道なんかが欧米の人には宗教のように見えたかも、それに欧米に対しての劣等感もあったでしょう、それがロレンスとハラの友情へと繋がるのかも

 

 

 

 

 

大島渚監督、最大のヒット作 それが『戦場のメリークリスマス』です。

 

 

 

 

 

ビートたけしも本作への出演を機に映画監督を始めようと思ったらしいです、坂本龍一の訃報に「大島渚監督もデヴィッド・ボウイも坂本龍一も逝ってしまった、残ったのは俺だけだ」と。