『タンポポ』
1985年 日本
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 伊丹十三
撮影 田村正毅
音楽 村井邦彦
出演 山崎努/宮本信子/渡辺謙/役所広司/安岡力也/加藤嘉/桜金造/大滝秀治/黒田福美/洞口依子/岡田茉莉子/藤田敏八/津川雅彦/橋爪功/大友柳太朗
《解説》
これはラーメン・ウエスタンだ!
初監督作品「お葬式」で高い評価を受けた伊丹十三の監督第2作目、西部劇「シェーン」を彷彿とさせる設定でニューヨーク、パリなど海外でも大ヒットを記録
タンクローリーの運転手が、寂れたラーメン屋を経営している美しい未亡人に惹かれるまま、そのラーメン屋を町一番の店にするまでを、他の13の食べ物にまつわるエピソードを織り交ぜて描く
《物語》
雨の降る夜、タンクローリーの運転手のゴローとガンは休憩も兼ねて食事をしに、来々軒という寂れたラーメン屋が目に入りその店に入った
そこにはピスケンという体の大きなチンピラとその子分がいて、ピスケンは店の女主人のタンポポを口説いている、しかしタンポポは良い返事をせず口論となる
それはゴローとガンにも及び、ゴローはピスケンにナルトを投げつけて、ケンカなら俺に売れと挑発、ゴローはガンにタンクローリーを運転して仕事を済ませろと向かわせた
ゴローはラーメンを食べた後に、店の女主人の迷惑になると外に出た、そこでゴローは5対1での大乱闘になった
翌朝、タンポポに介抱されて目を覚ましたゴローと仕事を終えて戻ってきたガンは彼女に朝食をごちそうになった、タンポポはターボーという一人息子と暮らしていた
夫の亡き後に見よう見まねで店を切り盛りしている、料理の腕はあるがラーメンには自信がない、ガンは「はっきり言ってマズイです」と
ゴローは熱くラーメンの話しをしてタンポポは弟子にしてほしいと頼み込む、ゴローは仕事の合間にまずはタンポポの体力作りから開始
そして他の店の偵察など、悪い店と良い店を観察、それにタンポポは他店のスープの味を盗もうとするが上手くいかない、それに悪夢まで見てしまう
ゴローはそんな彼女を食通のホームレス集団と一緒にいるセンセイと呼ばれる人物に会わせた、センセイはかつてラーメン屋を道楽でしていた産婦人科医でラーメンの極意を伝授
ある日、そば屋でモチを喉に詰まらせた老人を助けた、老人は大富豪で御礼にとすっぽん料理をごちそうしてくれ、ラーメンで困っていると聞くと老人は料理人のショーヘイをゴローに預けた
センセイは店の内容が変わるので店名も心機一転して変えたらと、そこでゴローの提案でタンポポと変更、ゴローとタンポポとガンとセンセイとショーヘイの5人でタンポポを町一番の店にするべく奮闘する
そんなある日、ゴローはピスケンに呼ばれて5対1のケンカを詫びて1対1の勝負となった、その後にピスケンも仲間に加わり店の内装を担当する事になった
やがてタンポポの努力が実りラーメンが完成した、タンポポにはお客が詰めかけて行列が出来た、ゴローとタンポポはお互いに惹かれ合うものを感じていたものの、ゴローはガンとタンクローリーに乗って共に去って行く
《感想》
世界中で日本のラーメンが人気になっているのは本作が世界中で公開された事が少しでも影響があるのではと思っています、それくらいラーメン愛に溢れています
オープニングで映画を観ようとする白服のギャング風の男が映画を観るマナーについて語ります、それに食通でその後も本作とは関係なく唐突に登場します、演じるのは役所広司
その白服の男の情婦で白服の食道楽に付き合わされています、高級ホテルのルームサービスにおっぱいを見せるサービスまで、その後もエロティックで刺激的な女性です、演じるのは黒田福美
タンクローリーの中で運転するゴローと本を読むガン、それがラーメンの本で2人はラーメンが食べたくなります、通り掛かったところにラーメン屋があってそこに入ります
ゴローを演じるのが山崎努でこのラーメン屋で乱闘となるのですが、元ウェルター級のボクサーで腕っぷしは強いのですが5人相手には分が悪く、翌朝に気が付いたらタンポポの家
タンポポを演じるのは宮本信子で寂れたラーメン屋の女主人です、亡くなった夫が残した店を見よう見まねでしているのでラーメンは美味しくないのです
ゴローの相棒のガンにはきっぱりとマズイと言われてしまいます、演じるのは渡辺謙でタンポポの西洋風調理服をプロデュースします
ゴローと殴り合いをするピスケンを演じるのは安岡力也で、チンピラのようですが土建屋でゴローとタイマンして仲良くなってタンポポの店をリフォームします
そしてゴローは元産婦人科医のセンセイと呼ばれるホームレスをタンポポに紹介、モチを喉に詰まらせた老人に運転手兼料理人のショーヘイを預けられてこの5人で町一番のラーメン屋を目指します
ホームレスがタンポポの息子にオムライスを頼まれてレストランに忍び込んでオムライスを作ります、これがタンポポオムライスなのです、卵で包んだオムライスしか知らなかったので衝撃でした
メインのストーリーの合間に白服の男が出てきて少しエロティックな事をするのです、カキを食べるシーンは印象的で洞口依子演じる海女の手から食べるんです、これがまたもうっ
本筋とは関係のない食に関するショートなドラマがいくつも挟まれてそれが面白いです、死にかけの母親がチャーハンを作るとか、詐欺師が北京ダックを食べたり、歯医者帰りの男がソフトクリームを子供にあげるシーンとかね
スーパーで上品な格好をした老婆が果物やカマンベールチーズを指で押したりしてその感触を楽しんだり、マナーの先生が音を立ててはダメと言うも外国人が音を立てて食べてるシーンとか
フランス料理を食べる会社役員らがフランス語のメニューが読めずに全員が同じになるのですが、平社員のカバン持ちが実は美食家で慣れた調子でフランス料理を頼みます、フランス料理に無知な上司たちと平社員の注文を見てボーイがほくそ笑ます
しかし最後には赤ちゃんが母親のおっぱいを飲んでいるシーンで終わります、どんな人でも最初に口にするものは母親の母乳なんですね
さあ、町のB級グルメたちよ、映画の御馳走を心ゆくまで味わうがよい! それが『タンポポ』です。
ラストにはゴローとガンが店が繁盛して忙しいタンポポを見ながら去って行きます、その後はもう店には現れないのでしょうか?それはそれでね。
更に過激な続・裏237号室の『タンポポ』のレビューはこちらです。