『石の微笑』
2004年 フランス・ドイツ
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 クロード・シャブロル
原作 ルース・メンデル
脚本 ピエール・レシア
撮影 エドゥアルド・セラ
音楽 マチュー・シャブロル
出演 ブノワ・マジメル/ローラ・スメット/オーレール・クレマン/ベルナール・ル・コク/ソレーヌ・ブトン/ミシェル・デュショーソワ/シュザンヌ・フロン/エリーク・セーニュ
《解説》
「わたしを愛しているなら証明して、木を植えて、詩を書いて、そして誰でもいいから殺して」
フランスの映画界の巨匠クロード・シャブロルが、イギリスの女流ミステリー作家ルース・メンデルの同名小説を映画化した官能サスペンス
25歳の青年と、彼が妹の結婚式で出会った美女との危うい愛の駆け引きが描かれる、主演は「クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち」のブノワ・マジメルと新星ローラ・スメット
《物語》
25歳のフィリップは母と結婚を控えるソフィーとパトリシアの2人の妹と暮らすイケメンな青年で、地元で起こった誘拐事件の報道にも耳を塞ぐナイーヴな性格
母親思いでロマンティックでそれに美しい物を愛していた、家の庭には母が亡き父に贈られたフローラという名の彫刻があり、フィリップはこのフローラに愛着があった
しかし母親に新しく出来た恋人のジェラールでフローラをプレゼントする事になりフィリップは落胆するが家族には平静を装っていた
しかしジェラールは仕事でイタリアに出張、フィリップはジェラールが離婚する妻との財産分与の為に売り払われた家に忍び込みフローラを取り戻した
ソフィーの結婚式でフィリップは花嫁付添人のセンタに出会う、フィリップの目にはセンタはフローラに映った、結婚式が終了して1人家に帰って仕事をするフィリップ
そこに雨に濡れたセンタが突然現れた、彼女は濡れた服を脱ぎ捨ててフィリップを抱きしめた、ずっと探していた運命の男だと告白するセンタ
センタは女優をしていて主に舞台を中心にしている、映画にも少し出ているがテレビはくだらない、共同住宅の全てを自分の持ち物にしていて上の階には母親が住んでいる、その夜は情熱的に激しく愛し合った
朝、目を覚ますとセンタの姿はなく置手紙があり、「パリに出かけます、夜遅くに戻るわ、私はあなたのものよ」と、フィリップが住宅の中を歩くと階上でセンタの母親が恋人とダンスの練習中
フィリップが夜に電話をするとセンタは出ない、その次の日に会うとそのまま海へ、センタは私を産んだ時に母は死んだ、上に住んでいるのは父の後妻
センタは自分の生い立ちを話した、モロッコに住みニューヨークでストリッパー、ウディ・アレンの映画に出て演劇に興味が湧いてフランスへ
フィリップはセンタに誘われるままに彼女の部屋に入り浸るようになる、それにフィリップはセンタの言動がどこまでが真実なのかわからなくなっていく
センタとの愛欲に溺れ、言動に振り回された、そしてセンタは彼に自分を愛している事の証を迫った、それは本気とは思えない4つの条件を付きつけるのだった
《感想》
75歳のヌーヴェル・ヴァーグの巨匠クロード・シャブロルがイギリスを代表する女流ミステリー作家のルース・メンデルの同名小説を映画化、愛した女性からその愛を証明すべく様々な要求を強いられる主人公フィリップ
その要求がエスカレートしていくのに対して、愛する気持ちと良識の間で揺れながら快感を覚えていくフィリップを惑わす女性センタ
彼女の要求する4つの条件は木を植える事、詩を書く事、同性と寝る事、殺人を犯す事、センタはフィリップを運命の人だと感じて彼を取り込んでいくのです
フィリップを演じるのはブノワ・マジメルで、母親を大切にするイケメンで庭にある女性の彫刻にフローラと名付けるほどです、それは亡き父親が母親に贈ったもの
それを母親は新しい恋人ジェラールにプレゼント、でもジェラールは気が変わったのか家を売り払ってイタリアへ帰ってしまう、フィリップは夜にその家に忍び込んでフローラを持ち帰り、部屋で隠して愛でてるんです
センタを演じるのはローラ・スメットで、最初はなんか頼りない雰囲気だと思ったんですが、フィリップと関係を持った辺りから印象が変わって妖艶な雰囲気となります
ちょっとエキセントリックな女性のセンタなのですがこれと思った男は運命の人だと真っ直ぐに行動します、なので男は圧倒されるんじゃないかな
でもそんな奔放な性格の女性に惹かれてしまうのも男の悲しい性なのかも、それにミステリアスなところもあって、言動が本当なのか虚言癖なのか
ホームレスが港で殺された事を知ったフィリップはそれがセンタの家の敷地に住み付いてるホームレスだと知って、それをセンタに自分が殺したと嘘を言うんです、それに対してセンタは大喜びするんです
センタもフィリップの為にジェラールを殺すと宣言、しばらくしてジェラールを殺したと言うセンタにカマを掛けてみるとどうやら作り話っぽい、一応ジェラールの家に行くとそこにジェラールがいて安心して世間話をして帰るんです
しかし妹のパトリシアが万引きをして警察に捕まったと連絡があって警察に行くとパトリシアは万引きの常習犯で後ろに組織があるのかもと警察は捜査をするのですが、その時にフィリップは別の刑事に質問されるのです、ジェラールに会いましたねと
フランス映画っぽいラストで完全な完結ではないのですが、サスペンスとしては面白かったです、ファムファタルに溺れていく男の末路はどうなるのか?母親思いのフィリップには荷が重かったのかも
突然出会った男と女、危険な愛と欲望の罠、待ち受けているのは逃れようのない運命 それが『石の微笑』です。
やはり女性は怖い印象です、それでもそんな女性を愛してしまう男なのです。
更に過激な続・裏237号室の『石の微笑』のレビューはこちらです。