『マタンゴ』
1963年 日本
《スタッフ&キャスト》
監督 本多猪四郎
原作 ウイリアム・ホープ・ホジスン
脚本 馬淵薫
撮影 小泉一
音楽 別宮貞雄
出演 久保明/土屋嘉男/小泉博/太刀川寛/佐原健二/水野久美/八代美紀
《解説》
吸血の魔手で人間を襲う第三の生物マタンゴの恐怖!
本多猪四郎&円谷英二特技監督の東宝特撮黄金コンビが、星新一と福島正実の原案を基に「飢えて死ぬか?キノコを食べて化け物となるか?」という究極の選択を通して、人間の心の弱さや醜さを浮き彫りにしていく特撮ホラー
奇談・怪談に属する内容だが、SFホラー映画マニアの間で語り継がれている、また、カルト映画の1つとしても知られており、「世界の珍妙ホラー映画ベスト5」の第3位に挙げられている
《物語》
太平洋のヨット旅行に出掛けた、城東大助教授の村井、その教え子で恋人の相馬明子、笠井産業社長の笠井、彼の愛人で歌手の関口麻美、笠井産業の社員でヨットのベテランの作田、推理作家の吉田、漁師の息子で臨時雇いの仙造たち
さっきまで天気は良かったのに夜になって猛烈な暴風雨に遭遇、マストは折れて舵は外れ、無線も使用不能となり、暴風雨が止んでもただ南へと流されてしまう
水も食糧もなくなって7人はぐったりとしたままただ死を待つ他はない、その時に深い霧の中に島が見えた、一行は喜んで上陸するが白い霧が漂う不気味な無人島だ
湧き水を発見するがそれはどうも人間の手で作ったかのよう、一行が密林を抜けるとそこには島の反対側で、そこに一隻の難破船があった、少なくとも1年は経っている
船内には人間はおろか死体もない、どうやらこの船は核実験の海洋調査船らしい、中は苔やカビに覆われていて不思議な事に鏡がまったくない
ある箱に巨大なキノコが入っていた名はマタンゴ、新種のキノコのようだ、缶詰と航海日誌を発見、缶詰を残したまま人間が消えている事に毒キノコの危険性を示唆、夜にみんなが寝静まった時に侵入者があり、幻かと思ったが足跡が残されていた
やがてみんなが自分勝手な行動をとるようになり、吉田は森の中でキノコを食べた、その夜に麻美を巡って吉田と仙造が争い、吉田はライフルを持ちだした、村井と作田が取り押さえて吉田を個室に閉じ込めた
そんなある日、笠井が食糧庫に閉じ込められて縛られていた、作田が缶詰を奪いヨットで逃げたらしい、そこに吉田と麻美が現れてライフルで仙造を殺したが、隙をみて笠井と村井がライフルを奪い、2人を船から追い出した
それから一週間雨が降り続いた、村井と明子が食糧を探している間に麻美が笠井を食糧があると誘う、そこはキノコの谷のようなところで笠井は麻美に唆されてキノコを食べた、すると美味い、それに幻想的な幻も見えた
気が付くとそこに吉田、彼はキノコになろうとしていた、船内に鏡がなかったのはそのせいだった、笠井は現れたキノコ人間のマタンゴに襲われてしまう
村井と明子が船に戻るともぬけの殻、もう2人だけになってしまった、そんな時にヨットが戻ってきた、しかし作田も食糧がなくなり海に身を投じていた、もうこの島から脱出出来ないのか?
《感想》
当時は仮面ライダーで死神博士を演じていた天本英世がマタンゴを演じていると知って観たのです、そしたら強烈なキノコの化け物の作品でした
オープニングは東京の病院から始めるんです、村井が救助されて病院で今回の悲劇を語るシーンから始まります、それは窓から東京のネオンがよく見える部屋からね
ヨットで海に繰り出した若者たちなのですが暴風雨が来るのを分かっていても戻らずに留まった事から遭難してしまいます、南に漂流してとある島に辿り着くのです
主人公の村井を演じるのは久保明でオープニングで病院にいる男で彼だけが唯一の生存者なのです、そしてヨットの所有者で会社社長の笠井を演じるのは土屋嘉男
笠井の会社の社員でヨットのベテランの作田を演じるのは小泉博で彼の忠告を聞かなかった為にこんな目に、新進気鋭の小説家の吉田を演じるのは太刀川寛、臨時雇いの仙造を演じるのは佐原健二
もう一人の主人公と言ってもいい麻美を演じるのは水野久美で笠井の愛人なのです、妖艶な魅力の持ち主で遭難してからは男たちにギラついた目で見られるもそれを嫌悪するわけでもなく、みんなが私を欲しがっているとね
明子を演じるのは八代美紀で村井の教え子で恋人なのです、麻美とは真逆で清純でまだキスも許さない女性で、遭難してからは真面目に食糧調達を行い、村井を頼りにしています
こんな状況ならみんなが力を合わせて島からの脱出する展開が繰り広げられるかと思えばそうではなく、エゴ剥き出しにする人間の姿を描いています
食糧を奪い合い、女を巡る争い、麻美は襲ってきた吉田に惹かれて笠井は金があるだけでチヤホヤしてたと告白、吉田と島の主導権を取ろうとしたのですが失敗、吉田と追放されてしまいます
やはり女性は行動力だったり自分を欲する男にこの極限状態では魅力的に見えるのでしょうか?、都会だったらお金なのですがこんな無人島だったらそんな物よりも強さなのね
理性を働かせてみんなをまとめて助かる方法を思案する者もいれば、自分の事だけしか考えない恐ろしい人間もいます、それは他の者の命なんて軽い物です
マタンゴというキノコの化け物が登場する恐ろしさよりもこの人間のエゴの恐ろしさの方が印象に残ってますね、それほどジワジワと怖さが迫ってきます
それに当時は映画会社が俳優を抱えていたようで本作も東宝の作品なので出演者は「ゴジラ」シリーズや「空の大怪獣ラドン」や「モスラ」に出演していますね
本多猪四郎と円谷英二の黄金コンビによる特撮は当時としては素晴らしく、マタンゴになる直前のキノコと人間の間の存在が不気味です、ラストもショッキングだったと思います
無人島で展開するエゴと憎悪、そして欲望!怪キノコ『マタンゴ』の恐怖!
おいらの生まれる前の作品ですからチープさは否めませんが今の技術でリメイクするのはちょっと違うのでね。



















