愛人/ラマン | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『愛人 / ラマン』

 

 

 

 

 

1992年 フランス・イギリス

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督・脚本 ジャン・ジャック・アノー

 

原作 マルグリット・デュラス

 

脚本 ジェラール・ブラッシュ

 

撮影 ロベール・フレース

 

音楽 ガブリエル・ヤレド

 

 

 

出演 ジェーン・マーチ/レオン・カーフェイ/フレデリック・マイニンガー/アルノー・ジョバニネッティ/メルヴィル・プポー/リサ・フォークナー

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

15歳の私、愛、心に痛い

 

世界的大ベストセラーとなったマルグリット・デュラスの自伝的小説をジャン・ジャック・アノーが映画化、ヨーロッパのみならず日本でも大ヒットとなった、1920年代のフランス領のインドシナを舞台に、貧しいフランス人一家の15歳の少女と、不動産王の息子の中国青年との愛人関係を、激しく、そして美しく描いている

 

大胆なラブ・シーンが大変な話題を呼んだ作品だが熱情とともに清閑さも漂い忘れがたい印象を残す、フランス人の少女役を、この作品がデビュー作となったジェーン・マーチ、あどけなさのなかに退廃的で官能的な魅力が漂うヒロイン役が素晴らしい、中国人の青年役を香港の人気スター、レオン・カーフェイが演じている

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

1927年のフランス領インドシナ、15歳の私はメコン川を渡る船にいた、家で休暇を過ごして寄宿舎に戻るためだ、そこで知り合った金持ちの中国人男性トニー・リュン、彼は華僑資本家不動産王の息子

 

 

サイゴンまで黒塗りのリムジンで送ってもらう事になった、彼は32歳、私は17歳だと言った、車の中でそっと手をつなぐ2人

 

 

次の日の朝、寄宿舎から学校へ行く途中に黒いリムジンが停まっていた、私は近づきガラスごしにキス、木曜日にまた黒いリムジンが待っていた、私は運転手に言われるままに車に乗った

 

 

そしてチャイニーズタウンの貸し部屋の中へ、そこはただの部屋、中国人はそんな部屋で愛人と会う、私の方から「抱いて‥」、2人はそこで結ばれた

 

 

彼は私の家庭の事を知っていた、家が貧しい事に2人の兄、上の兄はアヘン中毒で金を盗む、母は騙されて使えない土地を買わされ全財産を奪われてしまった、そんな家庭環境、私は彼に何度も求めた、彼もそれに応えた、夜は豪勢な食事、そしてこっそりと寄宿舎へ帰る

 


 

次の日も黒いリムジンが待っていた、私は車に乗ってあの部屋へ、そこで彼に抱かれる、私はこの部屋で快楽を与えられ続けた

 

 

彼には婚約者がいた、名家の遺産相続人だ、しかしそれは親同士が決めた事で彼の知らない人、彼は私の家族を食事に招待した、いくら貧しくてもフランス人、中国人の彼を母や兄たちは軽蔑し無視、しかし私が彼と付き合って金銭の援助を受けているのだ、上の兄は彼を挑発し彼は不愉快、その夜、殴られレイプのように抱かれた

 

 

学校でも噂になりだした、連れ込み宿で中国人と寝るドブネズミだと、彼は父親から中国人との結婚を決められる、父の言葉は絶対だ、私もフランスに帰国の話が出た、残された時間を過ごす2人

 

 

彼は「お金をくれるからここに来た」と言ってくれ、私は「お金をくれるからここに来たのよ」、その言葉を繰り返させる彼

 

 

そして彼は結婚、遠くから見た、盛大な結婚式だった、彼は母の借金を払って、フランスへの渡航費も出してくれた

 

 

結婚式の後、会おうと約束した日に彼は現れなかった、フランスに帰る日、船から黒塗りのリムジンが見えた、彼女は泣いた、彼を愛していたのだ‥

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

主人公がフランスに帰ってからの後日談もラストに少し‥、金持ち中国人青年と小間使いのフランス人少女との間に芽生えた、世間に許されない愛情を静かに、熱く描いています

 

 

当時、かなり話題になったのを覚えています、ちょうど「ヘア論争」の真っ只中で芸術か猥褻かでもめてました、今ではアンダーヘアなんて当たり前ですよね、さすがにモロはまだまだ先でしょうね(笑)

 

主役のジェーン・マーチは本作でデビュー、もうデビュー前からプロ意識を持ってる女性なんですね、10代で愛人の役でしかも全裸セックスシーンまでこなすなんてさすがプロですね

 

 

公開当時18歳のジェーン・マーチが、痩せて未成熟な肉体とベビーフェイスで刹那の15歳の少女をみごとに演じ切って堂々たるデビューです、一番多感な時期だと思います

 

 

肉体的にも微妙な変化をする時期ですから心の中も繊細で傷つきやすい年頃だったと思います、実はそんなに難しくなく淡々としてたりして(爆)、レオン・カーフェイもいい味出してます、アジア人は表情があまりないけど、ないですね(笑)

 

 

しかしセックスシーンでは苦悶の表情、かなりアップで撮ってるシーンがあって、毛穴までしっかりと見えるくらいのアップなんですけどすごく官能的で2人の熱なんかも伝わってきました

 

 

当時のインドシナってあんなんなんですね、と言っても今もわかりませんけど、しかし画面からその空気や匂いがすごく伝わってきます

 

 

主人公が通う学校にはフランス領だけどフランス人は2人だけ、そりゃ目立ちますよね、しかもフランス人は優遇されてるんですね、フランス人がいる方が学校側も安泰、う~ん政治的背景が見え隠れするシーンでした

 

 

主人公の母親も兄達も中国人の彼に食事に招待されてもメシだけ食って無視、それは自分がフランス人だからプライドがあるんですね、いくら貧乏でもね、長男なんてアヘン中毒なのに中国人を挑発するんです

 

特に昔は白人が自分たちこそ優位だと信じているんですね、アジア人がいくら金を持とうともその変なプライドは白人からは消えないのでしょうね

 

 

だからかアジア人はお金を積んで金髪の白人女性を抱くのでしょうね、それはやはり白人に少なからず憧れがあるからなのでしょうかね?

 

 

そんな人種差別も盛り込んだこの作品以降、類似品や似たようなタイトルをごまんと出ましたね、2番煎じって‥

 

 

 

 

 

 

マルグリット・デュラスのベストセラーとなった自伝的小説を映画化したラブ・ロマンス それが『愛人 / ラマン』です。

 

 

 

 

 

「エマニエル夫人」をレビューした時に、これもしなきゃ、とふと思いました(笑)なぜ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に過激な続・裏237号室の『愛人/ラマン』のレビューはこちらです。