『共喰い』
2013年 日本
《スタッフ&キャスト》
監督 青山真治
原作 田中慎弥
脚本 荒井晴彦
撮影 今井孝博
音楽 菊池信之
出演 菅田将暉/木下美咲/篠原友希子/光石研/田中裕子/宍倉暁子/岸部一徳
《解説》
母さん、なんで僕を生んだんですか?あの男の血をひく僕を
第146回芥川賞受賞した田中慎弥の小説を、「EUREKA」「東京公園」の世界的映画監督の青山真治監督が映画化、奇跡&衝撃のコラボレーション
山口県下関市を舞台に、高校生の遠馬、暴力的な性癖を持つ父、その愛人らが繰り広げるひと夏の出来事を、原作とは異なる映画オリジナルのエンディングとともに描き出す
《物語》
昭和63年の夏、17歳の高校生の遠馬、母の仁子は戦後の空襲によって左手首から先を失った、戦後の開発から取り残された川辺の魚屋に住み込みそこに居着いてしまった
同じくそこに居着いた10歳年下の円という男と結婚、しかし結婚後に円は女にだらしなく、セックスの時に仁子を殴った、遠馬を妊娠している間は暴力はなかったが生まれて1年ほどしてまた暴力を振るったために出て行き、今は魚屋を経営している
遠馬は父の円と父の愛人の琴子と3人で川辺の一軒家で暮らしている、円はセックスの度に琴子を殴り、遠馬は自分も恋人の千種にいつか同じように暴力を振るうのではと恐れている
琴子は海に近い飲み屋街で働いている、17歳の遠馬の誕生日を祝ってくれた、そんなある日に円が夏祭りの準備でいない朝に琴子は赤ちゃんが出来たことを遠馬に告げた
その事で機嫌が悪くなった遠馬は千種を呼び出し神社で押し倒した、嫌がる千種の首を絞めた遠馬は我に返るが千種は逃げるように去り、それ以来遠馬を避けるようになった
琴子は近いうちに家を出て行くつもりだと遠馬に伝える、完全にいなくなるまで円には黙っていてほしいと、それを聞いて遠馬は円が通うアパートの女に会いセックスをする
夏祭りの前々日に近所の子供たちに連れられて千種が家にやってきた、首を絞めたことを後悔しつつも、あの男の子供なのでまたやるという遠馬に明後日に神社で待っていると
夏祭り当日、円は遠馬がアパートの女とのセックスの時に暴力を振るったことを喜んでいるが、遠馬は琴子が出て行ったことを告げると雨の中を捜しに行った
近所の子供たちが泣きながら遠馬を訪ね、異変を感じた遠馬が神社に行くと円に乱暴された千種が横たわっていた
仁子の魚屋にやってきた2人は仁子に話し、それを聞いた仁子は包丁を持って円を捜しに出て行った、追おうとした遠馬を千種が止めるが、遠馬は仁子を捜しまわり駆け付けた時に、遠馬の目の前で仁子は義手で円の腹を刺し、円は川を流れていく
《感想》
「東京公園」の青山真治監督が食道がんのために死去しました、57歳でした、葬儀は近親者で行われ、喪主は女優で妻のとよた真帆さん、本作はロカルノ国際映画祭最優秀作品賞と最優秀監督賞受賞し、世界で評価の高い監督でした
菅田将暉が自分でオーディションを受けてどうしてもやりたかった役だったそうです、「仮面ライダーW」などで注目を集めていましたがこの作品で役者・菅田将暉の誕生でした
仮面ライダーにも最年少の16歳で抜擢されていて、そのオーディションでも独特のオーラを放っていて存在感があったそうです、今の活躍を考えれば当然ですね
監督は青山真治で殺伐とした取り残された土地の空気感がすごく表現されていました、よくこんな場所があったね、原作は芥川賞受賞会場で物議をかもした田中慎弥
ものすごくハードな内容ですよね、自分の父親がセックスの時に母親に暴力を振るい、その母親は子供を置いて家を出てしまう、その父親に育てられて自分はどうなるのか
母親には後に妊娠していたけどあの男の子供は1人だけで充分だと遠馬に言うんです、遠馬としては自分には悪魔の血が流れているような風な言い方
父親はセックスをするときには女を殴ったり首を絞めたりしないと興奮しないような特殊な性癖を持つちょっとおかしな変人なんです、聞いた話では首を絞めると女性のアソコが締まるそうです
なので自分にも女性に暴力を振るうのではないかと心配になってしまうんです、恋人の千種にセックスの時に暴力を振るうのではないかとね、まあ考えてしまうのかもね
実際にセックスの時に首を絞めてしまうんです、それでハッとして手をゆるめるのですが、その後に父親の愛人の琴子ともセックスをするのですが、そこでも首を絞めるんです、でも琴子は妊娠していてお腹の子が動いて遠馬は手を止めるんです
遠馬の恋人の千種を演じるのが木下美咲で本作で大胆なヌードを披露して、遠馬が暴力を振るわないように両手を縛って千種が上に乗って騎乗位をするんです
千種と遠馬の初めてのセックスの時はコンドームを着けようとした瞬間にイってしまったそうです、まあ初めての時は物凄く興奮をしてしまうので少しの刺激で暴発してしまうんです(笑)
円の愛人の琴子を演じるのが篠原友希子で彼女も肉感的なヌードを披露しています、それでいて殴られたりと乱暴で激しいセックスを演じています
そして遠馬の母親の仁子を演じるのが田中裕子ですごく味のある演技で左腕手首を無くしてもたくましく生きています、それに円を恨んでいるのか壮絶な展開となります
円を演じるのが光石研でそんな暴力を振るう風には見えないのですが、セックスの時には暴力を振るわないと快感を得られないようです、人それぞれの性癖なのですけどね
琴子とのセックスの時には首を絞めて絶頂を迎えるのですがその後もまだアソコはエレクトしたままなんです、こんなのがエスカレートすると性犯罪へと発展するのでしょうね
こんな父親の息子で同じ血が流れている事に嫌悪感と恐怖感を抱くのですが、同じように乱暴な事をしてしまうのです、これがもし自分だったらと思うとやはり怖いですね
性と暴力、人間の奥底に潜む深い深い闇があぶりだされてゆく それが『共喰い』です。
暴力的な性癖をテーマにしている作品ですが、奥の深い作品ですね、閉塞感が漂い、青山真治監督の手腕が発揮されています。