美しき諍い女 | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

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『美しき諍い女』

 

 

 

 

 

1991年 フランス

 

 

 

 

 

監督・脚本 ジャック・リヴェット

 

原作 オレノ・ド・バルザック

 

脚本 パスカル・ポニツェール/クリスティーヌ・ロラン

 

撮影 ウィリアム・リュプチャンスキー

 

音楽 イゴール・ストラヴィンスキー

 

 

 

出演 ミシェル・ピコリ/ジェーン・バーキン/エマニュエル・ベアール/マリアンヌ・ドニクール/ダヴィッド・バースタイン/ジル・アルボナ/マリー・ベリュック/マリー・クロード・ロジェ

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

芸術に心奪われ、女と男、純な愛を知る…

 

日本公開にあたり、モデルを演じるエマニュエル・ベアールのヘア論争が巻き起こった、バルザックの「知られざる傑作」を原作に録ったジャック・リヴェットの問題作

 

絵画“美しき諍い女”の制作をめぐる、老画家と若く美しいモデルの官能的で緊張感溢れるドラマ、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたジャック・リヴェットの最高傑作

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

プロヴァンスの片田舎にある古城、そこに若い画家ニコラが恋人マリアンヌを連れて訪れた、そこに住むのは高名な画家フレンホーフェルと元はモデルだった妻リズと静かに暮らしている

 

 

画集は74年に1度出版したきり絶版、最後の個展もマリアンヌが生まれる前、高名ではあるが世捨て人同然のフレンホーフェル、中に入るとリズが出迎えてくれたがフレンホーフェルの姿が見えない

 

 

リズは庭で飲み物を用意して待っているとフレンホーフェルが現れた、今日の約束をすっかり忘れていたようだ、そしてニコラとスポンサーのポルビュスをアトリエへと案内した

 

 

フレンホーフェル自体アトリエへはずっと来ていない、今日の約束を忘れたのは恐れていたから、リズと2人安定した生活をしていたがこの客のおかげで混乱を招きそうだ

 

 

ニコラはフレンホーフェルの絵に興味があり勉強のつもりだ、そこで見付けた“美しき諍い女”の未完成作品、ニコラは素晴らしいと絶賛するがフレンホーフェルは血の気がないと

 

 

ニコラは美しき諍い女を見たいと言うがフレンホーフェルはそれは存在しない、構想半ばで断念したのだ、美しき諍い女とは17世紀に存在した娼婦の商売名、カトリーヌ・レスコー、その本を読んで描きたくなったのだ

 

マリアンヌはニコラが個展を開いてから2人の関係が変わった、自分は作家になりたいが子供向けの本1冊出しただけ、彼に頼りたくなくマリアンヌは闘っている、フレンホーフェルとリズの関係に似ていた

 

 

現在、描く事に興味が持てないフレンホーフェル、美しき諍い女の再開を薦められるがモデルはリズだ、もう遅すぎるし破局寸前まで行ったのだ

 

 

そこでポルビュスはマリアンヌではどうだろうと打診、フレンホーフェルはマリアンヌを見て、美しき諍い女を再開する事を決断、ニコラもマリアンヌをモデルにする事を了承

 

 

自分の知らない所で話しが進んでいる事に激怒するが、しかし翌日にマリアンヌはフレンホーフェルの古城へと赴き、そして美しき諍い女を描き、次第に積極的にフレンホーフェルに挑み始めるマリアンヌ

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

若くて美しい女性と出会って創作意欲をかき立てられた老画家が、かつて断念した未完の作品に再び挑戦する話しを238分に渡って描いています

 

老画家と若いモデルがアトリエという密室で精神的な葛藤を軸にして、周りの人たちをも巻き込んで関係性が変わっていくのです、素人モデルが徐々に画家と対峙していく様も見どころ

 

 

何と言ってもモデルのマリアンヌを演じたエマニュエル・ベアールが全編でほぼ全裸で演じているのが官能的で良かったです、緊張感があってカンヌ国際映画祭グランプリに輝きました

 

 

老画家フレンホーフェルを演じるミシェル・ピコリはマリアンヌにポーズを取らせるのですが、最初は背筋を伸ばして吊られているようにとの指示なのです

 

 

それが次第に腕も脚もつりそうになるポーズで、それは徐々に脱臼しそうなポーズを取らせます、服を脱がせるだけではなく肉体を脱がせるとまで言います

 

 

マリアンヌは初日を終えてそれで終了かと思ったら明日も朝から来てくれとね、実際に画家とモデルってこんなに壮絶なのかと思ってしまいます

 

 

フレンホーフェルは自分の過去のモデルたちの話しや画家としての姿勢などを熱弁しながら描きます、最初はノートにデッサンしていたのですが、いよいよキャンバスに木炭で描くのは痺れますね

 

 

フレンホーフェルの手の役を務めたのは画家のベルナール・デュフールでその優雅な筆さばきをジャック・リヴェット監督がじっくりと撮って見る者を圧倒します

 

 

以前に妻のリズをモデルに描いたのですが断念、このリズを演じるのはジェーン・バーキンでかつて自分をモデルにして断念した作品を他のモデルが務めるのはどんな心境なのでしょうね

 

 

それでも世捨て人のようなフレンホーフェルを復活させるためにマリアンヌのモデルを了承して応援するのですが、製作途中でアトリエに入った時には複雑な表情なのです、過去に描かれた自分の顔が塗りつぶされているのです

 

 

日本での公開当時は「ヘア論争」なるものが起こり、女性のヌードは芸術か猥褻かで議論を呼びました、結局公開は修正版となりましたが現在は無修正版で観られます

 

カンヌで賞を獲った作品が猥褻扱いは先進国としてはナンセンスですよね、フランスでは映画は芸術なので女優も脱ぐ事に抵抗は少ないようなイメージがありますね

 

 

ちなみに本作がソフト化される時に、4時間版と2時間の短縮版の「美しき諍い女/ディヴェルティメント」の2種類が発売となりました、この2時間版は発売当初に観たきりで久しぶりに観たいです

 

 

ラストに美しき諍い女は完成するのですがそれはフレンホーフェルはある秘密を作るのです、その美しき諍い女を見たのはマリアンヌとこっそりとアトリエに入ったリズ、ここが何だかニヤリとさせられますね

 

 

 

 

 

 

かぐわしき愛と芸術の予感 それが『美しき諍い女』です。

 

 

 

 

 

淡々と、黙々と描かれるアトリエのシーンは緊張感ありましたね、画家とはこういう者なのかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に過激な続・裏237号室の『美しき諍い女』のレビューはこちらです。