『HERO』
2002年 中国
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 チャン・イーモウ
脚本 リー・フェン
撮影 クリストファー・ドイル
音楽 タン・ドゥン
出演 ジェット・リー/トニー・レオン/マギー・チャン/チャン・ツィイー/ドニー・イェン/チェン・ダオミン
《解説》
人はヒーローになるために生まれてきた
監督デビュー作「紅いコーリャン」でベルリン映画祭金熊賞、「紅夢」でベネチア映画祭銀獅子賞、「活きる」でカンヌ映画祭審査員賞の名匠チャン・イーモウが、唐代の詩仙、李白の詩に発想を得て、武侠映画に初挑戦
チャン・イーモウ監督が中国の大スター、ジェット・リー、マギー・チャン、トニー・レオン、チャン・ツィイー、ドニー・イェンを起用して作り上げた歴史ロマン、撮影は「ブエノスアイレス」などのクリストファー・ドイル、衣装は「乱」のワダエミが担当、色調を変えたヴィジュアルも一見の価値あり
《物語》
2000年以上も昔の中国は7つの国に分かれて人々は戦乱に苦しんでいた、天下統一を目指す最強国・秦の国王は他国が放つ刺客に命を狙われていた、秦王暗殺には数々の伝説が残されている
ある日、護衛部隊に守られて一つの馬車が秦王の宮殿へと招かれた、馬車の中には無名と呼ばれる武術の達人が座っていた、彼は偉業を成し遂げた事でやって来たのだ
秦王は長空、飛雪、残剣と呼ばれる3人の最強の刺客に命を狙われ続け、気の休まる日もなかった、だが無名の手で遂に3人は倒されたのだ、秦王は恐れるあまり100歩の距離に近付く事を許さず、今回は無名が刺客3人を討ち取った事で特別に謁見が許されたのだ
長空を成敗した者には賞金の他に秦王に20歩まで近付く事を許す、無名は秦王に最初に長空との戦いを話した、残剣と飛雪は恋人同士だが3年も仲違いしている
飛雪が長空と一夜の過ちを犯し、残剣が恨み、無名は2人を討つにはまず長空をと考えた、役人の無名は雨の降りしきる中、槍の達人の長空に剣で壮絶な戦いの末に長空を倒した
2人組の刺客の残剣と飛雪のいずれかを成敗した者には領地賞金の他、秦王に10歩まで近付く事を許す、残剣と飛雪は恋人関係にあり、残剣には侍女である如月が世話をしている
彼らは趙の国の人間で残剣は書道の達人であり、無名は書を依頼、そこに秦軍の矢が降り注ぎ、飛雪と無名が矢を振り払う、無名は残剣の書を見て剣の極意を見抜き正体を明かした
そこで飛雪と長空の関係を知った残剣が如月と関係を持ち、嫉妬した飛雪は残剣を刺す、残剣はお互い愚かだと言って死んだ、如月は仇とばかりに飛雪と戦うが紅葉の中で如月を刺した
無名の計略が効いて飛雪の心は乱れて無名は難なく倒す事が出来た、秦王は残剣と飛雪が痴情ゆえに敗れるとは驚き、不和を利用して無名は勝利した、しかし秦王は無名の嘘を見破り、それに無名にはある決心があった
《感想》
本作で衣装を担当したワダエミさんが亡くなりました、84歳でした、いろんな作品で衣装を担当しているのですが本作を思い出したので追悼レビューとなりました
役者たちの衣装が印象的で色んなパートで色が違ってそれで話の展開が違ってくるんです、赤の時は何だか痴情のもつれががあったりして、白は真実だったりとね
主人公の無名を演じるのはジェット・リーで、10年の修業で10歩の距離なら確実に相手を仕留める十歩必殺という技を編み出した剣士なんです、その無名が刺客3人を倒して秦王の前に現れるんです
無名が最初に倒した長空を演じるのはドニー・イェンで、槍の使い手なんです、長空を捕らえに来た役人を子供扱いして槍の先端の鞘を外す事無く倒すのですが、無名と最初の一撃で鞘を外して戦うんです
次に狙う残剣を演じるのはトニー・レオンで、書を通じて剣も極めた達人で秦王に無名より強いと言わせる男です、3年前に飛雪と共に3000人の秦軍を倒してあと一歩まで秦王に迫ったのです
飛雪を演じるのはマギー・チャンで趙国の王の娘で秦王は父親の仇なんです、その後に残剣と出会って恋人となるんです、無名の話しでは飛雪が長空と過ちを犯したから残剣と仲違いしたと、残剣は秦王を殺さなかった事で飛雪と不仲になったと
そして残剣の侍女をする如月を演じるのはチャン・ツィイー、飛雪と長空の関係を知った残剣に当て付けで関係を持った事で飛雪は残剣を殺し、如月は飛雪に仇として挑むも倒されます
ここまでの話しは無名によって語られた事で秦王は違和感を覚えるんです、100歩までは誰も近付かせない秦王なのですが暗殺者を討ち取った事で10歩の位置まで近づいた無名に何かを感じるんです
秦王は7つに分かれている国を統一する野望に燃えていて、側近からも暴君だと言われて理解者がいない事に嘆くのですが、秦王の理解者は敵にいたという事なんです
この秦王と秦軍の衣装は黒でまさに敵としての印象が強いのですが、秦王は暴君ではなくて天下統一が悲願なんです、そうしないと無益な争いと死者が増えるだけなのでね、仇だけで考えずに未来を見据える事が大切なのです
とにかくこのオープンセットが素晴らしかったです、これだけの巨大なオープンセットはなかなか見れません、いろんな作品がこのオープンセットで撮られてますがやっぱ凄いです
秦王を演じるのはチェン・ダオミンなのですが、監督のチャン・イーモウは当初はジャッキー・チェンにオファーしたそうです、でもジャッキー・チェンは脇役は嫌だったそうです、ジャッキー・チェンの秦王も見たかったな
アジア映画の新たなステージ、世界を制した超絶アクション大作! それが『HERO』です。
この作品くらいから中国映画のエンターテインメントさが前面に出て来たような気がしますね。