『時計じかけのオレンジ』
1971年 イギリス・アメリカ
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 スタンリー・キューブリック
原作 アンソニー・バージェス
撮影 ジョン・オルコット
音楽 ウォルター・カーロス
出演 マルコム・マクダウェル/ウォーレン・クラーク/ジェームズ・マーカス/ポール・ファレル/リチャード・コンノート/パトリック・マギー/エイドリアン・コリ/ミリアム・カーリン/オーブリー・モリス/スティーブン・バーコフ/マイケル・ベイツ/ゴッドフリー・クイグリー/マッジ・ライアン/フィリップ・ストーン/アンソニー・シャープ/ポーリーン・テイラー
《解説》
「2001年宇宙の旅」の巨匠スタンリー・キューブリック監督が鋭くえぐった、もう一つの未来
毎日のように暴力やセックスに明け暮れていた不良グループのリーダーのアレックスは、ある殺人事件で仲間に裏切られ、ついに投獄させられてしまう、そこで彼は、攻撃性を絶つ洗脳の実験台に立たされるが…
原作者のアンソニー・バージェス自身が危険な本と語った同名の小説を映像化、主人公アレックスが心酔するベートーヴェンの第九交響曲や、レイプシーンに流れる「雨に唄えば」など、音楽による効果的な演出が随所に見られる
《物語》
近未来のロンドン、クラシック音楽の中でもベートーヴェンをこよなく愛する15歳のアレックス・デラージをリーダーとする少年4人組はピート、ジョージ、ディム
今夜もコロバ・ミルク・バーでドラッグ入りのミルクプラスをやりながら精神が刺激され、いつものように無軌道なウルトラヴァイオレンスへ盛り上がる
夜の世界に繰り出してはホームレス狩りに興じていた、老人は街中にゴミのように捨てられ快楽的に袋叩きに遭う、廃墟のカジノでビリー・ボーイ派が少女を乱暴すべく連れ込んで集団で衣服を剝ぎ取りベッドに押し倒した
しかしそれを見計らったようにアレックスたちが現れて大乱闘となってビリー・ボーイたちを叩きのめす、そこにサイレンの音が近付きアレックスたちは逃走
興奮冷めやらぬ4人は次のゲームはサプライズ訪問、困ったふりをして助けを求め、親切心から開いた作家宅の扉にマスクを被って押し入り、「雨に唄えば」を歌いながら暴れ、作家の若い妻を集団で暴行、その夜はそれでエネルギーが消費出来た
翌日、いつものように学校をサボったアレックスはレコード店で男性器を模ったキャンディを舐めていた女の子2人をナンパして自宅でセックス、その後にリーダーを巡って仲間と乱闘となる
その夜に一軒家にサプライズ訪問侵入した時に老夫婦を撲殺、しかしアレックスを良く思っていないジョージとディムが裏切り、アレックスは警察に逮捕され、懲役14年の実刑判決が下った
収監されて2年、牧師の手伝いをし、模範囚を装っていたアレックスはみんなが噂している新趣向を耳にする、それを受ければすぐに出所出来るという新治療「ルドビコ式心理療法」に志願
内務大臣にキリスト教への信仰心とクラシック音楽の趣向、犯罪歴からの野心を気に入られて被験者となる、12年の獄中生活から逃れる為に志願したのだ
施設に移送されたアレックスは拘束服で椅子に縛り付け目をクリップで見開かれた状態に瞼を固定し、残虐描写映像を鑑賞し続けるもの、そして投薬によって引き起こされる吐き気や嫌悪感で暴力映像を生理的に拒絶反応を起こすように暗示するのである
偶然にもBGMは彼が好んで聴いていたベートーヴェンの第九交響曲、これによってアレックスは第九交響曲を聴くと吐き気に襲われる体になってしまった
治療は成功し、以後アレックスは性行為や暴力行為に及ぼうとすると吐き気を覚え、何も出来なくなってしまう、医師たちの立ち合いのもと、政府高官や関係者の前で治療の効果が証明され、暴力に対して無防備な人間となって出所となった
しかし、外の世界はアレックスの過去の行いを許してはなかった、ホームレスに襲われてそこに警官がやってきたがそれはジョージとディムでアレックスを見た瞬間、過去の恨みとばかりに暴力を振るった
大ケガをしたアレックスが辿り着いたのはアレクサンダー家、暴行の後に妻が自殺、自身は半身不随、アレクサンダーはアレックスの話しを聞いて非人道的な治療を反政府運動の道具に彼を使おうと考える
アレックスが風呂場で雨に唄えばを口ずさんでアレクサンダーは妻を自殺に追いやり、自身をこんな体にした男だと気付いた、アレクサンダーはベートーヴェンを流して彼を自殺に追い込んだ、しかしアレックスは死ななかった
《感想》
最初に観た時は子供でしたが、再び観た時の方が衝撃的でしたね、スタンリー・キューブリック監督作品は「シャイニング」を先に観ているんです、そのイメージで観たのでまた強烈でした
近未来のロンドンの不良少年はここまで酷いのかと、とにかく有り余る自身のエネルギーを発散する為に暴力を振るうんです、それが悪い事だとは考えずに自分の欲望のままにです
最初に行くミルク・バーでドラッグ入りのミルクを飲むシーンがあるのですが、この店のオブジェがまた強烈でヌードの女性が模られたテーブルだったり椅子だったり像だったり
少年グループ同士の抗争なんかもありますが、少女を乱暴しようとする不良グループのビリー・ボーイを襲撃するんです、相手は敵なので半殺しまでしてサイレンの音を聞いて逃げるんです
この時に逃げる車が1969年式の「M-505アダムスブラザーズ・プローブ16」なんです、生産されたのは僅か3台、劇中名はデュランゴ95で凄まじい形状です
原作を書いたのはイギリス人作家のアンソニー・バージェス、元々陸軍に従事していた軍人だったのですが、妻が脱走アメリカ兵4人によってレイプされた上に、自身も脳腫瘍で余命僅かと診断されて、残る家族への遺産代わりに書いたのが本作なんです
全20章からなるこの小説は映画と同じでアレックスが暴力性を取り戻すというエンディングだったんです、しかしこの救いのないラストに出版社が難色を示して、ハッピーエンドの21章を付け加える事を命じたんです
しかしアメリカで出版されたのは出版ミスでこの21章が抜け落ちたものだったんです、このアメリカ版を読んでスタンリー・キューブリックは映画化を決めたそうです
その映画を非難したのはなんとアンソニー・バージェス本人で、何と脳腫瘍は誤診で76歳まで人生を全う、更生する話しで終わらせたのに何でバッドエンドにしたんだと怒ったんです
それにスタンリー・キューブリックは脚本段階では21章は読んでいない、その後に読んだ21章は矛盾していると真剣に考えることすらなかったとコキ下ろしてます
ちなみに「シャイニング」でも原作者のスティーブン・キングに腹立たしいと酷評されています、原作者を怒らせてしまうスタンリー・キューブリックなんですが作品は傑作と評される監督ですよね
最初に映画化権を持っていたのはローリングストーンズのミック・ジャガーでローリングストーンズのメンバーと共に主演すると希望するもスタンリー・キューブリックは却下して、新鋭マルコム・マクダウェルを起用しました
マルコム・マクダウェルの起用は最高でしたね、最初にアレクサンダー家に入り込んで年老いた作家の目の前で若い妻を乱暴するのですが、それが歌いながらで強烈です
自分の目の前で妻が乱暴される現実なんて死にたくなるほどのショッキングな出来事です、そんな残酷な事が出来るのがアレックスなんです、まさに悪魔の申し子ですね
学校をサボって面白いキャンディを舐めてる少女をナンパしてセックス、その後に仲間とリーダーを巡ってジョージとディムをボコボコにしたりと仲間でも容赦しません、そんな仲間に裏切られて逮捕されるんです
ここからが第二章的な感じで暴力的な性格を強制する為に実験的な治療をされるんです、これもまた強烈で目を閉じれないようにしてずっと残酷な暴力映像を強制的に見さされるのです
この目への道具でマルコム・マクダウェルは眼球に傷を負ったとか、この治療は成功して暴力行為や性行為には吐き気を催すくらい嫌悪感を感じるようになって釈放されるのですが、外の世界はアレックスにとって天国ではなくて地獄だったんです
巨匠のレンズを覗くと見えてくるもの、それは素晴らしく貴重で、感動に満ちた素晴らしい世界 それが『時計じかけのオレンジ』です。
タイトルの時計じかけのオレンジの意味は、表面上はまともに見えるが、その中身はかなり変、という意味らしいです、それとアンソニー・バージェスの一時期暮らしていたマレーシアでは人間の事をオランと言うそうです、時計じかけの人間とも解釈できます
更に過激な裏:続237号室の『時計じかけのオレンジ』のレビューはこちらです。


























