『エクソシスト』
1973年 アメリカ
《スタッフ&キャスト》
製作・原作・脚本 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
監督 ウィリアム・フリードキン
撮影 オーウェン・ロイズマン
音楽 マイク・オールドフィールド/ジャック・ニッチェ
出演 リンダ・ブレア/エレン・バースティン/ジェーソン・ミラー/マックス・フォン・シドー/リー・J・コップ/ウィリアム・オマリー/キティ・ウィン/ジャック・マッゴーラン/バートン・ヘイマン
《解説》
全世界にオカルト映画ブームをもたらした傑作、12歳の少女リーガンに悪魔が取り憑き、エクソシスト(悪魔祓い師)と悪魔との死闘が始まる
封切られるや大反響を呼び、絶大な支持を得た本作、後の映画に多大な影響を及ぼしたオカルト映画の最高峰は、今観ても独特の禍々しさを持っている
悪魔に憑りつかれたあどけない少女、少女を必死に救おうとする母親、そして究極の悪と闘いながらも、かたや半信半疑、かたや不動の信念を持つ2人の神父を描いた、恐ろしくもリアリティー溢れる物語は観る者の度胆を抜く
《物語》
イラク北部、老齢のメリン神父は独自の調査と研究を続けていたが、悪魔パズズの像を発掘する、かつてアフリカで彼と死闘した悪魔でメリン神父は再び宿敵と闘う日が近いと予感していた
遠く離れたアメリカ・ワシントンのジョージタウン、人気女優のクリス・マクニールには12歳になる娘リーガンがいた、仕事で外出しがちで、リーガンの世話は子守とメイドに任せているが、母子の仲も良くリーガンの誕生日を迎えて楽しい日々を過ごしていた
ところがある日突然それまでの生活を一変させる出来事が起きた、リーガンはベッドが揺れて眠れないと言う
リーガンは誕生パーティで来客の前で放尿、その夜はリーガンのベッドが激しく揺れた、眠れないと言うリーガンを病院に連れていくが、あらゆる検査結果は異常なし
そんな中、リーガンの症状は悪化、汚い言葉で母親を罵り、自らの体を傷つける、精神科の医師も催眠術医もお手上げ
そんな矢先、クリスの映画を監督した友人のバークが石段から転落して死亡する事故が起きた、ただの事故とは思えないキンダーマン警部補が捜査に乗り出した
そこである医師がショック療法でクリスに“悪魔祓い”を勧めた、パーティで話を聞いたカラス神父に依頼するが精神科医でもあるカラス神父は悪魔憑きに否定的であった
リーガンに接見したカラス神父は吐瀉物を吐きかけられ嘲笑われる、しかしリーガンに何回か会ううちに、リーガンの体にヘルプ・ミーの文字を発見、カラス神父は悪魔祓いの儀式を決意する
大司教に許可を求め、主任には数少ない経験者のメリン神父が選ばれカラス神父は助手として悪魔祓いに挑む、そして2人の神父は少女リーガンから悪魔を退散させる為に壮絶な闘いに挑むことになる
メリンは神の言葉を悪魔にぶつけ、神の力を見せ付ける、カラスは悪魔の嘘に翻弄され感情的になる、こうして壮絶な闘いが始まったのだ
しかし、闘い半ばにしてメリンは持病の心臓発作で倒れ死んでしまった、怒りと共にカラスはリーガンの身体を掴み殴りつけた、そして「自分の中に入ってこい」と悪魔を挑発、するとカラスの顔が悪魔の形相となり、リーガンを襲おうとする
しかしカラスは最後の力を振り絞り、そのまま窓から身を投じて石段を転落して死んでしまった、2人の神父の死によって悪魔はリーガンの肉体を離れ滅び去った
クリスは家を引き払い引っ越し、ダイアー神父に礼を言う、リーガンは何も覚えていなかった
《感想》
1973年公開時に世界中にオカルトブームを生んだ超ヒット作、悪魔祓いを世界中に知らしめた作品です、どれだけ亜流作品が生まれたことか
原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティは、実際に起きた悪魔憑きをもとに小説を書き上げ、映画もコケおどしのホラー色を出さずに宗教観をにじませた、ある種の人間ドラマにしています
しかし公開当時は、リーガンの空中浮遊シーンや首が180度回るシーンが話題を呼びました、首が回る前には十字架で自慰をするという強烈な神への冒涜を見せます
吐瀉物をカラスに吐きかけるシーンは汚くてビックリでした、グリーンピースを潰したものを吐いたそうです、これがまた背筋が寒かったですもん
リーガン役のリンダ・ブレアが凄まじい演技です、まるで狂ったかのような表情、これぐらいの年頃には恥ずかしさがあると思いますが微塵も感じさせません、たしかアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるほど
カラス神父は精神科医でもあるので悪魔憑きには否定的なのですがさすがにこのリーガンを見ると信じざるを得ないですね、そこでメリン神父が登場するのですが年齢と持病には勝てなかったようです
監督のウィリアム・フリードキンはサブリミナルを使ったり、撮影中に銃を発射したり、かなり役者達を追い込んだらしいです、その結果、語り継がれる大傑作となったのです、出演者たちの鬼気迫る演技が更にインパクトが増します
それにこの映画には痛いシーンがあるんです、リーガンを検査するシーンでリーガンの首から血を抜くシーンがあるんですけどこれが強烈に痛そうなんです
やっぱリンダ・ブレアが本当に可愛くてこんな可愛い女の子があんなに恐ろしい姿になるのは驚愕でしたね、あんな物を口から吐き出したり、空中に浮かんだり、人を殺したりと凄まじいです
公開当時には来日もしていたようですね、なんだかすごくご機嫌そうで良かったです(笑)
4年後に作られた第2作「エクソシスト2 」は、リーガンの中にまだ悪魔が残っていて、再び異変が始まるというものですがヒットしたので作られた感があります
13年後に製作した第3作「エクソシスト3」では第1作の原作者が監督として登板、1作目に登場したキャラクターのキンダーマン刑事を主人公にして、悪魔憑きに絡んだ猟奇事件が描かれる、シリーズ全体としては第1作目の枝葉を伸ばして作られた感が強くて統一感に欠ける印象です
第1作の前日談にあたるシリーズ第4作「エクソシスト ビギニング」が2005年には公開されました、こちらは監督と会社がイザコザが起こって監督が変わったりと大変だったようです
2000年には、リーガンのスパイダー・ウォークや悪霊の顔が闇に浮かぶ映像、さらにプロデューサーで原作者のブラッティが熱望しながらも初公開時にカットされたラストシーンなど、およそ15分に及ぶ未発表シーンを加え、デジタル修復を施した「エクソシスト ディレクターズ・カット版 」が日米で公開され、話題を呼びました
また久しぶりに観たくなってきましたよ、何回も観てますが色褪せない作品ですね、最近に一緒に若い人と観たのですがやっぱ怖がってくれました
リーガンに憑りついた悪魔の名はパズズで、メリン神父とは因縁があるんです、それがオープニングで中盤でメリン神父が出てくるまでリーガンが凄すぎて忘れてしまいそうです
この映画が世に出て似ても似つかない亜流作品は数えきれないほどありますが、単なる悪魔退治の映画とは完全に異なり、母親の死に罪の意識を感じるカラス神父の葛藤のドラマも重視し、ドキュメンタリー・タッチな演出が重厚さを与えています
12歳の少女リーガンに取り憑いた悪魔を抹殺すべく、エクソシスト(悪魔祓い師)の想像を絶する闘いが始まる、オカルト映画の最高峰 それが『エクソシスト』です
大傑作です!27年の眠りから目覚めたディレクターズ・カット版もお勧めです、どちらも甲乙つけがたい傑作、両作ともに味があります。