サスペリア | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『サスペリア』





1977年 イタリア





《スタッフ&キャスト》


製作 クラウディオ・アルジェント

監督・脚本 ダリオ・アルジェント

撮影 ルチアーノ・トボリ

音楽 ゴブリン



出演 ジェシカ・ハーパー/ジョーン・ベネット/アリダ・バッリ/ステファニア・カッシーニ/ウド・キアー/ミゲール・ボゼ/フラビオ・ブッチ/エヴァ・アクセン/ミゲル・ボセ/ルドルフ・シュンドラー





《解説》


想像を絶する恐怖とショックが、いま全世界に向って走りだした、このかつてない驚き、この名状しがたい恐ろしさに、あなたはただ声を呑みこんで立ち尽くすのみ‥

ダリオ・アルジェントの名を一躍高めた記念すべき一編、アルジェントはそれまで「歓びの毒牙」「私は目撃者」などを手掛けていたが、その存在はまだ無名に近く、この作品の興行的成功によって初めて名実ともにイタリア映画を代表する監督の1人となった

オープニングからアルジェント独特の恐怖の殺人劇の幕があく、原色を巧みに使った画面構成と意表をつく音楽、カメラ・ワークが早くも奏効して導入部から、きわめて快調なテンポ

不気味なカメラ・アングルとぞっとするサウンド、血なまぐさい殺人、アルジェントの手法が抜群にさえている、世界中で賞讃され、イタリアン・ホラー・ムービーの金字塔となった





《物語》


その夜は雷鳴を伴った凄まじい雨が、ドイツの街並みに降り注いでいた、バレリーナ志望の若く美しいスージーは、このヨーロッパにあるバレエの名門校に入学するためにニューヨークからやってきた、空港からタクシーに乗ってやがて到着したバレエ学院は、暗闇の中に悪趣味な赤い館




正面玄関では、生徒であるパットが、何者かに追われているように怯え、「アイリスが3つ、青いのを回す」と叫び、雷雨の中を自分のアパートに戻って行った

スージーは玄関に走り寄って、ドアを開けるように頼んだが、なぜか冷たく拒絶されてしまった、途方にくれたスージーはホテルを探し、最初の夜を迎えた




数時間後、アパートにたどり着いたパットは呻き声を聞いた直後、突然現れた巨大な腕に締め付けられ、胸や腹をナイフで突き刺され、体を縛られて突き落されて首を吊るような形で絶命




悲鳴を聞いて駆け付けた友人も割れて落ちてきたステンドグラスが顔や体を突き刺さり、血まみれで死んでしまい不運な道連れとなってしまった



翌日、バレエ学院の入学手続きをすませたスージーはさまざまな人々に次々と出会った



長旅の疲れと学院の不安と早速始まった厳しいレッスンでスージーは床に倒れてしまった、スージーは見舞いに来てくれたアメリカ人のサラと仲良くなり、慣れない学院の様子を教えてもらった、校医には食事にワインを加えられそれを飲むとすぐに眠くなる

その夜、寄宿舎の天井からウジ虫が大量に落ちてくる異常な事件が起こった、原因は屋根裏に保存してあったハムやソーセージに寄生したものとわかった、当分の間、生徒たちはバレエ練習用のホールにベッドを移して起居することになった



真夜中、ベッドに入っても眠れないスージーとサラは、仕切り用カーテンの向こうから洩れてくる不気味な呻き声に怯え、その呻き声から立ち去って行く靴音も聞いた、翌朝にタナー主任教師に尋ねると、怒りを含んだような冷たい拒否がハネ返ってきた



夜毎の靴音に恐怖と好奇心をかきたてられたスージーとサラ、なぜ教師たちの靴音が真夜中になると学院内に響き、ある一点に吸い込まれるように消えるのか、サラはその暗闇の中の靴音を追って廊下に出た、サラはまるで恐怖に魅入られたかのように

次の日、スージーの寝室にきたサラは、最初に変死したパットから、事件の直前に妙な話を聞かされた上、数字を書き込んだ謎めいたメモを預けられたことを告げた、パットも何かを探ろうとして、あの惨たらしい死を迎えたのか?



入学以来、病気がちなスージーは理事長代行の副理事のマダム・ブランクがくれる薬とワインのせいなのか、異様なめまいに悩まされていた

スージーの体調が悪く自室に戻ったサラは、そこで意外な物音を耳にして震え上がり廊下に逃げ出た、誰かが追ってくる気配を感じて追い詰められるサラ

逃げ場を失ったサラは屋根裏に駆け上がり、高窓から工具室に転倒、そこに放置してあった無数の針金線に絡まれて身動きを封じられた、蜘蛛の巣にかかった蝶のようなサラにナイフ腹部を数回突き、最後には喉を掻き切られ、鮮血を滴らせて死ぬサラ



翌朝、サラの姿が見えず不審に思ったスージーにタナー主任教師から昨夜にサラが荷物をまとめて退学したと告げられた

不安にかられスージーは、サラの友人である精神分析学者フランクを訪ね、学院に相次いで起こった奇怪な事件のすべてを話したところ、フランクは学院の歴史とその事件との関わり合いを指摘、この1895年に建てられたバレエ学院にある秘密をより詳しくミリウス教授にも聞く事ができた



その夜、スージーはワインを捨ててサラが探っていた秘密を暴こうとする、足音の数だけ歩くと校長室にたどり着き、壁にはアイリスの飾りがあった



スージーはパットの言葉、「アイリスが3つ、青いのを回す」の言葉を思い出した、アイリスを回すと秘密のドアが開いた、そこで戦慄の事実が判明する、このバレエ学院には恐るべき悪魔の集団が巣食っていたのだ、アイリスの花の壁紙にかこまれた部屋のベッドには醜怪な魔女のエレナ・マルコスがいた



エレナの嘲笑う声と共にサラの死体が動き出してスージーに襲いかかる、サラは姿の見えないエレナが雷の光によって姿を浮かび上がらせサラはそこを目掛けて突き刺した



それによって館が崩れはじめ、スージーはやっとの思いで外に逃げ出し激しい雨の中で笑みを浮かべる







《感想》


「エクソシスト」「オーメン」と共にオカルト・ブームを作った本作、その2作のアメリカ作品とは違いイタリア作品、やはりセンスが違います、イタリア人独特の色彩感覚、血の色を美しいとさえ思わせます



本当に色彩が凄くて特に赤が印象的です、バレエ学校の建物やその内部もそう、照明も赤ければワインの赤まで計算された仕組み、物凄く強烈な印象ですね



それにアルジェントの音に対するこだわりも半端ではありません、ゴブリンのロックなメロディーは特殊なサーカム・サウンドで立体音響装置で効果的です、この音楽は一生忘れないメロディーでずーと耳に残ってます、最高に怖いメロディーですよ



魔女というのもインパクトありますね、エレナ・マルコス(溜息の母)、バレエ学校は魔女たちの館でバレエはもともと魔女の儀式の踊りから派生したものという設定です



盲導犬が盲人を襲ったり、コウモリが突然襲ったり、大量の蛆虫が天井から降ってきたりと、ちょっとモラルから外れる展開も新鮮でした、これがイタリア流かと



主人公のスージーと友人のサラが探偵のように学校内部の秘密に迫ります、サラは針金の部屋で痛そうに殺されてしまいますが、スージーがその意思を継ぐ形で謎に挑みます



当時、製作費に20億リラ以上を投入、イタリア映画最高製作費で、巨大なオープンセットを組み、ヨーロッパ各国で長期ロケ、アルジェントの演出は2年以上の製作期間となりました、スージーを演じるのはジェシカ・ハーパー



これは3人の魔女を描く“三母神物語”のドイツ編です、アメリカ編が「インフェルノ」、そしてローマ編が「インフェルノ」の完成から27年を経てようやく「サスペリア・テルザ」が完成、アルジェントが物語を総括する重要な作品になると考えてなかなか着手できなかったとか

ここ最近のアルジェントは影が薄いので起死回生で復活して欲しいです(笑)、この圧倒的な極彩色の映像美はホラー映画史でも屈指の名作、アルジェントにはこれを超えるような挑戦をしてほしいです





ダリオ・アルジェントが創造したゴシック・ホラーの金字塔、決してひとりでは見ないで下さい… それが『サスペリア』です。





初めて観た時は鮮烈な血の色と色彩にビックリしたもんです、アルジェントをキング・オブ・ホラーと呼ぶ人もいます