『転校生』
1982年 日本
《スタッフ&キャスト》
監督 大林宣彦
原作 山中恒
脚本 剣持亘
撮影 阪本善尚
音楽 林昌平
出演 尾美としのり/小林聡美/佐藤允/樹木希林/宍戸錠/入江若葉/中川勝彦/井上浩一/岩本宗規/大山大介/斎藤孝弘/柿崎燈子/山中康仁/林優枝/志穂美悦子
《解説》
おれとおまえ、ある日突然入れ替わっちまった
山中恒のジュブナイル「おれがあいつであいつがおれで」の映像化作品、一字違いの幼なじみ・斉藤一夫と一美は、石段から転げ落ちたことで、人格が入れ替わってしまう、2人はそのことを秘密にしつつなんとか元に戻ろうと努力するが…
大林宣彦の故郷でもある尾道を舞台に、シチュエーション・コメディの要素を含みつつノスタルジックな青春ドラマに仕上げている、脚本は「ゴギブリ刑事」の剣持亘、監督は「ねらわれた学園」の大林宣彦、撮影は「霧のマンハッタン」の阪本善尚がそれぞれ担当
《物語》
8ミリ好きの中学三年生の斉藤一夫は悪友たちと女子更衣室に侵入する悪ガキでごく普通の男の子、そんな彼のクラスに斉藤一美という少女が神戸から転校してきた
以前にこの町に住んでいた一美は一夫を見て幼なじみの一夫だと大喜び、しかし一夫は子供の頃の自分の恥ずかしい部分を知っている一美に大迷惑
その日の帰り道で一夫に付きまとう一美は神社へ、一夫が一美に空き缶を蹴飛ばしたことに驚いた一美は石の階段から落ちそうになり、それを助けようとした一夫と一緒に転げ落ちてしまった
気を失った2人だったが意識を取り戻し、それぞれの家に帰った、一夫は家で着替えた時に胸があり、あるはずのモノがなくなっていることに気付いて一美の家に急いだ
そこには泣いている一美がいて、2人の体が入れ替わってしまっている、とりあえずお互いの生活をすることにした、急に男っぽくなった一美、女っぽくなった一夫に家族は戸惑ってしまうが、一夫の父親が転勤で横浜に引っ越すことを告げられる
学校でも一夫は突然勉強が出来るようになったり、急に女っぽくなった一夫に悪友たちがからかい、それを一美が怒って連中をやっつけてしまう
いつまで経っても元に戻らない2人、特に一美は自殺まで考えるようになり、お互いの体に嫌悪感を覚えながら異性として2人は意識をしてしまう
一夫の引っ越しが迫ったある日、2人はある神社へ行き階段から落ちようと考えた一夫を助けようと一美が飛びつき、再び一緒に転げ落ち気が付くと2人は元へと戻っており、愛を告白し合った
数日後、一夫の引っ越しの日、見送りに来ている一美、動き出したトラックの助手席から走って手を振る一美を8ミリで撮る一夫、「サヨナラオレ、サヨナラ私」
《感想》
大林宣彦監督が肺がんのため82歳で亡くなりました、故郷の尾道をテーマにした「尾道三部作」で全国に尾道の名を知らしめ、地元を観光地と飛躍させた功績は大きいです
「HOUSE ハウス」で監督デビューをして、故郷の尾道に何とか観光資源が欲しいと言われたことがきっかけとなって作ったといわれています、しかし地元には尾道の恥部まで映っているので公開中止にできないかと評判は悪かったそうですが、その後はどこに行っても称賛されるようになったとか
本作は本当に低予算で大変だったそうです、サンリオが出資を決めていたのですが破廉恥過ぎるとの理由で降りてしまい、ATG(アート・シアター・ギルド)が奔走したとか
エキストラも雇えないのでスタッフが演じたり、まさにプロが作った自主映画と述べられてます、大林宣彦監督の父親が尾道で医者をしていることで信用があったために地元の人の協力で撮影したそうです
原作の主人公2人は小学六年生という設定でしたが、大林監督は性を意識した年代の役者が演技しないと表現は難しいとの考えから設定を中学三年生となりました
オーディションにやってきて主役に抜擢されたのが小林聡美と尾美としのりで、特に小林聡美は裸にならなくてはならないシーンが4回あったので泣きそうだったとか、内に秘めた恥じらいこそ抜擢された理由だったそうです
尾美としのりも女の子の役は耐えがたいと嘆いていたそうです、当初は別の役でしたが大林監督が尾美としのりともう一度会って尾美としのりのこの映画に賭けると聞いて抜擢
それでも小林聡美は当時16歳でまだ膨らんでない胸を晒したり触られたりとかなり厳しい撮影だったでしょうね、中身が男なのだからパンツで足開いたままで寝転んだりとか、同年代の尾美としのりの前でパンツ1枚での演技は恥ずかしかったでしょうね、さすが女優です
この辺りが大林監督の言う性を意識したってところだと思います、中学三年生の設定で良かったと思いますね、青春時代の甘酸っぱい出来事にこんな不思議な出来事を入れるなんて小学六年生だったら子供映画になりそうですもん
こんな感じで男と女の中身が入れ替わったならやっぱ色々と体を調べるでしょうね、中学三年生なら尚更いろんな事をしてしまいそう、それは男も女もね
一夫と幼なじみの川原敬子は悲しい顔をしている一夫を気遣って一美に相談をしたり、一美の転校前の友人の吉野アケミは一美から一連の出来事の手紙をもらっていてSF好きもあって2人が入れ替わったことを唯一知る人物となるんです、でもその後は何も無くて残念
担任の教師を演じるのが志穂美悦子、一夫と一美が他の生徒と取っ組み合いのケンカをしているのは引き離したり、一美に顔面を殴られても怯みません
大林宣彦監督が残した作品の中でも特に印象に残っている作品です
あるべきモノがない、ないはずのモノがある、だれにも話せない二人のひみつ それが『転校生』です。
本当に偉大な監督を亡くしました、残念でなりません、新作は公開延期となっていますがまだ観れるので楽しみですね、合掌
更に過激な裏237号室の『転校生』のレビューはこちら。

















