ピエール・ルメートルの上記タイトルを読んだ。原題は「Cadres noires」。どう考えても「監禁面接」という意味にはならんですな。インパクトを出したいためか、こういうことは小説に限らず外国の翻訳ものにはよくある。
ピエール・ルメートルといえば「その女、アレックス」で名を轟かせた(この作品も原題は「Alex」のみである)フランスの作家。とはいってもわたくし、この作品はおろかルメートル氏の作品じたい未読であり、ただ単に本屋でよく見かけたから覚えていただけのはなしなのだ。
そんなわけで初ルメートルとなる「監禁面接」だが、面白かった。とにかく展開がガンガンと変わっていくのが特徴である。
話は57歳のリストラされたおじさん(デランブルさんというのだが)が、食いつなぐために続けているバイト先で屈辱的な目に遭い我慢しきれず爆発というところから始まり、なかなか悲哀を感じさせるものがある。このおじさんの心情を巧みに描写しつつ話は進むごとに大きくなっていく。
とにかく話が飛躍していくので、デランブルさんの考え、思い、怒りといったものが自然なものだ、もっともだと読者に受け入れさせることができるかが大きなポイントになると思うのだが、その点、ルメートル氏は完璧である。
外国の作品にありがちな、人名が頭に入ってきにくいという難点もある。そんな愚かな我々読者のために、3つの章に分かれるその冒頭には、登場人物のリストと短い解説が存在するのは助かる。
フランスのものに限らず外国作品の邦訳は、当然ながら商業的動機によりそれがなされている。つまりは各国内で厳選されたものであるから、自ずとクオリティが高くなるのがうれしいところ。デランブルさんはじめ登場人物がけっこうつらい目に遭うので多少読み疲れしたが、スムーズに読了できた。 †