駒澤大学が2年連続10回目の制覇
   ー本命校が満を持して最終区で逆転!



 学生駅伝は出雲、全日本、箱根と3大会があるが、主力チームは箱根を頂点としており、出雲、全日本はあくまで,頂点をきわめるステップのひとつととらまえている。ようするに年明けの箱根駅伝をみすえて,個々の戦いにのぞんでいうというわけである。


 過去の例からみて、箱根の優勝チームは、出雲を戦い、全日本を戦ったチームのなかから出ている。出雲、あるいは全日本への出場を欠いたチームから優勝チームは出ていない。いわば王道をあゆんできたチームのみが頂点というべき箱根を制することができる。


 そういう観点からゆくと、今シーズン、出雲、全日本を経て箱根に向かうのは、東洋大学、駒澤大学、明治大学、早稲田大学、中央大学、山梨学院大学の6チームである。出雲を制した青山学院大は全日本の出場を逸しており、過去のケースからゆくと,箱根では優勝はないということになる。


 王道を歩んできた6校が箱根にむけてどのような戦いをするのか。8区間でおこなわれる本大会のみどころは、まさにその一点にある。


 注目の第1区でうまく滑り出したのは東洋大だった。1㎞=3分ペースのたんたんとした展開、仕掛けたのが東洋の田口雅也で、11㎞で集団をとびだして主導権をうばいそのまま中継点にとびこんでいった。2位は山梨(井上大仁)3位上武とつづき、このあたりは大健闘というべきか。逆に駒澤の撹上宏光は17秒遅れの7位、早稲田の柳利幸は12位の58秒遅れは大誤算だったろう。


 2区では山梨学院のオムワンバが3㎞=8:15のハイペースで追い上げ、5㎞=13:46という区間新ペースでトップの東洋大の設楽啓太に肉薄、8㎞でとうとうとらえてしまう。後ろからは1区で出遅れた早稲田が大迫傑の快走で急追、11㎞では4位の明治をもとらえてしまった。


 東洋の設楽はひとたびオムワンバに離されるも粘りを発揮していたが、12㎞すぎでオムワンバがスパート、山梨は1区の好走を活かしてトップに立った。オムワンバは区間新、そして大迫傑の区間新の快走ぶり、この区間はみごたえがあった。


 2区を終わったところでトップは山梨、18秒遅れで東洋が2位につけ、そこから41秒遅れで駒澤、大迫の早稲田は駒澤に2秒差まで迫ってきた。さらに早稲田から8秒差で明治がつづき、そのあとはやや差が開いてしまった。優勝争いは東洋、駒澤、早稲田の3チームにしぼられた。


 9.5㎞という短い区間の3区で台頭したのは東洋大と駒澤大であった。東洋大の延藤潤が4.6㎞で山梨学院の松山雄太朗をとらえて奪首、駒澤も油布郁人が区間新の快走で山梨を交わしてトップ東洋から17秒差の2位までやってきた。早稲田はこの区間で延びず、トップから1分以上も置いてゆかれ、東洋と駒澤のマッチアップになってしまった。


 東洋は逃げた。ひたすら逃げた。4区、5区、6区……、じりじりと追ってくる駒澤を引き離し、7区の佐久間建の区間賞で67秒差としてしまった。東洋のアンカーは1年生の服部勇馬、追う駒澤は3年生の窪田忍、レースは安定したペースで前半はたんたんとすすんだ。後方では日大のベンジャミンが上位争いとは別の次元でシード権をあらそっていた。


 駒澤の窪田はきわめて冷静だった。5㎞すぎからじりじりと追い上げて、9㎞で30秒差、中間点では22秒差まで追ってきた。そして13㎞手前でとうとう服部をつかまえてしまったのである。


 窪田はさすがレース巧者だった。すぐにスパートすることなく、ひとたび後ろにつかせておいて、スパートのタイミングをはかっていたというべきか。そして14.6㎞でペースアップ、服部にはもう追いかける余裕はなかった。差は一気にひろがった。この窪田の沈着な判断により、駒澤の2連覇がきまったのである。

 駒澤は前半,中盤でやや東洋に遅れをとり、流れが悪くなりかけていたが、絵に描いたような逆転劇、最後は選手層の厚さがモノをいったというべきか。


 本大会をみるかぎり,箱根も駒澤、東洋のマッチレースになるだろう。早稲田は3位までやってきたが、優勝争いにからんでの順位ではないだけに、両校にくらべれば1枚も2枚も評価を下げなければなるまい。


 ほかでは5位にやってきた明治も大健闘だったが、その域をこえるものではない。しかし早稲田とともに箱根でも上位を形成する勢力になるだろう。4位の日本体育大学は出雲に出場していない。王道を歩んできてのものではないだけに、ここは早稲田、明治に比して評価を下げておこう。6位日大も同様とみる。逆に王道をあゆんできた山梨と中央は本大会でそれぞれ8位、9位に終わり、これでは箱根での上位争いはかなり苦しいとみた。


 よって本大会の結果から箱根を占うと、優勝争いは駒澤大と東洋大、3位争いは早稲田、明治、日本体育大学、それに青山学院大あたりがからんでくるだろう。あとは中央大学、山梨学院大学、日本大学、上武大学、城西大学、帝京大学、神奈川大学あたりが中位からシード権内をめざして激しくせめぎあうこととなろう。


◇ 日時 2011年 11月4日(日)午前8時10分スタート
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km
◇ 天候:くもり 気温8.9度 湿度60% 風:北北東2.6m(出発時) 
◇ 駒澤大学(撹上宏光、村山謙太、油布郁人、上野渉、湯地俊介 久我和弥、黒川翔矢、窪田忍)
◇総合成績はこちら
http://daigaku-ekiden.com/taikai_kiroku/