初優勝! ユニバーサルエンターテイメント
      勝ちにこだわって、勝つべくして勝った!



 ロンドンオリンピックで惨敗した日本女子のマラソン・長距離、あらかじめ予想されたこととはいえ、その衝撃の余韻が醒めやらぬあいだに、駅伝シーズンがやってきた。


 今シーズンの駅伝は、日本女子にとって将来を占うものとなろう。とくに4年後のリオに向かって夢をいだかせてくれるような若くて勢いのあるランナーの台頭があるのか。最大の見どころはそんなところにある。


 だが……。
 昨年の大会と同じく、そんなファンの期待はみごとに裏切られ、きわめて低レベルの大会に終始してしまった。なんともはや残念である。


 盛り上がりを欠いた最大の原因は明らかである。本大会は全日本大会の予選をかねているのだが、出場チームのすべてが無事故で出場権を与えられるからである。ちなみに全日本実業団駅伝の出場資格は次の通りである。


「 第23回東日本実業団対抗女子駅伝競走大会の上位12位までのチームに出場 資格を与える。更に予選会において2時間23分以内にゴールしたチームにも全 日本大会への出場資格を与える。」


 東日本実業団駅伝のエントリーは12チームだから、完走さえすれば,タイムはいかにあろうとも全チーム予選通過になるというわけだ。これではレースの緊張など最初からありゃしない。事実、23分を切ったチームは6チーム、あとの6チームは23分ををこえてしまっているが、それでも大手を振って本戦に出場できる。これでは気合いをいれてレースにのぞんでこない。


 ならば、「勝ちたい」という意欲あふれるチームに分のあるレースとなるのは自然のなりゆきである。

 出場エントリーの顔ぶれからして、連覇を達成した第一生命はベストとはいえない顔ぶれ、だからといって三井住友海上や資生堂など過去の覇者もいまひとつ。あとはパナソニック、ユニバーサルエンターテイメントのなかから候補をみつけなければならないありさまだった。今年もどんぐりの背比べというよりも低レベルでの群雄割拠というありさま。


 そんななかでレースのポイントとなる3区に、いま油がのりきっている新谷仁美を配したユニバーサルが、前半のペースをにぎるとみていた。最終的な結果はともかく、すくなくとも前半にかんするかぎりユニバーサルを中心にレースはくりひろげられるであろうとみていた。


 レース展開をかえりみて、「勝ちたい」という意欲に最もあふれ、事実、勝ちにきていたのはユニバーサルエンターテイメントのみだったというべきか。3区の新谷でトップを奪うとやすやすと勝利のリズムをつかんで混戦を断った。


 最大の勝因は1区と2区の出だしで好位につけたことに尽きるだろう。1区の青山瑠衣、2区の中村萌乃がトップから10秒遅れの2位をキープした。そしてエースの新谷仁美にタスキが渡ったのである。青山、中村の二人を誉めてやらねばなるまい。


 二人のはたらきによって現在、最も油がのっているというべき新谷仁美にとって最高のお膳立てができあがったのである。期待たがわずに新谷はタスキをもらってわずか600mでトップをゆくスターツの徳田友佳をとらえて、あとはまったくの独り旅……。区間新記録の快走で、なんと2位の第一生命に2分15秒もの大差をつけてしまった。かくして勝負はあっけなくこの3区で決したのである。


 3区で一気に勝負の「流れ」にのったユニバーサルの勢いはその後もとまらない。4区ではF・ワンジクが区間新、さらに5区の那須川瑞穂というベテランさえも木に登らせてしまったのである。3、4、5…と、3区間連続の区間賞で、2位の第一生命を3分27秒もぶっちぎってしまった。駅伝はうまくレースの流れをひきよせて、勝利のリズムの乗ったものが勝ち、絵に描いたような圧勝劇だった。


 タイム的にみても、まともにレースを勝ちに来ていたのはユニバーサルのみ。他のチームはどうしたことか。昨年の全日本覇者・第一生命でさえも戦えるコンディションとはほど遠い状態だった。


 本大会をみるかぎり、今年は全日本にいっても、関東勢はかなり苦戦するのではないか。予選の結果はともかく王者・第一生命に上積みがあるか。ユニバに3分もちぎられては、ちょっと首をかしげてしまう。本戦では、きっちり立て直してくることを期待したい。が、今年にかんするかぎり、勢いというものがいまにとつ感じられないのが気にかかる。


 最も残念だったのは、次代を担う新しい勢力の台頭がなかったことにつきる。ベテランがいまだに幅をきかせる状態ではちょっと困るのである。渋井陽子や赤羽有紀子、那須川瑞穂など、さらに関西の大会では福士加代子が爆走したという。彼女たちは日本を代表する選手だった。10前から日本の女子長距離界をひっぱってきた。その功績は大なるものがある。その彼女たちがいまだに第一線でエースとして君臨している。賞賛されるべきである。


 だが、それは裏をかえせば彼女たちを食いちぎるような前歯のでかい若手が育っていないということになる。若手が小粒になってしまったというべきか。たとえばヤマダ電機にはいった仏教大のエースだった西原加純、吉本ひかりにしても、年齢的にみてもトップ選手として注目をあびてもいいはずだ。だが実業団にはいったとたんに、どこにでもいるような並みの選手になり、すっかりかすんでしまった。これはいったいどういうことなのだろう。


 12月の全日本では将来の日本女子の長距離界をひっぱつような新鋭の出現をのぞみたいのだが、しょせん、ないものねだりなのだろうか。


 なお2012年12月16日(日)仙台でおこなわれる第32回全日本実業団 対抗女子駅伝競走大会出場チームは次の通りである。

▽東日本:ユニバーサルエンターテインメント、第一生命、しまむら、三井住友海上、パナソニック、日立、積水化学、資生堂、スターツ、ホクレン、ヤマダ電機、日本ケミコン、
▽中日本:デンソー、豊田自動織機、新潟アルビレックスRC、愛知電機、小島プレス

▽西日本:ワコール、ダイハツ、シスメックス、天満屋、大塚製薬、十八銀行、京セラ、九電工、ノーリツ、四国電力、キヤノンAC九州、エディオン


◇ 日時 11月03日(土=祝)午前8時00分スタート
◇ コース:JRさいたま新都心駅(旧中山道)~鴻巣~(国道17号)~吹上(旧中山道)~(国道17号)~熊谷駅前~熊谷スポーツ文化公園ゴール  6区間=42.195km
◇ 天候:晴れ  気温8.6度 湿度60%  風:西北西5.2m
◇ ユニバーサルエンターテイメント(青山瑠衣、中村萌乃、新谷仁美、F・ワンジク、那須川瑞穂、堀江知佳)

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