【書名】DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略
【著者】小野塚征志
【発行日】2022年5月21日
【出版社等】発行:インプレス
【学んだ所】
・場を創造するビジネスの価値:DXは、デジタル化によって不特定多数との自由なやり取りが可能になるから「モノやサービスを取引する新たな”場の創造”」を可能とする。⇒そのコンセプトは、「今までになかった場の創造」と「リアルな場のバーチャルへの転換」の2つに大別される。
- 今までになかった場を創るビジネス:デジタル技術の進化は、今までに取引されることのなかったモノやサービスの提供/共有を実現した。⇒結果として、単に取引が拡大するだけではなく、かつては知り得なかったこと、買えなかったモノやサービスを入手できるようになった。⇒そこで新たに創造された場が社会や経済に革新をもたらすものだとすれば、唯一無二の存在として広く多くの活用を得られるはず。
- リアルな場をバーチャルに変えるビジネス:リアルがバーチャルに変わることの基本的な価値は、いかなる場所でもモノやサービスを利用できるようになること。それに加えて、これまでになかったDXならではの価値を付与できれば、リアルな場を超えた存在になることも可能。
・企業間の取引は総じて固定的であるがゆえに、調達先/納品先との連携のもと、生産から販売までの「サプライチェーン」全体を最適化することができた。この産業構造が大きく変わろうとしている。⇒ソニーが自動車を開発し、トヨタがスマートシティを構想するなど、業界の垣根を越えた再編と競争が世界的に拡大している。既存の関係にとらわれていては、このダイナミックな変化に取り残されてしまう。⇒それゆえに、あらゆる調達先/納品先との自由な取引を可能とする「サプライウェブ」への進化は不回避とみるべき。その実現には、不特定多数との取引を支えるプラットフォーマーの出現と普及が欠かせない。⇒場を創造したり、非効率を解消したりすることで、誰とでもさまざまなモノやサービスを取引できるようにするDXは、「チェーン(=鎖)からウェブ(=クモの巣)への革新」という産業構造の転換をもリードすることが期待される。
・ビジネスモデルの要件①需給を両立できるか?
- 提供と利用の双方に十分なニーズがあるか?:「場を創造するビジネス」とは、モノやサービスを提供/共有可能な「場」を構築し、利用を得ることで収益を獲得する事業。⇒ゆえに、その「場」を介してモノやサービスを提供したいユーザーと、利用したいユーザーの双方のバランスがとれないと、ビジネスは成立しない。⇒ビジネスモデルの検討にあたっては、提供と利用の両面からニーズを把握すべき。
- 他社に先んじてネットワーク効果を得られるか?:百貨店や飲食店といった「リアルな場」の場合、ユーザーが一定数を超えると混雑したり、見て回るための移動距離が長くなったりするから満足度が低下する。⇒対して、「バーチャルな場」であれば、システムの増強や検索性の向上などの措置を講じることでユーザー数の増加に対応することが可能。⇒より多様なモノやサービスをロングテールで提供すること、遠隔地でも利用できることなどを特長とするビジネスであれば、ユーザー数が増えれば増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」を期待できる。クチコミでの評価やコミュニティの形成などを可能とすることで、ネットワーク効果を高めることも重要。一度、優位性を確立しネットワーク効果が働くようになれば、ユーザー数が雪だるま式に増えるはず。⇒「場を創造するビジネス」は先行者優位性を得ることがきわめて重要なビジネスモデルといえる。競争環境の激化が予想されるのであれば、初期の段階で一気にユーザー数を増やすための施策を実行すべき。
- ネットワーク効果が働くということは、先んじて他社よりも多くのユーザー数を獲得した企業が寡占的な地位を獲得できる。⇒だからこそ、初期の段階では、収益を拡大することよりも、ユーザー数を増やすことを優先すべき。⇒QRコード決済の利用が拡大した当初、PayPayをはじめとする主要な企業がこぞってキャッシュバックキャンペーンを実施した理由は、ユーザー数の獲得を優先したからにほかならない。
・ビジネスモデルの要件②差別性はあるか?
- 他社にはない「何か」があるか?:「場を創造するビジネス」の展開にあたっては、他社にはない「何か」を有していることが重要。⇒ネットワーク効果が働く以上、二番煎じでは勝てない。⇒多くのユーザーは特定の「場」だけを使っているわけではない。目的や状況に応じてさまざまな「場」が使い分けられる中で、その対象に選ばれるだけの特徴を備えていることが大事。
- 他社にはない「誰か」があるか?:差別性は「何か」だけではなく、「誰か」でも創り出すことができる。⇒ビジネスモデルを検討するにあたっては、今はまだ満たされていない「何か」や「誰か」を見つけ出すことが最も重要。⇒その「何か」や「誰か」を満たすことにニーズがあるとすれば、新たな「場」を創造することで相応の収益が得られるかもしれない。有力な競合が存在するのであれば、他社とは異なる「何か」や「誰か」を創造することで、差別的優位性を確立すべき。
・ビジネスモデルの要件③+αの価値を提供できるか?
- 「場」以外の価値を提供できるか?:「場を創造するビジネス」の最大の価値は、モノやサービスの提供/利用が可能な仕組みを提供することにある。⇒したがって、もっともオーソドックスなマネタイズの方法は、モノやサービスの提供者や利用者から「場」の使用に応じた対価を得ること。⇒しかし、収益を拡大するために対価を上げることと、ユーザー数を増やすことは相反する。ネットワーク効果が働くことを考えれば、対価を得ることよりもユーザー数を増やすことを優先すべき。⇒ビジネスモデルの検討にあたっては、「場」以外の価値を創出できる可能性を探究すべき。
- デジタルならではの価値を生み出せるか?:DXによる「場の創造」では、デジタル技術の活用が基本となる。⇒アナログやリアルな空間では実現できなかった「デジタルならではの価値」を創出できれば、ユーザーの獲得に寄与できるはず。⇒今までの「場」には、「不便と認識されていなかった不便」が多数ある。「場を創造するビジネス」の検討にあたっては、潜在的なペインポイントを「デジタルならではの価値」の創出により解決できる可能性を探究することも重要。
- 「場を創造するビジネス」は、多くのユーザーに利用されることを基本とするため、広告収入を得やすいという特長がある。⇒実際、FacebookやTwitterといった世界的なSNSの収益源は広告。⇒ビジネスモデルの検討にあたっては、広告収入を得られる可能性を一度は考慮すべき。
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