【書名】DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略
【著者】小野塚征志
【発行日】2022年5月21日
【出版社等】発行:インプレス
【学んだ所】
・DXとは、デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新。⇒デジタルでビジネスをトランスフォーメーション(変革)するからこそ、DXなのである。
・DXの本質的な目的は「変革による競争優位性の確立」で、デジタル化はそのための手段と捉える。⇒デジタル技術の活用を通じて新たなビジネスモデルを確立する。そして、今までとは異なる誰かに、今までとは違う方法で、今までにはない価値を提供する。⇒その非連続な成長によりパラダイムシフトを成し遂げることによって新たなビジネスを創造することがDXの真髄。
・DXの進化形態:DX1.0デジタイゼーション⇒DX2.0デジタライゼーション⇒DX3.0コーポレートトランスフォーメーション⇒DX4.0インダストリアルトランスフォーメーション
・DX1.0デジタイゼーション:デジタル技術を活用することで、既存のビジネスプロセスをデジタル化すること。⇒業務の効率化や生産性の向上などにより収益性を高めることが期待される。
- デジタイゼーションの代表例はペーパーレス化。⇒書類や販促物を電子化すれば、用紙代を節約できるだけでなく、情報の更新も簡単になる。⇒取引文書をペーパーレス化すると、郵送代や印紙代の削減に加えて、押印のための出社も不要になる。
- RPA(PCでの作業の自動化)の導入もデジタイゼーションの典型例。⇒見積書の発行、契約書の定型的なチェック、入金や支払に関するデータ入力など、ルーチン化された業務はすべてRPAの対象。
- テレワークやオンラインミーティングも広い意味ではデジタイゼーションに当てはまる。⇒移動に要する時間と交通費が不要になることによる労働生産性の向上を見込める。
- AIの活用もデジタイゼーションの一部だとすれば、デジタル化は人の役割を変えるということ。⇒企業は、デジタル化の先にある未来を見据えて、どの領域を人に任せるのかを考えておく必要がある。
・DX2.0デジタライゼーション:デジタル化を通じて企業のビジネスモデルを変革することを指す。⇒収益を得るための方法や差別的優位性の源泉などを変えることで、競争力を向上させることが望まれる。
- モノ売りからコト売りへの転換はデジタライゼーションの代表例。
- ビジネスモデルの変革とは、マネタイズスキーム(収益を得る仕組み)の転換を意味する。⇒そのビジネスを展開することで、誰から、どのような収益を得るのか、デジタル化を切り口にその可能性を広く探求することが重要。
・DX3.0コーポレートトランスフォーメーション:デジタル化によるビジネスモデルの変革を戦略化/組織化するために、企業としてのアイデンティティを進化させることを指す。⇒目指す姿やその実現に向けた戦略を再構築することで、ステークホルダーに対する提供価値を大きくすることが期待される。
- 事業ポートフォリオの見直しによりコアコンピタス(競争優位の源泉となる能力)の強化を図ることも、コーポ―レートトランスフォーメーションを進める重要な目的の1つといえる。
- コーポレートトランスフォーメーションでは、誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのかを考えることが大切。⇒DX戦略とは、その目指す姿を実現するためのシナリオ。企業としての目指す姿をアイデンティティとして再定義することがコーポレートトランスフォーメーションの要点といえる。
・DX4.0インダストリアルトランスフォーメーション:コーポレートトランスフォーメーションが進むことで、社会生活や経済活動に革新がもたらされることを指す。⇒業界全体のメカニズムが再構成されることで、社会/経済の豊かさや快適さの向上が期待される。
- DXは、企業単体の革新のみならず、ゆくゆくは業界全体のメカニズムを変えてしまうほどのインパクトをもたらす。⇒DXを推進するにあたっては、他社も同様の取り組みを展開する可能性があること、結果としてインダストリアルトランスフォーメーションに至ることが想定されること、その未来を十分に見据えたうえで、自社のみならず、業界全体としての目指す姿と、そこに至るまでのDX戦略を描くことが重要。
・DX時代(DXが進んだ未来)には、モノやサービスの提供ではなく、その取引を支えることを主とするビジネスが増えると予想される。⇒結果として、モノやサービスの提供手段や方法が多様化し、それを支えるビジネスの必要性や重要性が高まる。
・その方向性は、「モノやサービスを取引する新たな場の創造」「モノやサービスの取引における非効率の解消」「モノやサービスの取引に対する需給の拡大」「モノやサービスの取引に付随する収益機会の拡張」の4つに大別される。
・場を創造するビジネスで取引機会を拡大する:DXは、今まで取引されることのなかったモノやサービスの提供/共有を可能にする。そのため場が新しく創造される。
- YouTubeをはじめとする動画/画像共有サイトは、その最たる例といえる。⇒SNS、クチコミサイト、クラウドファンディングなども新しく創造された場の例。⇒DXによりこれらの場が創られたことで、取引されるモノやサービスの種類/範囲は拡大した。
- DXによるリアルからバーチャルへの転換:Amazonや楽天市場などのECモールは、バーチャルな取引の場を構築することで、ロングテールでの商品ラインナップを実現した。⇒フリマアプリ、動画配信サービス、クラウドソーシングなども、バーチャル化した場といえる。⇒物理的な制約を解消することで、より多様なモノやサービスを広範な地域に提供/共有できるようになった。
- DXにより新たな場が創造されること、バーチャル化されることは、モノやサービスの取引を拡大することにつながる。⇒その価値が大きければ大きいほど、その場に対しても相応の対価が支払われる。⇒場の創造は、社会/経済に新たな価値をもたらすビジネスといえる。
・非効率を解消するビジネスで業界全体を構造改革する:モノやサービスの取引における非効率を解消することで、コア業務に集中できる事業環境が生み出される。
- モノやサービスの取引における「本来必要のない作業」をなくす。
- 人手を減らすことでの非効率の解消:請求書をペーパレス化すれば、用紙代の削減のみならず、入力や照合にかかる人手の作業をなくせる。⇒契約書のチェックをAIに任せるようになれば、専門的なスキルのある人を確保せずに済むようになる、⇒単に省人化を図るのではなく、人手ではできなかったオペレーションを確立することで、競争優位を構築することも可能になる。
- 生産者と小売店、発注者と工場などをダイレクトにつなぐことができれば、取引コストを下げられる。⇒その実現にあたっては、発注/受注要件の明確化、出荷商品の小口での仕分、納品先/委託先の信用力の担保など、中間業者が提供してきた機能をDXにより解消できるかどうかがポイントになる。
- 作業や人手の不要化は、それを担っていた人にとっては「仕事を失うこと」を意味する。⇒しかしながら、その結果としてモノやサービスの取引が効率化すれば、経済全体が活性化する。
・需給を拡大するビジネスで市場の成長と社会の多様化を促す:DXは「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」であるがゆえに、デジタル化を通じて広く多くの情報がつながるようになる。⇒そのモノやサービスは使われているのか、いつ、誰が、何を使っているのか。そういった情報をリアルタイムに把握し、今までにはない売り方/買い方が提供できれば、モノやサービスをより便利に使えるようになる。
- 売り方や売る人、買い方や買う人が増えれば、モノやサービスの取引も拡大する。⇒それだけではなく、選択肢が広がることで、より自分に適した売り方/買い方を選べるようになる。
- 需給の拡大は、市場の成長と社会の多様化を推進するビジネスといえる。
・収益機会を拡張するビジネスで企業の価値を高める:モノやサービスから得られるデータや自社の事業基盤を新たな収益源として活用することを可能にする。
- データそのものを販売するのではなく、ツールとして提供するなど、個人情報の保護に配慮したビジネスモデルを構築することがポイントになる。
- モノやサービスを提供するために構築した事業基盤で収益を得るという方法もある。
- 収益機会の拡張は、モノやサービスを提供することで収益を得てきた企業のビジネスモデルを進化させる取り組みといっても相違ない。
・事業性を有することがビジネスモデルの基本要件:いかなるビジネスであっても事業性を有することは大前提となる。⇒DX時代ならではのビジネスを展開するのであれば「需要性」「経済性」「先行者優位性」「競争優位性」「戦略性」の5つを充足させることが望まれる。⇒場を創造するビジネスであれば、加えて「需給の両立」「差別性」「+αの価値」を満たすことが重要。⇒非効率を解消するビジネスであれば「コストダウン効果」「利用性」「レガシーとの両立」⇒需給を拡大するビジネスであれば「市場拡大効果」「マッチング性」「信頼性」⇒収益機会を拡張するビジネスであれば「マーケットプレゼンス」「シナジー効果」「新規性」というように、それぞれ充足することが望ましい要件がある。
- ビジネスモデルの検討にあたっては、これらの要件をどの程度満たしているのかを基準に事業性を判断する。⇒充足する項目が少なければ、ビジネスモデルを再考する。目指す姿やその実現に至るまでの戦略を練り直すことで、より多くの要件を満たし得るビジネスモデルを思案する。あるいは、特定の項目で抜きん出た存在を目指すことも一考に値する。
- 検証と再考を何度も練り返すことによって、真に事業性のあるビジネスモデルを探究することが望まれる。
・ビジネスモデルの基本要件①需要性はあるか?
- ペインポイントの解決に寄与するか?:どれほどすばらしいモノやサービスであっても、それを必要とするユーザーがいなければ、ビジネスとして成り立たない。それは、DXが進んだ未来のビジネスにおいても同様。⇒つまり、ペインポイント(現状への不満や不便)に応えるビジネスであるかどうかが重要となる。
- 潜在的な需要を創造できるか?:ペインポイントの解決を主とするビジネスはそのビジネスの需要性を判断しやすいからレッドオーシャンに陥りやすい。⇒ブルーオーシャンを狙うなら、特定のペインポイントをターゲットとしない未知なるビジネスを創造することが求められる。⇒YouTubeが使われるようになって、はじめて一個人が作成した動画を見たり、YouTuberという職業が生まれたりした。=YouTubeは、新しいライフスタイルとそれをもとにした新たな需要を創造した。
- DXの先にあるビジネスモデルを検討するあたっては、今まで以上に「構想力」が問われる。⇒誰に対してどのような価値を提供するのか、社会や業界にどのようなインパクトをもたらすのか、その未来の世界を思い描いたうえでビジネスモデルを構想することが重要。
・ビジネスモデルの基本要件②経済性はあるか?
- ユーザーにとってお金を払う価値はあるか?:新たに始めようとするビジネスに十分な需要性があったとしても、対価を払ってくれるユーザーはいなければ、ビジネスとしては成立しない。⇒ユーザーが「お金を払うほどの価値がある」と思うかどうかがポイントになる。
- 第三者からのリターンは見込めるか?:ビジネスとして成立させるもう1つの方法として、ユーザー以外の第三者からリターンを得ることが考えられる。⇒広告収入の獲得は、その代表的な手段。YouTubeやFacebookは、広告を収益の基盤とすることで世界的なビジネスへと飛躍を遂げた。テレビ、新聞、雑誌などと違って、広告を見た人や見た時間を特定できるからこそ、費用対効果も高まる。デジタルの特性を活かしたマネタイズスキームといえる。⇒モノやサービスから得られたデータを外部に提供することで収益を獲得することも想定される。
- DX時代にあっては、ユーザーだけではなく、第三者からもリターンを得られる可能性を探究することが重要。⇒「経済性を見極める」ことに加えて、「経済性を生み出す」ことも大事になる。
・ビジネスモデルの基本要件③先行者優位性はあるか?
- 従来とは違う「何か」を持ったビジネスか?:デジタル技術への投資や運営コストは、売上高やユーザー数に直接関係しない。先行的に売上やユーザーを増やせれば、その分だけ利幅が大きくなる。加えて、ユーザーやデータが多ければ多いほどユーザーへの提供価値も拡大する。⇒「DX時代ならではのビジネス」では、先行者の地位を得ることが大事。⇒「完全なる新しさ」ではなく、従来とは違う「何か」を作り上げることのほうが現実的。
- 他社の追随を防ぐ参入障壁を築けるか?:先行者となることに成功したとしても、優位性を築けるとは限らない。後発企業の追随を受ける可能性がある。⇒追随を防ぐための参入障壁を構築することもポイント。
- 他社とは違う「何か」を作り上げることで先行者としての地位を得ることは大切。そのうえで、参入障壁を構築し、優位性を確立することが望まれる。⇒単に「新しい領域」を見つければよいのではなく、先行者優位性を戦略的に築き上げられるビジネスモデルを描くことが重要。
・ビジネスモデルの基本要件④競争優位性はあるか?
- 客観的/相対的な強みを活かせるか?:どのようなビジネスであっても、自社の強みを活かさなければ厳しい競争に打ち勝てない。⇒特に重要なことは、強みを客観的かつ相対的に評価すること。
- 「ならでは」のビジネスか?:「DX時代ならではのビジネス」をこれから開始するとして、即座に成功の果実を得られるケースはまれである。十分な収益を得られるようになるまでに、当初の想定以上に期間を要することのほうが一般的。⇒ビジネスに成功したといえるまでに、強力な競合の参入、新しい技術の実用化など、想定外の事態が起こることも考えられる。⇒どれほどすばらしいビジネスであっても、確たる土台がなければ成功しない。⇒それゆえ、客観的かつ相対的に評価した強みを活かすことが重要。⇒Amazonは、創業後、利益を計上できるようになるまでに7年を要した。=成功するまで自社のビジネスを貫き続けたからこそ成功した。⇒強みを活かしたからといってうまくいくとは限らないが、自社の強みを活かした「ならではのビジネス」といえないと、成功への階段は登りきれない。
・ビジネスモデルの基本要件⑤戦略性はあるか?
- 目指す姿を明確化できているか?:ビジネスを成功に導くうえで、目指す姿を描くことはきわめて重要。⇒目指す姿があれば、目指す姿に照らし合わせて、その実現にもっとも適した道を得らればよいから、より戦略的かつ合理的に経営判断を下せる。⇒目指す姿の構想にあたっては、「誰に、どのような価値を、どうやって提供するのか」を明確にすることが基軸となる。⇒優先順位を判断する際の指針として活用できるよう、定義をはっきりさせるべき。競合他社との違いがわかる内容にすることで、経営陣や投資家などの理解を得やすくすることも大事。
- 目指す姿に至るまでの具体的な戦略が描けているか?:目指す姿と現状の間にはギャップがある。この目指す姿と現状の間のギャップを解消するための施策をとりまとめたものが戦略。そして、戦略を「誰が、何を、いつ実行するのか」というレベルにまで具体化したものは実行計画(アクションプラン)と呼ばれる。⇒目指す姿があっても、そこに至るまでの戦略がなければ「絵に描いた餅」になる。⇒新たなビジネスモデルを実現するうえで、適切な戦略を策定することは、目指す姿を描くことと同じくらい重要。特に、今までにはないビジネスであればあるほど、想定外の事態に陥る可能性は高まる。⇒戦略や実行計画を具体化するだけではなく、当初の計画どおりに進まなかったときの対応策をあらかじめ検討しておくべき。⇒短期的な成果の獲得が見込める施策を先行的に実施するなど、「成功しつつあること」を社内外に発信しやすい計画にすることも重要。
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