ウエスト・エンド殺人事件(2022) | きのうは今日の物語

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ウエスト・エンド殺人事件
See How They Run(2022)

 

1950年代のロンドン。
場所はウエスト・エンドの劇場、死体は舞台上、容疑者は舞台関係者たち。

殺人事件の『開幕』である。

 

 

 

あらすじ要約「こんなアガサ・クリスティは嫌だ」

 

サム・ロックウェル&シアーシャ・ローナンによるミステリー・コメディ映画。
なのですが、「夜の来訪者」的な英国産ミステリーと思い込んでいた自分。

 

 

もちろん、予告を見ているので上記↑ほど暗く重厚なものではなくて、コメディシーンもありつつの、華麗なワケあり社交界の人々が織りなすクラシカルなミステリーだと思っていたのです。(それこそポアロ的な)

 

物語はアガサ・クリスティの原作である戯曲「ねずみとり」の舞台で、関係者が殺害されるところから始まる。

実際に1952年のウエスト・エンドにて初演され、それからずっと連続して上映をしているそうです(名物なんだな)。

「ねずみとり」そのものは切なくも悲しい真実が語られる物語ですが、クリスティ独特の「人間の物悲しさ」と「殺人を犯す人間の愚かさ」も同時に語られていると思う。

この映画でも同様のはず……とみせかけて、実際は「うるせぇ!俺がルールだ!」でどいつもこいつも持っていく。(※イメージです)驚き


多分名探偵がここにいたら殺されてる。

 

サム・ロックウェルを初めて見たのはグリーン・マイルのあの残忍な殺人犯。

だったので以降どうしても好意的には見れなかった俳優(それだけ演技が素晴らしかったということです)

しかしここではそんな面影はなく、アルコール依存症(?)でちょっと怠惰な風貌のマイペースなストッパード警部となって登場。

シアーシャ・ローナンは見覚えがある……と見ていたら、グランドブダペストホテルのアガサでした。相変わらずキュートすなぁラブ飛び出すハート

そのほかにも過去に見たドラマの中で、ちょいちょい見たことある方々が。

エイドリアン・ブロディはちょっとグランドブダペストホテルを彷彿させるキャラクターで、かなり個性的で楽しかった。でも「過去の人」となっていたため、重要な場面で影響していても存在していない。そんな役どころで、そこがまた良かったです笑い泣き

彼を知ったのは「戦場のピアニスト」だったので、悲しそうな面差しがハマリ役だな……おねがいって感動してたのに、もう変な人のほうがクセになってくる良さ。

 

これだけのメンバーを集めて、1900年代の素敵な舞台を用意したのだから、本格英国ミステリーが観たかった気もする。
でも、こんな贅沢なコメディだってあっていいはず。

主演2人が最高に素晴らしかったし、サム・ロックウェルのうだつの上がらない警部の姿がとても良かった。アーガイルでまた違った姿でいるのほんとすごい(若返ってないか)。

 

これは、英国の人もしくは英国通の人ならもっといろいろ見えてきて楽しめたのかもしれない。

ちなみに、「ウェス・アンダーソン風味」とあちこちで言われている。まだブダペストホテルしか見てないけど、だから自分も魅かれてしまうのかな照れ

 

最後に、「虐待」はいつも悲しい結末しか残さない。舞台の上でも下でも。
人は肉体を殺すこともできるし、また魂も殺すことができることを自覚するべきだ。

知識として蓄えるのではなく。

この内容は、他のクリスティ作品でもしばしば出てきますね……。