しばらく議論が続いていた、モデル年金の根拠となる世帯や働き方の前提について、具体的な案が出てきました。
現状とあわせみていきましょう。
①モデル年金とは
厚生労働省が毎年発表している「モデル世帯における標準的な年金額」です。
現在の算出方法は次のとおり。
a.標準的な収入で40年間働いた夫の、厚生年金と国民年金の合計額
b.40年間専業主婦だった妻の国民年金額
a+bがモデル年金です。
②モデル年金額とモデル世帯の課題
今年度の年金額は次のとおりです。
aは162,483円
bは68,000円 合計230,483円
※夫の国民年金も68,000円(内数)
かつて政府の統計で長く使われていた「標準家庭」。夫と専業主婦に子供2人。昭和40年代に設けられたこの世帯像が、つい最近まで様々な調査で使われていました。
2022年時点の総務省の調査では、単独世帯が約33%、夫婦二人世帯が約25%、夫婦と未婚の子の世代が約26%と、独りか夫婦の世帯数が圧倒的に多くなっており、この傾向はかなり前から始まっていました。
世帯の人数もそうですが、現在は夫婦共働きが当たり前になっています。
FPがご相談を受ける際は、その方や配偶者の「ねんきん定期便」など確認しながら進めるので問題ないのですが、平均値で説明するセミナーや執筆で、公的資料の分析数字を引用する際、このまま使うと実態と離れてしまう恐れがあります。というか、それが分かっているので、私はテーマに沿った世帯モデルを選び資料から計算して比較しています。
これだけ世間で取り上げられ、関心も高い老齢年金なのに、そのモデル金額が時代遅れというのはかなりヤバイ状態でした。働き方のモデルも、ようやく実態に合わせることになったようです。
③新たなモデル案
ところで、その新たなモデル案がなんと25種類もあるというのです😮
それ、モデルっていうの……
実は、一番のポイントは「単身世帯の年金パターンを8つ作った」ことにあります。
【ご参考】以外リンク先の「資料1」
厚生労働省第15回社会保障審議会年金部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20240416_00001.html
・男性と女性別に、厚生年金保険料の算出根拠になる収入額を「平均」「平均✕1.25」「平均✕0.75」の3つで計算(厚生年金+国民年金)
これで6種類です。
・パート(男女の短時間労働者の平均的な収入)で働く場合
・国民年金のみ加入する場合(一度も公務員や会社勤め経験がない)
この2つを足して8種類。
じゃ、何で25種類か?
これらの組み合わせを作ったからです。でもそれだと、もっとありますよね🤔
厚労省が主なものとして挙げた組み合わせが17種類あり、単身の8種類と合わせた数字なのです。
別に、8種類を自分で組み合わせればよいだけですが、計算が面倒な方もいるでしょうからパターンを絞って公開したんでしょうね。
こんな感じです↓
男女とも平均的収入=294,977円
男女とも平均的収入✕1.25=334,721円
男が平均、女が平均✕0.75=278,853円
男女とも平均的収入✕0.75=255,232円
男女とも短時間労働者=196,968円
男女とも国民年金のみ=136,000円
こうしてみると、厚生年金の有無そして有の場合も収入差で月額の幅が大きいですね。
働き方と年金の関係を説明するのにも、公的資料で使えるものができたのは良かったです。
さあ、こうなると次に「老後2,000万円問題」をシミュレーションする時は、どの組み合わせを使うのかなぁ😎
なんて、思わず考えてしまいます。
世帯の年金収入の差だけでも、2,000万円不足が全国民に当てはまるわけではないことがすぐわかると思います。もっと足りない人がいれば不足しない人がいるかも。あの頃の一律の狂騒はなんだったのか。
自分はどうなのか?を冷静に理解し行動するための材料として、この見直しはよい動きだと思っています。
ではまた。