本日のブログは様々な多様体達の関係を簡単にまとめてみようと思います。いつも通り常に未完のメモですのでご意見、ご感想、お待ちしております。

また、位相空間から可微分多様体までの簡単な議論は、以前のブログに書いてありますので、そちらも合わせてどうぞ。


位相空間T:=(X, O)

集合X, Xの部分集合族Oの組。Xを空間としOがXの分離性や連結性を定める。


d次元実位相多様体M:=(T, {U_i, ψ_i: U_i→ R^d})

位相空間T, 局所座標系{U_i, ψ_i: U_i→ R^d}の組。Tを空間とし局所座標系{U_i, ψ_i: U_i→ R^d}がTの部分集合U_iとR^dを同一視し座標を定める。


d次元実可微分多様体M

d次元実位相多様体Mは、U_i ∩ U_j ≠Φを満たす、任意のi, jに対して、座標変換

ψ_j○(ψ_i)^{-1}: R^d→ R^d

が、C^n級写像である時、d次元実C^n級可微分多様体と呼ばれる。特に、n=ωのとき、Mはd次元実解析多様体と呼ばれる。

加えて、Mには接空間TM、余接空間T*M及び、そのテンソル代数が定義される。特に、余接空間T*M(のk次外微分形式∧^kT*M)は、外微分dについて複体を成し、コホモロジー(ド・ラム)に依り分類される。


d次元実リーマン多様体(M, g)

d次元実可微分多様体Mに、(0, 2)-テンソルg:TM×TM→Rで、正定値、非退化、対称となるものが定義される時、組(M, g)はd次元実リーマン多様体と呼ばれる。

加えて、(M, g)にはレビ・チビタ接続Γ、リーマン曲率テンソルRが定義される。


d次元概複素多様体(M, J)

d次元実可微分多様体Mに、(1, 1)-テンソルJ:TM→TMで、J^2=-id_{TM}となるものが定義される時、組(M, J)はd次元概複素多様体と呼ばれる。

加えて、J^2の固有値±iに応じ、接空間TM及び、余接空間T*Mは、T^{(0,1)}M, T^{(1,0)}M,T^{(0,1)}*M, T^{(1,0)}*M, と分解される。特に、余接空間T*M(のk次外微分形式∧^kT*M)は、外微分dを、T^{(0,1)}*M, T^{(1,0)}*Mへ射影した作用素(ドルボー作用素)について複体を成し、コホモロジー(ドルボー)に依り分類される。


d次元複素多様体M, or (M, J)

位相空間T, 局所座標系{U_i, ψ_i: U_i→ C^d}の組。特に、座標変換が正則写像に依り与えられるとする。

また、概複素多様体(M, J)は、Jが可積分、即ちNijenhuisテンソルN_Jが恒等的に0になる時、複素多様体となる。こちらを定義とする場合もある。

(メモ:d次元実可微分多様体はホイットニーの埋め込み定理に依りR^{2d}に埋め込む事が出来るが、複素多様体について、同様の定理は無い。これが出来る複素多様体は、シュタイン多様体と呼ばれる。)


d次元ポアソン多様体(M, {,})

d次元実C^∞級可微分多様体Mに、R双線型写像{,}:C^∞(M)×C^∞(M)→C^∞(M)で、反可換性、ヤコビ恒等式、微分構造を持つものが定義される時、組(M, {,})はd次元ポアソン多様体と呼ばれる。


d次元シンプレクティック多様体(M, ω)

d次元実C^∞級可微分多様体Mに、非退化、閉2次形式ωが定義される時、組(M, ω)はd次元シンプレクティック多様体と呼ばれる。

(メモ:シンプレクティック多様体は、必ず"整合する"概複素構造Jと、計量gを持つ。従って、自然に、概複素多様体、リーマン多様体になる。また、シンプレクティック多様体は、ダルブーの定理から、局所的に正準座標が定義出来るが、この正準座標を用いてポアソン括弧を定義する事で、自然にポアソン多様体となる。)


d次元エルミート多様体(M, J, g)

d次元複素多様体(M, J)に、エルミート計量gが定義される時、組(M, J, g)はd次元エルミート多様体と呼ばれる。


d次元ケーラー多様体(M, J, g) or (M, ω, J)

d次元エルミート多様体(M, J, g)は、gが閉かつ完全となる時、ケーラー多様体と呼ばれる。

(メモ:シンプレクティック多様体(M, ω)と可積分な概複素構造Jの組(M, ω, J)に対し、ωとJが"整合している"時、リーマン計量gが存在し、ケーラー多様体となる。特にシンプレクティック多様体(M, ω)に対し、自然に定義される概複素構造Jと、計量gに対し、Jが可積分である時、シンプレクティック多様体はケーラー多様体となる。)
Julia集合とは、離散力学系、或いは、写像に定義される、カオスの指標とされる集合である。これについて、あまりまとまった記事を見かけないので、簡単にまとめる。


写像F:M→Mに於ける``充填Julia集合(Filled Julia set)''K(F)は



で定義される。つまりK(F)は無限遠点に行かないMの部分集合である。


また、写像F:M→Mに於ける``Julia集合(Julia set)''J(F)は、充填Julia集合の境界∂K(F)で与えられる。




Julia集合には以下の様な性質がある(但し、全ての性質が、一般のMに於いて成り立つかは不明):

・Fato集合の補集合

・全て周期の反発周期点の和集合の閉包







最初の2つの性質は、Julia集合の同値な定義である。また、最後の2つの性質は、Julia集合がある意味で写像の不変量である事を示している。


文献:

英語版Wilipedia, "Julia set",

中西敏浩, "複素力学系入門".
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A, Bを対象,

AからBへの射をf,

BからAへの射をg,

fとfの射の合成をg○f,

gとfの射の合成をf○g,

とする。このとき

g○fが1_A、つまり、Aへの恒等射になり、かつ、f○gが1_B、つまり、Bへの恒等射になるとき、f(及びg)は、AからB(及びBからA)への同値(同型射と呼ばれる事が多いが便宜のため)と呼ぶ

g○fが1_A、つまり、Aへの恒等射になり、かつ、f○gが1_B、つまり、Bへの恒等射に"ならない"とき、fは、AからBへの弱同値と呼ぶ


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A, Bを位相空間,

AからBへの連続写像をf,

BからAへの連続写像をg,

fとgの連続写像の合成をg○f,

gとfの連続写像の合成をf○g,

とする。このとき

g○fが1_A、つまり、Aへの恒等写像になり、かつ、f○gが1_B、つまり、Bへの恒等写像になるとき、f(及びg)は、AからBへの同値(或いは同相写像)と呼ぶ

g○fが1_A、つまり、Aへの恒等写像になり、かつ、f○gが1_B、つまり、Bへの恒等写像に"ならない"とき、fは、AからBへのホモトピー同値(或いは擬同型)と呼ぶ

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