17歳の息子は去年までのレアルシューレで数学クラスだったのが災いしてか、クラスに女の子はゼロ!まるで男子修道院のような生活を送っていた。
ところが、9月から通い始めた新しい学校では逆に男子生徒は彼を含めてたったの3人。残りは全員女子のクラスという激しい変化である。
レアルシューレではほとんど女の子と言葉を交わしたこともなかった息子だが、新しいクラスで女の子の友達が一人出来たという。ぬわんですって、女子と知り合った。そんな貴重な子を逃がしてはいかん。
気になる私はやいやい息子をたきつけ、先週の週末、その子をクリスマスマーケットに誘い出させることに成功。
旦那も含め、車で隣町の彼女の家まで迎えに行くことになった。
どんな子かなー。今のところユスティーナという名前しか知らない。道中楽しみであれこれ想像をふくらましているうちに、彼女の家に近づいてきた。
「あ、あれユスティーナとちゃう」道端にたたずむ女の子を見つけて声を上げる私。と思ったら振り向いたらどう見ても50ぐらいのおばさんでしかも犬を連れている。ハイ、早とちり。
さらに近づいていくと、今度は坂の上の方に赤いコートに白い帽子のような女の子の姿が見える。「あ、今度こそユスティーナじゃない」と指さしで声を上げる私。と思ったら近づいていくにつれ、なんとそれは道路に立つ赤い消火栓だったことが判明。最初は50代のオバサン、次は人間でさえない物体と見間違えるなんて。私は齢の割には目がいいと思っていたのだが、考え直さなくては。
キミ、頼むから落ち着いてくれ、とあきれ顔の旦那。私の興奮を理解してくれない。
その時角から黒いコートを着た女の子が出てきた。息子が「あ、あれユスティーナだよ」
おお!さっそく車を止め、外に出ていく私達。ドイツ人にしては小柄で長い金髪を黒いリボンで束ねた細い女の子だ。
「私、アクサイよ。よろしくね」と言うと、あ、よろしく。お会いできてうれしいです。と礼儀正しく挨拶してくれた。好印象。
彼女、ユスティーナは今までクリスマスマーケットに行ったことがないという。
やだー、そうなの。あなた本当にドイツ人?と冗談を言うと、「いえ、私両親ともにポーランド出身で・・・」と言う。見た目はドイツ人と変わらないが、何となく親しみやすいというか可憐な感じがするのはそのためかもしれない。
二人を後部座席に乗せてさっそく出発。
私は口下手な息子が果たして異性とまともに言葉を交わせるのか、気になってチラチラ様子をうかがっていた。
なんせ彼は私の知る限りいつも寡黙で、必要最低限の言葉しか発しない人間なのだ。
ところが息子は車の後部座席でぺらぺらとユスティーナと話に興じている。しかも軽口まで叩いてユスティーナはくすくす笑っているではないか。
私は信じられないものを見聞きしている気分で旦那にこっそり耳打ち。
「あの子、ちゃんとしゃべれるやんか。私が話しかけると、いつも、ああ、とかウン、とか最小限の言葉遣いで、この子まともにしゃべれるんかなって疑っていたのに。騙されたわ」
母親と違い、かわいい女の子の前では息子の言語能力のスイッチも俄然アクティベートされるってことか。
私達に送らせたが、クリスマスマーケットではきっちり別行動を要求してきた息子。ま、そりゃそうだろう。
遠ざかっていく二人の姿を見ると、距離からしてただのお友達で彼女ではないらしい。残念。
こんな感じのいい子が息子の初めてのガールフレンドになってくれたらいいなあと心の中で願う。
帰宅してから、あんた、どうやった。楽しかった?ユスティーナも気に入ってくれたか。とたずねたところ、まあ、そうじゃないとそっけない返事が返って来た。でも楽しかったことは間違いないみたい。
じゃあまた遊びに出かけたら?今度は映画とかとさっそく次の提案をして息子にうるさがられる、この上もなくおせっかいなオバサン、私。






