オリンピックのハイライトを見ていて、日本が体操の男子団体で金メダルを獲ったことを知った。
首位中国との圧倒的な点差を最後の鉄棒で大逆転しての劇的な優勝である。
歓喜の日本チームに対して、負けた中国の方にしてみれば当然面白くない。私のパソコンは漢字を入力するとちょくちょく中国語のサイトにヒットするのだが、中国体操界のレジェンドが怒斥!(怒りの叱責)という中国のネットニュースが目に飛び込んできた。
中国語の漢字には何といっても勢いがある。熱烈歓迎、歓迎光臨みたいに字から伝わるパワーがダイレクトで、わ、どんな罵倒をしたのかしらと私はわくわく野次馬根性で見てみた。
元オリンピックチャンピオンの李小双(中国の体操選手はいつも李という名前だったような気がするんだけど、いったい何人李がいるねん)
「誰も言わないから俺が敢えて言う!俺にはその資格がある!」
元オリンピックチャンピオンの李小双が眉間にしわを寄せて、一つ一つ例を挙げて中国体操界の問題を指摘している。その舌鋒の鋭さ、容赦なさは却って小気味いいくらいだ。
「番組が始める前に、アニキにあまりきつい事を言うなよと言われたけど、昨日の試合を見た後、俺は本当に胸が痛んだね。
誰も言わないから敢えて俺が言う。
最大の問題はコーチ陣。コーチ陣に問題がある。選手の誰か一人に責任を押し付けてはいけない。2回も五輪の(団体で)金メダルが取れなかったんだ」
何も余すところなく思ったままを口にする中国と、持って回った言い方をする日本。前から思っていたのだが、中国とドイツって似ているかも。
その次の日、男子個人種目別が行われたあと、李はさらに激怒。
「李小双、再度痛罵 再次開火」という激しい漢字が飛びかい、「今回彼の公開叱責の標的となったコーチは誰?」と面白おかしくキャプションが付けられている。もちろんさっそく視聴。今度は同じく元体操選手の双子の兄(李大双)も登場。小双、大双そっくりな二人が揃ってコーチ陣を徹底批判。
まずは中国人選手の二人とも鉄棒の着地に失敗してギャーと絶叫。アイヨーと悪態をつきながら、「これはもう技術云々の問題じゃない。日頃の練習がちゃんとしてないちゅうことや。着地は普通15,6歳で完成するもんやろ」と憤懣やるかたない様子。
「国家チームのコーチ陣よ、あんたらは俺に比べてレベルは高い。しかし、俺はそれでも言う必要がある。中国の精神、中国のスポーツ、中国の体操とはどのようであるべきかとね。
俺は惜しかったなんて言葉は使わない。ダメだ!全くなっとらん。アカンもんはアカンのや」眉間にしわを寄せて吐き捨てた。
「俺は言葉がない。本当に言う事が見つからないよ。コーチ陣、頼むから目覚めてくれ」
中国人って本当にものをはっきり言う。ある意味欧米人と比べてもさらにダイレクトだ。(トピックによる)
若くて優しげな女の子でも「ああ、彼は本当にバカで―」とか「見ていられないくらいブ男」などとあっさり言うのでびっくり。そのギャップについ笑ってしまう。
しかし、私自身は、国家を背負う重圧とも栄誉とも全く関係のないところにいる庶民でよかった~としみじみ思った。
しかし庶民の方も例外ではない。
友達の中国人が遊びに来た時、中国でも離婚率が年々上昇している、という話になり、「中国人が離婚の話し合いをするときってどういう感じ?女の人が泣き寝入りしたりするの?」
と聞いたところ、
「そんな、あなた、女の方も絶対泣き寝入りなんかしないわよ。夫も妻も双方徹底的に相互批判、最後に離婚!よ」
相互批判、最後離婚!という響きがいかにも中国語らしい勢いでやっぱり笑ってしまった。