9年ぶりの日本!⑨夜遊び編 | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 私の実家は京都で、中心から離れているとは言え、数々の有名な神社仏閣や世界遺産にアクセスしやすいのは実に幸運なことではある。が、最近のニュースではオーバーツーリズムのことが大きく報道されていて、人ごみの苦手な私はそれだけで尻込みをしてしまう。

 

 上の娘がぜひ行きたいと言っていたのは、赤い千本鳥居が有名な伏見稲荷大社なのだが、あのような超有名どころに行ったらどれだけの観光客がいるか、考えただけで頭がクラッ。

 幸い父親が私以外の家族をまとめて連れて行ってくれたので大助かり。 

 途中で旦那からSMSが入って、「いま伏見稲荷にいるけど、むちゃくちゃ混んでる。なかなか前に進めない」とある。帰って来たら全員、あ~、疲れた。ママは来なくてよかったよ。と言う。

 そんな観光地はごめんだけど、しかし、京都に居ながら一度も中心地へ出ないで帰るというのもなあ・・・。

 悶々としていたところ、いい考えが思いついた。

 夜はどうだろう。8時や9時ぐらいになれば、さすがに昼の喧騒は薄れているのでは。それに今はちょうどいい季節で夜も寒くないし、ちょっとだけ行って帰って来れば大丈夫ではないだろうか。

 旦那は10年前に見たJR京都駅の大階段のイルミネーションが忘れられない、ぜひ子ども達にも見せたいと言う。

 

 そこである日、夜の8時ぐらいに家族で京都駅まで出かけた。

 ものすごく久しぶりのJR京都駅。夜とはいえ、まだまだにぎわっている。人の往来も多いが、思ったほどではなくホッ。

 伊勢丹の催し物売り場の日傘、かわいい!バッグも素敵な色。さすが伊勢丹、センスがいいわ。あら、残念8時で閉店だったのね。もう少し早く来ればよかった。かわいいものを見て、ちょっと気分が高揚してきた。

 

 さっそく大階段へ。刻々と色やモチーフが変わる。

 日本人の修学旅行生、世界各国からの旅行客がウキウキした顔をして盛んにシャッターを切っている。

 綺麗ねー。刻々と色を変える大階段のイルミネーション。田舎者でこんなものを始めて見る子ども達は一生懸命スマホのカメラを向けている。

 

 一番上まで上がってみる。上から見下ろす京都駅の大きいこと!ドイツの住まいから一番近い都会のニュルンベルク駅とは比べ物にならない。おまけに大きな駅なのに治安がよく、麻薬中毒者や危なそうな人が見当たらないのも日本ならではのいいところ。

 続いて空中経路、スカイウォークを通って東広場へ。

      途中で京都タワーもパチリ。一応京都市民だったのにすっかり観光客になっている。

 

 東広場は、ホテルの壁面に星座のイルミネーションが映し出され幻想的な雰囲気。しかも静かでそんなに人がいない。

 ようやくホッと一息。下の娘を抱き寄せて、

 「ママの夢がかなったのよ。みんなで京都に来るっていう大きな夢が」 

 じんわりと嬉しい気分に浸る。こういう瞬間をずっとドイツにいた時から欲していた気がする。みんなで日本へ来て楽しい思い出を作るというそれを。

 

 まだ帰る気にならず、自分が先頭に立って見知った界隈を案内しようと、駅前のスクランブル交差点へ。

 ああ、ここ、懐かしい。若い頃何十回と来たことだろう。居酒屋酔心でバイトのお別れ会をしてもらったなあ。あれ、こんな所にマツキヨってあったっけ。わ、都路里のカフェが出来ている。抹茶のソフトクリームかあ、美味しそう。あんた達食べてみる?全員Ja!と即答。

 

 20代の前半、冬のある晴れた日、何か高揚した気分で、ここから阪急河原町まで歩いて行ったことがあったな。あの時は確かもうドイツ語を習い始めていたっけ。

 立ち去りがたい思いで、周りを見回す私。家族は疲れてもう帰りたいというのだが、お願い!もう少しここにいて私に京都の空気を吸い込ませて。

 結局私にとって、訪れて一番うれしかった場所は名所旧跡ではなく、思い出と結びついている風景、自分が確かにそこにいて、歩いたり友達とご飯を食べたりした街並みなのであった。

 

 以上が非常に地味な私と家族の夜遊びでした。