私たちが日本に着いたのはちょうど5月の半ばで、お天気が良くうららかな日にはよくウグイスの声を聞いた。
ホーホケキョ、ホーホケキョと鳴く声にああ久しぶりだなあ、故郷に帰ったんだなあという感を強くした。
鳥好きの旦那も初めて聞くウグイスのユニークな鳴き声が気に入っていたのだが、これがまったく理解できないのが二人の娘達。
「ママぁ、あの鳥何なの。ホーホケキョ、ホーホケキョって朝からうるさいわね」
「あらぁ、何てこというのよ。あれはウグイスっていうのよ。春の訪れを告げる鳥なのよ。風情があるじゃない」
「だけどあんなに何度もホーホケキョってしつこく鳴くことはないと思うわ」
しつこいとはなんたる言い草。春ののどかな日に響くウグイスのよさがわからないとは。やっぱり外国人なのねえ、あなた達。
次。夜になるとどこからともなくジーンという音が聞こえてくる。ああ、懐かしい。あれは鈴虫か松虫か。久しぶりに聞いたわ。これぞ日本の春、夏って感じがするわ。
私は日本語を習っている下の娘にさっそく言いに行った。
「ほら、前に授業の時、先生が松虫の音ってわざわざYouTubeで聞かせてくれようとしたじゃない。あれだよあれ、分かる?」
私は興奮して娘に言うのであるが、娘は一向に感心した様子もなく、「だけど何だかジージーして集中できないじゃない。ちょっと窓閉めてくれる」
あ~あ~、やっぱりうちの娘たちは外国育ちだ。日本の風流など解さないのね。ちょっと残念なような可笑しいような気持ちになったのだった。