ほがらかな友人 | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 久しぶりにドイツ人のママ友、マリアと散歩に出かけた。

 ドイツに住んでいながらドイツ人の友達が恐ろしく少ない私。マリアは子どもが幼稚園時代からのつきあいだが、ドイツ人である上にほがらかな性格の持ち主という2重の意味で貴重な存在である。

 

 緑のあぜ道を歩いていくと、なにかがガアガア鳴いている。

 近寄って見ると、なんと大きなガチョウが3羽、羽根を打ち鳴らしている。いくらここが田舎だと言っても、見かけるのはせいぜいカラスぐらい。ガチョウを見かけたのは初めてで二人ともびっくり。

 

 「マリア、あれは、ほら、あれだよ。あのガチョウたちはクリスマスディナーの皿に載ることを免れた幸せなガチョウよ。だからあんなに喜んでガアガア言ってんのよ」

 と言うと、マリアは、まあ、と大きく口を開けて大笑い。つられて私も口角が大きく上がる。いいわー、こういうお友達。普段のドイツ語の生活じゃ、真面目な話ばかりで口角が下がりっぱなしだもの。

 日本で活躍しているドイツ人タレント?のマライ・メントラインさんが「笑うときも真面目なんです」というドイツ語エッセイを出していたが、まさにその通りである。頬の筋肉が上がって、目まで笑うという事が滅多にないのだ。

 

 マリアは特にテンションの高い人と言うわけではないが、自然な明るさがあり、よく笑うのでドイツ人と話す時に常に付きまとう緊張がない。こんな人は砂漠の中に落ちた真珠を探すように貴重な存在である。そう言えば、数年前に私の日本の友達が遊びに来てくれた時、公園で他の顔見知りのお母さん達が遠巻きに見ている中、ただ一人近寄ってきて彼女に話しかけてきてくれたのもマリアだった。お互い子どもの愚痴や暴露話をしてストレス発散。

 

 また今週は、コロンビア人のパトリシアが主催するダンスエクササイズの冬コースも始まった。

 前回参加した時、参加者の多国籍ぶりにすっかりうれしくなった私。パトリシアの人柄に惹かれて今回も参加することに決めた。

 久しぶりに会った彼女は再会を喜んで抱きしめてくれた。

 私は丸暗記したスペイン語を引っ張り出し、

 「 Qué gusto verte de nuevo また会えてうれしいわ」

 と挨拶すると、大げさに驚いて喜んでくれた。しかし、それで私がスペイン語が話せるのだと勘違いされ、なにやらペラペラ早口で話されたので、困ってしまう。(笑)

 

 パトリシアは南米コロンビア出身でラティーナの自然な明るさがあり、笑顔が張りついた感じじゃなく温かい。

 踊っていても笑顔を絶やさず、彼女の振りまく明るいオーラが周りにも伝染してドイツ人の参加者も笑っている!まさに北国ドイツに咲いた一輪の南国の花。彼女を見ていてそういう表現が浮かぶ。

 年のころは50前後かと思うが、色が白くてスリムで手足が長く、長い赤毛を今日はアップにしてまとめているので、小さな顔が余計に強調されている。まったく私もこんな肉体をもって生まれたかったわ。ダンスやヨガで鍛えられているためか、後ろから見ても背中に無駄なぜい肉が全くなく、お尻もきゅっと上がっている。この人今も魅力的だし、若い頃もさぞかし美人でモテていたんだろうなあ。

 パトリシアの肉体を後ろからじろじろ眺めながら心の中で品評する私。オヤジみたい?我ながら恥ずかしいわー。笑い泣き

 

 今回のクラスは前回も来ていたインドネシアやマレーシアのおばさまもいて、同じアジア人としては親しみを感じる。

 このダンスコースを主宰している団体が月一で女性限定のディスコを開催しているらしく、今度一緒に行ってみようかと言う話になる。出会って間もないのにすぐに電話番号を交換したり、一緒に出掛けようかと言う話になるのはやはり異国に住むアジア人同士という結びつきか。ドイツ人とはここまで来るのにかなり時間を要する。

 

 もうこうなったら何でもいい。ドイツ人でも外国人でも気が合っていい人なら。

 興味過多で特に外国から来た人間に興味があり過ぎるぐらいだが、これが私の生きる原動力。なかなか出来ないドイツ人の友達の代わりにこうやって何とかドイツに住む孤独を埋める。