スペイン語禁止令!? | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 去年の年末頃からスペイン語にちょっぴりハマっている。

 私は言語には多大な興味があり、習うのも好きだが、教室に通うほどの勤勉さはないので、無料アプリやYouTube動画を見たりして、好きなように自習している。

 今のところ出来るのはあいさつ程度で、しかも何事によらず熱しやすく冷めやすい私。このスペイン語熱もあと3か月したらどうなっているかまことに怪しいが、取りあえず新しい言語に触れるのは楽しい。

 ドイツにもスペインや南米から来た人がたくさんいるし、コロンビア人の友達やキューバ人のサルサの先生とちょっとだけでもスペイン語で話せたら楽しそう。その人の母国語で話して通じた時のうれしさ、楽しさが大好きなのである。

 そういうわけで私はワクワクしているのであるが、ここにそんな私を面白くない顔で見る人物が現れた。それはなんと13歳の長女。

 

 娘は将来の受験に必要という理由で、去年からオンラインでスペイン語を習い始めた。その先生を見つけてあげたのは他でもないこの私。コロンビア人の友人アニータのつてで優秀な先生が見つかったのである。

 

 私は娘と共通のいい趣味ができたと喜んで、その情熱をシェアしようとしたのだが、これが娘にはまったく受け入れられない。

 私に妙なライバル意識をもって、私が彼女より少しでも上になるのが許せないようだ。これって思春期独特の屈折したライバル意識?同性同士だから?パパとだったらこうまでならない?

 

 「おリネちゃーん、今日は何を習ったの」

 「・・・色の名前」

 「あら、いいじゃない、ママにも教えてよ。赤はスペイン語で何て言うの」

 「秘密、教えてあげない」

 とにべもない。

 あまつさえ、オンライン授業のスペイン人の先生に下手なスペイン語で時々挨拶するのが楽しみだったのに、もはや先生と話すのも禁止されるという迫害ぶりである。

 

 ふくれっつらをして

 「ママは私が習っているからわざとスペイン語を始めたんでしょ。もうやめて!スペイン語を習わないで!スペイン語は禁止!」

 強制改宗というか強制棄教を迫られるキリシタンのような気分になってきた。

 娘に言わすと、私が早急に学習すべきなのは、K-Popスター、BTSのメンバー全員の顔と名前の一致なのだそう。(私には全員同じに見えるんですー。ゴメンなさい)

 

 仕方なく私は娘に隠れてこっそりと学習を継続。無料アプリで音声を聞いたり、習った表現を紙に書いたりするのだが、油断をしていて娘がいきなり部屋に入ってくると大あわて。急いでノートを隠したり、パソコンの画面を変えたりしてあたふたするのである。

 スペイン語の文章を暗唱していると娘が聞きとがめ、「ママ、あなた何ブツブツ言ってるの。まさかスペイン語じゃないでしょーね」と鋭くチェック。私はしどろもどろになりながら、「あ、これは・・・いや、その・・・フランス語の練習、フランス語」ととっさに下手な言い訳。偽装棄教したふりをして学習を続ける受難のスペイン語信者なのである。

 

 これではまるで隠れキリシタンならぬ隠れスペイン語教徒である。潜伏学習というかアングラ活動になってしまった。

 キリスト教禁令を出したのは、二代目秀忠だったか、三代目家光だったか、とにかく徳川幕府=娘、隠れキリシタン=母の構図である。

 

 虐げられた潜伏スペイン語教徒の私ができることは、せめて、日本の読者の皆様の前で娘の横暴ぶりを白日の下にさらし留飲を下げることぐらいである。娘は幸い(?)日本語の読み書きができないので、このブログがバレる恐れはない、と思う。

 悔しかったら日本語が読めるようになってみろっつーんじゃ。わかったか!ワハハハハと遠吠えするも横暴な徳川娘の前にイマイチ力ない私。