曇天11月  | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 11月もたけなわ。ヨーロッパの11月と言えば、1年で最悪の月とあまりありがたくない名前がついている。

 その悪名に恥じない今年11月の天気。毎日どんよりとした曇り空が続く。寒いし、日光はささないし、紅葉はとっくに散り終わり、寒々とした木々の細い枝が風に震えている。

 

 私は寒さはまだ我慢できるが、この日光の射さない日が続くと、メンタルもどんより、気が重くなり、ネガティブな考えばかりが頭に浮かぶ。

 これが12月に入ると、また各地にクリスマスマーケットが立ち並び、華やかな雰囲気に包まれるんだけどなあ。年越しを前に何かと慌ただしくもなるし、自然と気持ちもきびきびしてくる。

 1月は前半まだ学校も冬休みで多少のんびり。そして2月になると明らかに日がまた長くなるから冬を乗り越えるまであと一息、という感じである。要するに11月が一番つらい?

 

 昨日タイ人のご近所さん、アンポーンがタイからのお土産をもって訪ねてきてくれた。

 アンポーンは3週間、家族でタイに里帰りしており、ドイツに帰って来たばかり。

 太陽の光溢れる暖かいタイとどんよりドイツのコントラストは、長年ドイツに住むアンポーンにもきつかったようで、いつものはじけるような笑顔もなく、私のようなうかない顔つきをしている。

 「もう、帰ってきてドイツの空を見たとたん、きびすを返してタイに戻りたくなったわ」とため息をつくが、さもありなんである。ドイツとタイじゃギャップが大きすぎるよな。

 私もアジア人の友達も口をそろえて言うのは、「11月から2月まではアジアで過ごし、3月ぐらいにドイツに帰ってくる」これが究極の理想である。

 

 長男がまだ小さい頃、冬に里帰りしたのだが、彼が空を指さして、

 「オーマ(おばあちゃん)、見て!空が青いよ!」と不思議そうに叫んでいたという。真冬でも澄み切った青空の広がる日本と違って、ドイツの冬に青空が見られるのはめったにない貴重なことだもんなあ。

 

 ドイツに住む日本人のお友達、ソノ子ちゃんと電話すると、彼女も今月は少しどんよりしていたという。

 「でも、ソノ子ちゃん、学生時代にスコットランドはエジンバラに留学していたんだよね。エジンバラはドイツよりも緯度が上だからもっと日が沈むのが早いんじゃなかったっけ」

  「そうなんですけど、その頃は平気だったんですよねえ。今になってこうガクーンと落ち込むのは何なんでしょう」

 何もかもが新鮮で刺激に満ちていた留学生活と、それがもう日常生活になった現在との違いかしら。お互い子どもが段々自分の手を離れて一人の時間が多くなってきたし。

 

 娘たちが、お気に入りの児童作家の読書会が行われるというので、街まで送っていく。

 待つ間、カフェにて時間を過ごしていたら、段々雨脚が強くなり、何と雪に変わっていった。初雪である。

 外に出てみると、雨に濡れて光る石畳の道、ぼうっと光る街灯が一列に続く。なんだか、ザ・ヨーロッパって感じの風景だなとさっそく携帯のカメラで切り取る。

 この風景を陰鬱と見るか、陰影美と見るかは、その日その時の気分で全く異なる。

 今回はかろうじて陰影美に軍配あり。