2006年も押し迫った12月20日、幕田は創価大学で講演を行っている、人気講座「トップが語る現代経営」である。
武蔵野の冷え込みは、仙台市内とさほど変わらない。どれほどの学生がいるだろうかと、期待半分で大教室に入った。
大拍手が頭から降るように聞こえてくる。場内は満員である。しかも最前列の机に、横断幕が張り出してある。
「創価大学へようこそ 幕田学長 東北出身者一同」
なんと同郷の若者が歓迎してくれていた。
創価大学には地方出身者同士のコミニティーとして県人会組織がある。なかでも、東北グループの結束が最も固いと言われる。
きょうも彼らが前列に陣取り、幕田を迎えている。
東北電力の相談役を務める幕田。多くの人を前に語る機会は多い。
眼光鋭く場内を見渡す。すこし勝手が違う。携帯をいじったり、居眠り、私語をする学生がいない。むしろ突き刺すような視線を感じる。
この熱意に応えなければ。講演に力が入った。
後日、幕田は東北出身の創大生に、感動の思いを込めて、愛読書『孫子』を50冊贈った。
ちょっと今どきの学生に合うかどうか懸念したが、思いがけない反応があった。
「感想文を届けてくれてね。こんな・・・・・・」
表情がすこし緩むと、文集の大きさを指先で描いて見せた。学生が自ら、仙台まで届けに来た文集は、丁寧に装丁され、情熱漲る文面が綴られていた。
これほど「打てば響く」とは。
東北を代表する財界人として、人を育てる難しさは痛感している。
しかし創価大学には知・情・意を備えた人材が育っている。
しかも、うれしいことに「郷土愛」を持っている。これほど頼もしいことはない。
今日、東北の自然と人間性の豊かさが注目されはじめている。だが多くの若者が、郷土である東北を離れて就職している。
幕田は、創価大学の教員が語っていたことを思い出した。
「学生たちの最大のエネルギーは、創価教育に流れる『師弟の精神』です」
なるほど。あの学生たちを育んでいる池田会長の情熱と努力に、深い感慨を覚えた。
池田会長が東北に築いた「人材の城」である。
「人材の城」東北 終了