三々五々と集ってきた青年が、息を弾ませながら山道を登った。独眼竜・伊達正宗が城を築いた青葉山である。戸田会長と青年部の池田室長の姿がある。 昭和29年4月25日の早朝だった。仙台支部の総会に出席するため、前夜仙台駅に到着した。
総会の前に青年へ大切な指針を授けたい。その場に選んだのは、かつて奥州一帯に覇をとなえた堅城だった。山の頂に、新しい白亜の像があった。直立不動の伊達正宗が、霞たなびく眼下を見下ろしている。戦前までは銅の騎馬像だったが、戦中に供出され、五三年秋に新しく再建したばかりだった。像と向き合う戸田会長。やや甲高い声を投げた。
「伊達君、元気か!」
マッカーサーを「梵天君、やるな」と評し「高杉晋作とは、一度会ってみたかったな」と語っていた戸田会長にかかれば、奥州の覇者も百年の知己である。
呵々と大笑しながら、仙台平野を一望する東の崖に立った。広瀬川が白い帯のように蛇行している。
西は深い原生林、南は渓谷。まさに天然の要塞である。唯一の攻略口だった北側には、堅固な石垣が築かれていた。
「ここに城を築いた伊達正宗は頭がいい。やはり天下の名将だ」
会長は左に付き添う池田室長に語りかけた。女子部の成田レイ子は二人の会話が聞きたくて、人ごみの間を縫って近づいた。会長は崖の縁まで、ずんずん進む。下は切り立った谷底。その動きにぴったりと合わせる室長。一言も聞き漏らすまいと「求める」一方で、身を挺して「護る」姿勢を取っている。
―すごいなあ、すごいなあ。二人の会話に耳をそばだてた。
「どんなに立派な城をつくっても、何百年も過ぎてしまえば、このように荒城となってしまう。戦のための城は、いつか破れる」
会長は苔むす石垣を指差した。「昔の戦は、城が大切だった。いま大事なのは人だ。創価学会は人材をもって城となすのだ。永遠に崩れぬ人材の城を築くのだ」
池田室長のほかに60名ほどの青年部員がいたが、むしろ彼らが舌を巻いたのは、室長の手の打ちようだった。
「総会会場の点検をはじめ、戸田会長の通る道、休む場所まで、すでに綿密に検討され、事前に手が打ってあった。これが師匠に仕える姿勢なのかと驚いた」