ルイス・カーンの言葉2~Ⅰ期2 | ejiratsu-blog

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人は何を考え(思想)、何を為し(歴史)、何を作ってきたのか(建築)を、主に書いたブログです。

(つづき)

 

 

●デザイン

 

 『ルイス・カーン建築論集』の中の「デザイン」を列挙すると、次に示す通りです。

 

 

○デザイン、フォーム、シェイプ、自然、美

・視覚が生じた時、視覚の最初の瞬間は、美の自覚だ。それは、美しいとか、大変美しいとか、非常に美しい等ではなく、美それ自体だ。それは、知ることや選択することなしに感覚する、トータル・ハーモニー(完全な調和)で、純粋な美それ自体で、トータル・ハーモニーの感情だ。それは、あなたの形成者に出会うようなものだ。なぜなら、形成者である自然は、つくられているもの一切の形成者であるからだ。あなたは、自然の助けなしに何もデザインできない。デザインとフォームとシェイプの間には、大きな違いがある。(p.5)

 

※デザイン:自然の助けを借りる

※デザイン≠フォーム≠シェイプ

 

 

○デザイン、リアライゼイション、自然

・驚異の感覚とともに、リアライゼイションが生じる。それは、直観から生まれ、あるものが、そうであらねばならないというリアライゼイションなのだ。人は、それを見ることはできないが、リアライゼイションは、確かな存在を保持している。誰も人の心を見ることはできないが、心の中には存在がある。存在は、あなたにあなたが表現したいと望むものを考えさせるので、あなたは努力するのだ。なぜなら、表現は駆り立てであるからだ。つまり、表現することは、駆り立てることだ。その時、あなたは、存在(イグジステンス)とプレゼンス(存在感)を区別し、そしてあるものにプレゼンスを与えようとする時、自然の助けを求めねばならない。ここがデザインの現れるところだ。(p.7-8)

 

※デザイン:自然の助けを求め、心の中の存在に、存在感を与えようと、駆り立てて表現を努力

 

 

○デザイン、フォーム、リアライゼイション、本性、自然

・フォームからのデザインとは、心の中にある、ものの本性を現実化(リアライゼイション)することだ。フォームは、まったく聴こえないもの、見えないものだ。それゆえ、それを心の中の存在から、実際に現前するものにするために、自然に立ち戻る。(p.11)

 

※フォームからのデザイン:自然に立ち戻り、心の中に存在する、ものの本性を現実化

 

 

○デザイン、フォーム、シェイプ、リアライゼイション、本性、自然、光

・リアライゼイションの過程を理解することから、「フォーム」が生じる。フォームは、シェイプではない。シェイプは、デザインの事柄であって、一方、フォームは、不可分な構成要素のリアライゼイションだ。デザインは、リアライゼイション(つまりフォーム)が我々に告げるものを存在することへと呼び入れる。フォームとは、あるものの本性として見なされ、デザインとは、フォームを存在することへもたらす時に、光を活動させることによって、自然の法則を用いる、まさにその時の努力だ。物質の源、つまり「形成する」こと、存在することへ呼び入れることだ。プレゼンス(存在感)の、この形成者は、人がつくるものに測り得るものをもたらすエレメントだ。あらゆるものは、活動へと、もたらされるまで、根底的に、一貫して測り得ないものだ。人間が遺したものは、すべてその中に測り得るものと測り得ないものを保持する。思惟は、プレゼンスをもつものではなく、存在をもつものとして露呈される。(p.34)

 

※デザイン:自然の法則を活用し、フォームを形成・存在することへ呼び入れる時の努力

 

 

○デザイン、オーダー、本性、自然、美

・デザインは、「オーダー」が理解されることを求める。オーダーを知るとは、あるものの本性を知ることだ。あるものがなしうることを知ることなのだ。そのことを大いに尊重しよう。もし、それを扱うなら、自然のオーダーを知らねばならないし、その本性、それは何であろうとしているかを知らねばならない。つまり、心の産物にするのだ。そして、あなたは、それらの美、その素材の能力が充分に発揮されたことによる、ハーモニーを知る。物事をあなたの心で正しく把握し、最も純粋な仕方で行えば、あたなは大いに孤立することになるかもしれない。しかし、その活動を深く掘り下げることは、それが注意深くなされ、自らの行っていることを充分にわきまえている限り、途方もなく重要なことなのだ。(p.34-35)

 

※デザイン:オーダーの理解を要求

 

 

○デザイン、本性

・私は、デザインが、それをめぐって可能となる「本性」を見い出そうと努めていた。つまり、それはこういうことだ。ものがいかにつくられるかではなく、いかにそれがつくられうるかという省察によって、それは強力なものになる。都市もまた、すでにそこにあるものをいかに修正するかではなく、それがいかにつくられうるかという立場で考えねばならない。(p.41)

 

※デザイン:可能となる本性=いかにつくられうるか、を発見する努力

 

 

○デザイン、リアライゼイション

・問題を解くだけでは、充分ではない。諸々の空間に、新しく・発見された、それ自身の・特質、を吹き込むことは、問題を解くことと、全く別の問いだ。解くことは、「いかに」デザインするかという問題だ。「何」についてのリアライゼイション(現実化)は、「いかに」に先駆する。(p.86)

 

※「何を」についての現実化:「いかに」してのデザインに先駆

 

 

○デザイン

・人間の最高に優れた作品は、その作者ひとりに属するものではない。もし、彼がある原理を見い出したとしても、解釈としてのデザインの方法のみが彼ひとりに属する。(p.89)

 

※デザインの解釈の方法:作者に属す

※作品・デザインの原理:誰にも属さず

 

 

○デザイン、オーダー、フォーム、シェイプ、リアライゼイション、本性

・私は、フォームを本性のリアライゼイション(現実化)として語った。あるシェイプはフォームのある表現だ。フォームは、夢・信念の自覚として願望に従う。フォームは、不可分の諸要素について告げる。デザインは、相互に調和するシェイプへと、それらの諸要素を展開させようと苦心することで、ひとつの全体、ひとつの名前を求めて努力することだ。ある人の心の中のフォームは、他の人の心の中のそれと同じものでない。本性のリアライゼイションとしてのフォーム、そして、シェイプは、デザイン操作のプロセスには属さない。デザインの中にも多くの素晴らしいリアライゼイションがある。つまり、構造のオーダー・建設のオーダー・時間のオーダー・空間のオーダーが活動するものになるのだ。(p.97)

 

※デザイン:諸要素を相互に調和するシェイプへ展開させようと苦心すること、ひとつの全体・名前になるように努力すること

※デザインのすばらしい現実化:構造・建設・時間・空間のオーダーの活動

 

 

○デザイン、オーダー、リアライゼイション、構造、光

・構造は、光の賦与者だ。構造を決定する時、あなたは光を決定する。昔の建物では、列柱が光の表現だった。つまり、光なし、光・光なし、光・光なし、光だ。モデュール(基準単位)は、光・光なしだ。ヴォールトは、それから生じ、ドームは、それから生じる。それらは、光を解放するという、同じリアライゼイションから生じる。デザインのエレメントを決定している時に考えているのは、オーダーだ。つまり、諸々のエレメントをデザインの中で完全なものにするために、どのように考えるのかだ。(p.126)

 

※オーダーを考慮し、デザインの諸要素を決定・現実化することで、完全なものにする

 

 

○デザイン、オーダー、構造

・デザインの中には、構造のオーダーと建設のオーダーの差異についての考えがある。それらは、2つの別々の事柄だ。建設に対してオーダーが働きかけて、諸々の時間のオーダーをもたらす。それゆえ、構造のオーダーと建設のオーダーは、緊密な関係になる。構造のオーダーは、クレーンを意識させることができる。どのくらいのものを持ち上げることができるかということは、別の単一のものと結合する、単一のものをつくる場合の考え方全体に、動機を与える事柄であるべきだ。構造のオーダーにおいても、こうしたオーダーに即した決定というものがある。(p.127)

 

※デザイン上、別々の構造のオーダーと建設のオーダーが、時間のオーダーで緊密な関係になる

 

 

○デザイン、オーダー、構造、光

・デザインは展開する。それは、あなたが最も独自の素晴らしい方法で、なしうる方法についての思索だ。なぜなら、あなたは、次のことを認識するからだ。すなわち、構造には、オーダーがある。素材には、オーダーがある。建設には、オーダーがある。空間には、サーヴァント・スペースとサーヴド・スペースという仕方のオーダーがある。光には、それが構造によって与えられるという意味でオーダーがある。(p.128)

 

※様々なオーダーから、なしうる方法を思索し、デザインを展開する

 

 

○デザイン、自然、芸術

・自然は選択しない。自然は、その法則を解き明かすだけで、あらゆるものは、状況の相互作用によってデザインされ、その中で人間が選択する。芸術は、選択を含み、人間は、人間の成し遂げるすべてを芸術において成し遂げる。(p.135)

 

※自然=選択なし:すべて状況の相互作用により、デザインされた法則

※人間=選択あり:成し遂げるものすべてが、芸術の対象

 

 

○デザイン、フォーム・シェイプ、本性

・フォームは、シェイプも寸法ももたない。フォームは、本性をもち、特性をもつ。それは、不可分の諸要素をもつ。もし、ある部分を取り去れば、フォームは消え去る。デザインとは、フォームを存在することへと変換することだ。フォームは、イグジステンス(存在)をもつが、プレゼンス(存在感)をもたない。デザインとは、プレゼンス(存在感)へと向かうことだ(p.164)

 

※フォーム:シェイプ・寸法・存在感をもたず、本性・特性・不可分の諸要素・心の中の存在をもつ

※デザイン:フォームを存在感へ変換すること

 

 

○デザイン、フォーム、本性

・イグジステンス(存在)は、精神的な存在なので、それを触れ得るものにするために、人はデザインする。もし、フォーム・ドローイングと呼び得るもの、つまりあらゆるものの本性を示すドローイングを描くなら、あなたは、ものの本性を示すことができる。(p.164)

 

※デザイン:心の中の存在は、ものの本性をフォームに描いて示し、触れ得る存在感にする

 

 

○デザイン、フォーム・シェイプ、リアライゼイション、本性

・私は、フォームを本性のリアライゼイションとして考える。それは、不可分な諸要素からつくられている。フォームは、プレゼンス(存在感)がない。その存在は、心の中にある。もし、フォームの諸エレメントのひとつを取り去れば、そのフォームは変わらねばならない。フォームは、デザインに先駆する。フォームは、デザインの方向を導く。というのは、フォームは、その諸エレメントの関係を保持しているからだ。デザインは、諸エレメントにシェイプを与え、それらのエレメントを心の中の存在から、触れ得るプレゼンスへともたらす。作曲することにおいても、フォームの諸エレメントは、その各々に最もふさわしいシェイプを与えようとするデザインの試みに、絶えずさらされながらも、常に変わることなく保たれていると、私は感じ取る。フォームは、プレゼンスの中に閉じ込められない。というのは、その存在が心的本性からできているからだ。それぞれの作曲家は、フォームを独自に解釈する。フォームは、それが自覚される時、その自覚者に属さない。ただその解釈のみが、その芸術家に属する。(p.191)

 

※フォーム:デザインに先駆、デザインの方向を導く

※デザイン:諸要素にシェイプを与え、諸要素を心の中の存在から、触れ得る存在感をもたらす

 

 

○デザイン、オーダー、インスピレーション、構造、光、芸術

・私は、平面図を見る時、それを諸々の空間の性格と、それらの関係として見る。私は、平面図を光の中の諸々の空間の構造として見る。ある作品を見た音楽家は、直ちにその芸術の意味を受け取るにちがいない。音楽家は、そのデザインと、自らの心的オーダーの感覚から、そのコンセプトを知る。彼は、自分自身の願望から、そのインスピレーションを感覚する。(p.197)

 

※芸術家:デザイン・心的オーダーの感覚から、コンセプトを知る

 

 

○デザイン、インスティチューション、光

・信念のリアリティなしには、完全なリアリティはありえない。人々が大規模の再開発計画をする時、その計画の背後には信念がない。様々な手段が得られ、それらを美しく見せるデザインの工夫も得られるが、人間のインスティチューション(慣習)、それは生きるための新鮮な意思を感じさせる、の出現に降り注ぐ、光と感じられるものは何ひとつない。そうしたものは、ある信念に基づく意図から生まれる。感情が計画の背後に存在しなければならない。建築家のなすあらゆる仕事は、それが建物である以前に、何よりもまず人間のインスティチューションにふさわしいものでなければならない。あなたは、建物の背後に、人間の生き方における、その建物のアイデンティティについての信念をもたない限り、その建物が真に何であるかを知ることはできない。あらゆる建築家の最初の行為は、流布している信念を活性化することや、新しい信念を見つけることだ。人間の活動の中には、表現され得ないものを表現せんとする深い人間の願望があって、ある空間圏域が、その願望を現示(リプリゼント)しているという自覚がある。あたかも永遠にあり続けるかのように、あらゆる人によって支持される何かが設立される時が、人間の歴史の中に生じることは、まさに驚くべきことだ。(p.219)

 

※工夫(思惟):美しく見せるデザイン

※信念(感情):建物のアイデンティティ → 人間の慣習・表現の願望が必要

 

 

○デザイン、フォーム、インスティチューション、インスピレーション、本性

・インスティチューション(慣習)は、インスピレーション(発想)の家である。建築家は、要求される空間の指図を受け入れる前に、インスピレーションを思いやる。彼は、あるものを他のものから区別する本性とは何かを、自らに問いかける。彼がその差異を意識した時、そのもののフォームに触れる。フォームは、デザインを触発する。(p.227)

 

※自と他を区別する本性への問いが、フォームに触れ、フォームがデザインを触発

 

 

○デザイン、フォーム、インスティチューション、インスピレーション、美

・最初のインスティチューション(慣習)は、生きるインスピレーション(発想)から生じ、生きるインスピレーションは、人間のインスティチューションの中に目立たない仕方で表現・保持されてきたのだ。私が感覚したく望んでいるのは、その建物のフォームが健全な身体の美を表現する、プログラムとデザインの新しい展開を導くことができる、建物のインスピレーションだ。(p.227)

 

※デザインの新展開:発想による慣習と、慣習による発想で、建物のフォームが、健全な身体の美を表現

 

 

(つづく)