「光る君へ」越前編は、地方政界の暗部を暴くのか、貿易と移民問題、世界経済の課題を鋭く衝くのか? | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

今週は越前国衙や宋の商人やら、はじめての登場人物が大勢出てきて、これは大変だ、と思ったら、いきなり一人は殺されるという急展開。来週はさらに増える。

ハードな展開です。予想以上に。

平安王朝、源氏物語、宮廷恋愛劇をなとなく予想していましたが、やはりNHK大河ドラマは、そんなもんじゃあ、ありませんでした。きっちり、やってきます。

 

ここまでに、分かったこと。

国衙の役人たち(介、大掾は在庁官人でしょう、つまり越前の地元の豪族あがり)は、「裏金」で新任の守を買収しようとしてる時点で、少なくとも善玉ではありません。

少なくとも、中央に知れたら「汚職」として罰せられるようなことを、やっています。やろうとしてるんではなく「すでにやっている」。もちろん、宋人がらみで。

それが生真面目な新任の越前守に(ひいては中央政府に)露見することを恐れて、宋との通訳を殺したのだ、と考えるのが自然でしょう。そして、その罪を宋人におっかぶせて、口封じをしようとしているわけです。

「裏金→隠蔽→尻尾切り→口封じ→犠牲者→政治家は知らん顔」

なんか、ありましたよね、現在の日本にも、こういう話。ちょっと前にも、つい最近にも。

NHKは、やるんですよ。歴史劇のフリして、昔の話ですよって顔をして。

宋の商人たちは、笑顔からして、かなり怪しいですが。

それでも、国衙役人どもに裏切られて、殺人の冤罪をかけられてる時点で、少なくとも、このドラマでは「悪玉ではない」と認定していい、と思います。日本侵略のためのスパイ、工作員、っていう線は、あまりないと思うんです。

昨日も書きましたが、彼等の最終目的はやはり「開国、通商」ではないか、と私は思っています。

日本政府は、対宋貿易を大宰府に限定していて、しかも政府公認戦に限る、入港は十年に一度、みたいな、かなりシブイ対応をしています。江戸幕府と同じ「鎖国状態」です。

宋の政府は、たぶん、それが不満なんです。もっと日本の中心地に近いところに、大消費地の近くに、直接、貿易拠点を築きたい、商業的には当然です。

しかし、王朝貴族のホンネは、外国人には日本に入ってきて欲しくない。特に都の近くには。なぜなら面倒だから。怖いから。

だけど、越前、越中、越後は「越の国」つまり古代においては海を越えてやってきた人々が定住した土地です。大陸から大船に乗れば、至近距離なんです。そして現に、越前から近江、山背(のちの山城)にかけては「渡来系氏族のテリトリー」といっていい。

近江には和邇氏、山背には秦氏が入植しており、平安京遷都は、財力豊かな秦氏の助力をバックにした、桓武天皇の日本列島改造プロジェクトでした。

平安京は、琵琶湖と日本海を通じて、大陸に「ものすごく近い」んですよ、もともと。

ところが、いつのまにか、平安日本は「内向き」の国になってしまっている。

振興国・宋としては、早く経済発展したい。「隣の国とフル貿易できないのは、勿体ないじゃあないか」って考えてるに、決まってるんです。

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しかし、正面から「もっと貿易しましょう、日本海側の港をもっと沢山開きましょう」とか言っても、絶対に通らないのが分かってる。だから、作戦が必要なんです。

かなり強引に、朝廷に「贈り物」をして、自分たちの存在を認めさせようとしているのは、彼らが「なしくずし定住」を認めてもらおう、という作戦の一環、と私は推察しています。

しかし、それは地方政治家たち、ヒゲの介や、仕事きっちり大掾の思惑とは、ちょっと違う。彼等は朝廷には内緒で、コッソリ細々と密貿易をやって、その利益を着服するほうが、ずっと旨味が大きい、と思った。だから「京都には内緒で、我らだけで交易しようぜ」と持ち掛けていた。

しかし、これは「汚職」です。越前守にバレて京都に通報されたら、やばいんですよ。

最近のNHKは、「大河ドラマが、現代の日本で存続する意義は何か」って、真剣に考えています。

大河ドラマは単なるチャンバラ娯楽時代劇ではない。いまの日本で、あるいは世界で起こっていることと相似形な問題は、どの時代にもあるんです。日本人はそれをどう乗り越えてきたか、それを知ることが、ホントに歴史を学ぶってことです。

難民拒絶、不法移民ヘイト、外国人労働者受け入れの賛否、闇サイト犯罪、IR誘致の怪しさ、政治資金パーティー裏金問題、現代の問題に、寄せてくるのがNHK大河、ですから。

来週は、また登場人物がどっと増えるらしい。

いよいよ、また「入内(じゅだい)合戦」が始まるんですね。スターウオーズのジュダイではありません。貴族たちが、娘を天皇に嫁がせて、皇子を生めば万々歳、という、我々が「平安王朝」でイメージする争いが、いよいよ本格化するわけですが。

さて、最大の注目は、道長と倫子さんの間の娘「彰子(あきこ)」を演じる、見上愛さんです。実におっとりしたキャラだなと思うところですが。そんな簡単な女優さんでは、ありません。

いま映画館でやっている「不死身ラヴァーズ」を、皆さん、是非観て下さい。凄いです見上愛さんのヒロイン。走って叫んで笑って二時間、とにかく弾けっぱなし、です。

告白して成就すると、相手が消えてしまう。これはSFなのか脳内恋愛なのか? 原作漫画では暑苦しい男子高校生であった主人公を、敢えて女子に変えた、その結果、すごいキャラになってます。

このコは絶対に、来ます。